【柔道】東京五輪金の新井千鶴が引退 高校恩師が苦節労う「いい笑顔だった」

東京五輪表彰台で爽やかな笑顔を見せた新井千鶴(東スポWeb)

世界女王が畳から去る。東京五輪の柔道女子70キロ級金メダルの新井千鶴(27=三井住友海上)が現役引退を発表。10日のオンライン会見では「本当に多くの人に支えられ、現役生活を歩むことができた。私に関わってくださった全ての方々に感謝の気持ちでいっぱい」と神妙に語った。

数々の試練を乗り越えてきた。2015年世界選手権では、出場した女子選手で唯一メダルを逃し、16年リオ五輪の代表選考会も敗れた。17、18年の世界選手権は優勝を果たすも、19年大会は3回戦で敗退。大粒の涙を流した。

母校・児玉高時代の恩師で柔道部監督の柏又(かしまた)洋邦氏は「有終の美を飾れたと思うが、そこまでの段階で本当に大変な思いをしたと思う。お疲れさまという思いでいっぱい」とねぎらった。

柏又氏と新井は、五輪後に会って話をする機会があったという。「印象に残ったのはやっぱり屈託のない笑顔ですね。自分は出し切った、やりきったっていう満足感などが笑顔の中にあふれていた。順風満帆じゃなかったからこそのいい笑顔だったのかなと思う」と感慨深げに振り返った。

今後は指導者として第2の柔道人生を歩む。新井は「選手の立場に立ってともに問題を乗り越えていける指導者を目指す」と力強く宣言。小中学時代の恩師で男衾柔道クラブの笠原則夫氏は「勇気や希望をあの子からいただいて、本当にありがたいなと思う。今後は指導者の立場でもまた飛躍して、次の世代の選手を育成してほしい」と期待を寄せた。

愚直な柔道スタイルで頂点まで駆け上がった新井。次は指導者として世界に挑む。

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