【ブログ】Shots! 最高の雰囲気だったオランダGP。母国GP初勝利を手にしたフェルスタッペンは満たされた表情を見せる

 36年ぶりにザントフォールトで開催された2021年F1第13戦オランダGP決勝は、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が母国GP初勝利をポール・トゥ・ウインで飾りました。今回はそんなオランダGPの様子を、熱田護カメラマンが歩き、見て、感じて撮った写真と一緒に紹介します。

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オランダGP。
まず、アップが遅くなってすみません。
イタリアでこれを書いています。
オランダでのレース取材は、僕がオートバイのグランプリを撮影していた1980年代後半に行っていたダッチTTレース、アッセン以来なので約30年ぶり。
宿は、スキポール空港近くに取っていて車でスムーズに行けば40分くらいの場所にサーキットがあります。
もちろん、このザントフォールト(地元の人に発音を聞くと“ザンドフォルト”)は僕にとって初めての撮影ですから楽しみにしていました。

スタートのシーン。
まあ、ほんとギッチリ満員。
7万人が来場、現在のオランダでのスポーツイベントは定員の65%しか入れてはいけないそうです。
見た感じ、約96%はフェルスタッペン選手応援団でしょうか。

フェルスタッペン選手は大切な地元で、ポールを獲得し、優勝という完璧なレースをやってのけました。
サラッとやったような印象もあるかもしれませんが、もちろん簡単なことではありません。普通なら、そのプレッシャーに耐えるのも大変なはず。
半端なく多くのファンが半端ない応援の圧を、たった一人の若者が背負うわけですから……
それをやってしまう、彼の強さは、もう脱帽するしかありません。

国旗を纏って表彰台に現れたフェルスタッペン選手の表情は満足感に満たされているようでした。
でも、嬉しくて嬉しくて、飛ぶはねてしまうという感じではなく、落ち着いている雰囲気。
少なくとも、イギリスGPでハミルトン選手が走り回ったり、登ったり、観客に飛び込んだりするような、嬉しさの表現とは明らかに違いを感じます。
その様子を見て、僕個人的には、どこかふてぶてしさも感じつつ、冷静さを漂わせる雰囲気はこれまでに見てきたドライバーとは明らかに違いを感じます。
だって、自分の人気でこのオランダGPが開催されることになり、初開催となった舞台で完璧な仕事を達成し、この落ち着きぶりは、一体なんなんだと思うわけです。
いや〜、半端ない……

2位のハミルトン選手。
表彰式のこの瞬間がくる少し前から、僕は背後からの観客席からの声に注意していました。
すると、大きな拍手が聞こえてきて、ものすごくホッとしたし、嬉しかったですね。
ハミルトン選手自身もホッとしたのでは無いでしょうか。
ブーイングは、僕には全く聞こえなかったです。

オランダのF1ファンが、待ちに待った瞬間が訪れました。
最高の雰囲気でした。
あらためて、お客さんが居て、そのお客さんが喜ぶ声や身振りでグランプリの雰囲気が出来上がるのだと思いました。
同時に、今年鈴鹿が開催されないという無念を強く感じました……
落胆が深すぎます……

レース後にガレージからホスピタリティに戻るペレス選手。
ピットレーンスタートから8位という活躍。
抜きにくい、このコースでポイント獲得は素晴らしい。
予選のパフォーマンスをあげることが出来たらさらに良しですよね。

ライコネン選手の引退発表とコロナ感染発表。
日本からの女性ファンからの悲鳴が、オランダまで聞こえてきたようにも思います。
残り少なくなっているグランプリへの出走が少なくなるというのは、残念です。
モンツアは出れるのかな???

ガスリー選手の仕事の完成度がどんどん上がっていてびっくりですね。
予選4位ってすごい!

レースも4位ってすごい!
マシンの完成度も好みに合っているんでしょうし、自身のドライビングスキルも上がってきているんでしょうね。
今後も楽しみです。

角田選手のグリッドに行ってきました。
当初の順位だとアウト側で、近くで撮影できると思っていたのですが、ラティフィー選手の降格で一つグリッドが繰り上がったために向こう側にいってしまって写真を撮るには少々残念なグリッドになってしまいました。
今回はPUトラブルのためにFP1の走行時間が無くなり、レースでもリタイヤとなってしまいました。
ガスリー選手の好調と逆の結果となってしまいましたね。
アルファタウリというチームで来季の契約も発表になりましたし、貪欲にF1を学んで、自分の思うような車に仕立て上げて成績を残せるようになって欲しいです。

フェルスタッペン選手は、これでドライバーズランキングがトップに返り咲きました。
ハミルトン選手と互角の戦いが続いていく今年は、歴史に残るシーズンになることは間違いない気がします!

レース後の山本さん!
嬉しい1勝でしたね!

アロンソ選手、さすがのレース展開でした。
アルピーヌのマシン開発にもアロンソ選手の手腕が効いているに違いないと思います。

3コーナーのバンク立ち上がりです。
F1のバンクの走らせ方を、じっくりと見てみると、ドライバーによって走行ラインが違うので面白かったです。
フェルスタッペン選手とアロンソ選手、ノリス選手などが一番上まで登って向きを変えて降りつつ加速していく感じが顕著でした。

1コーナーのグランドスタンド裏の風景。
誰もマスクしてないし、見てのように密です。
まあ、問題なければそれでいいんだけど……

グリッドでセレモニーに向かうルクレール選手。
亀の甲羅みたいなのは、体を冷やすためのものだと思われます。

サーキット名のザントフォールトのザントは砂という意味。
サーキットのゲートを出て300mも歩けば海です。
なので、砂の上にコースができていて、コース脇は砂。
砂浜を歩いて移動しなければいけないのは、カメラマン。
なかなかのエクササイズにもなりましたし、レース後の靴の中は、砂がドッサリ入っていました。
でも、昔ながらのコースなので、アンジュレーションも高低差もあるし、マシンまでの距離も近いし撮影するのが楽しくなるコースでした。

サポートレースのF3。
岩佐選手の第1レースのスタートです。
リバースグリッド4位からのレースで1台かわして3位でチェッカー。

オランダが終わった時点でランキング12位。
残りはソチでの3レースのみ。
やっぱり、1イベント3レースある中で、少なくてもいいからポイントを獲得していかないと上位にはいけないということですね。
ソチのレースで勝つところを見てみたいです!

Wシリーズの小山選手。
今回は10位、1ポイント獲得というレースでした。
ランキングは13位。
思ったようなマシンにならない、コミュニケーションの難しさ。
今年はアメリカとメキシコの2戦残すのみ。

今回はポルシェのデモランがありました。
懐かしい車がたくさん。

コースに出ようと歩いていたら、ヘイヘイと呼ばれるままに写真を撮りました。
ついにホームグランプリ開催おめでとうございます!

このケープ。
サーキット内で木曜日、金曜日に配ってました。

オレンジが圧倒的な存在感を示したグランプリ。

一体感がなんとも素晴らしい。
天気も3日間良くて、気持ちの良い週末でした。
オランダの天気は、あまり良くないというイメージを持っていたので晴天続きにびっくりです。
サーキットに通う途中は、街中を通過してくるのですが、人と自転車が安全に通れる道が整備されていてゴミも落ちてないし、運河がたくさんあり、街並みも綺麗。
久しぶりに滞在したオランダの印象は素晴らしかったです。

来年、満員の10万人を入れたザントフォールトが今から楽しみです!

ジャド・シェリフさん。
スイス在住のカメラマンです。
現在64歳で、このオランダGPで631戦目のレジェンドカメラマンです。
僕がオートバイのGPを撮っていた時に、ジャドさんも時々来ていたのでお互いの面識は30年以上になるかと思います。
色々な国から多くのカメラマンが集まる中、日本人の僕などにもいつも親切で仲良くしてくれて、いろんな情報も教えてくれる優しい方です。
僕が昔仕事をしていた、GPXという雑誌でもフイルムを預かって一緒に紙面作りに参加してくれていました。

ジャドさんのF1カメラマンとしてのデビューは1980年のザントフォールトだったそうです。
そして、一つの区切りとして今年のオランダGPを考えているということでした。
「最後にするかどうかは、まだ100%確定ではないけれどね……」といつもの優しい笑顔での会話でした。
次のイタリアGPの時には、イタリアには行くけれど2週間奥さんと二人で旅行するそうです。

長い人生だけれど、次のステップに移行するときはどんな職業に就いていてもその時期は来ます。
ライコネン選手もそうですし、会社員でも公務員でも定年というものがありますからね。
現在はコロナ禍ということもあり、カメラマンの数は少なくなってきています。
主には大手のエージェンシーに所属しているカメラマンで、僕などのようにフリーカメラマンは極少数になってしまいました。
F1カメラマンという職業も徐々に変化しています。

長く、一緒に各国のサーキットで会っていた人に会えなくなるのは寂しいけれど、旅から旅の連続で溜まるストレスや疲れから解放されるというのは、時間の有効利用に繋がるし
やりたいことをやり始めるチャンスでもあるわけですから、少し羨ましくも感じます。

じゃあ、僕はどうするのだという自問自答すると……
F1を転戦して撮影したいという気持ちが、F1を転戦する事で、のしかかってくる様々な負の要因を上回っている限り続けたいと考えています。

ジャドさん、奥さんとイタリア旅行楽しんで美味しいご飯をたくさん食べてきてください!
そして、近い将来、F1の現場でまた会えるのを楽しみにしています。

© 株式会社三栄