大雨復旧に私道の「壁」 長崎・西海市の住宅地 道路陥没、16世帯 車通れず

道路が崩落した現場。軽自動車が転落した=西海市西彼町

 8月11日から降り続いた記録的な大雨。長崎県西海市西彼町には、私道のため復旧が進んでいない生活道路がある。
 大村湾を望む県道そばに位置し、16世帯が暮らす住宅地「ビレッヂ西海」。8月13日午後4時ごろ、県道から住宅地に下る私道が約30メートルにわたって陥没した。車は通行できず、住民は私道隣の空き地を歩いて、県道まで往来している。
 最も遠い家から県道までは約500メートルの坂道。ごみ集積所も県道のそばにある。管理自治会長の柴田文雄さん(79)は半数が高齢者で「長期化すればトイレのくみ取りやプロパンガスの交換、救急、火災時にも支障が出てくる」と頭を抱える。崩れたのが昼間で、車で外出していた住民が多かった。6世帯が住宅地から車を出せなくなっており、外に置いている住民から借りるなど住民同士が助け合いながら買い物などをしている。市教委は中学生の通学支援のため、最寄りのバス停まで無料のタクシーを手配した。
 柴田会長によると、住宅地は1991年ごろから、付近のゴルフ場整備に着目した複数の開発業者が分譲。どの業者も既に倒産している。現在27戸の家があり、16世帯28人が暮らす。私道は住宅地地権者の共同所有で「公衆用道路」として登記している。住民側は旧西彼町時代から計3回、自治体に「公道化」を要望したが▽業者の開発届に不備がある▽勾配などが市道の基準を満たさない-などの理由で実現しなかった。
 管理自治会は8月18日付で「個人での対処能力を超える」と緊急対応を求める要望書を市に提出。ビレッヂ西海分区長の武藤亮二さん(65)は「住宅地の入り口付近は傾斜もあり二次災害も心配。市道に認定していただくことで、何らかの対応がお願いできないか」と話す。
 市は8月27日の市議会全員協議会で「民有地については所有者で対処するのが原則」との立場を説明。杉澤泰彦市長は取材に、高齢者ケアなど福祉面の対応を指示しており、被災箇所の復旧については「難しい面はあるが、公平性や客観性を保ちながら、支援に向けた要綱作成を進めている」と明かした。


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