まんじゅう、せんべい、湯飲み…。事実上の退陣を表明した菅義偉首相(衆院神奈川2区)をモチーフにした関連商品が、じわり人気だ。内閣支持率の低迷とともに国会内の売店での売れ行きも鈍っていたが、首相が自民党総裁選への不出馬の意向を示してから、手土産や記念品として買い求める人が増えているという。店先に立つと政治のトレンドが垣間見えてきた。
◆緊急事態宣言の影響ここにも
首相の不出馬表明から6日後の9日夕、衆院第2議員会館内にある売店「おかめ堂」。店内で品定めをしていた中年男性が「スガちゃんまんじゅう」をレジに差し出した。「ねっ、また売れたでしょ」。会計後、寺田真三代表(75)がにんまり顔でささやいた。
首相が就任した昨年9月以降、7年8カ月ぶりの新首相誕生を記念して関連商品が次々と売り出された。例えば、大学時代に首相が空手部に所属していたことにちなんだ「スガちゃん瓦割りせんべい」や、新年号「令和」の色紙を掲げる首相の似顔絵が描かれた湯飲みが、その代表格だ。
政権発足直後は高い支持率を背景に「飛ぶように売れた」(寺田さん)。お菓子やグッズを店頭に並べれば売れ、問屋への発注を繰り返したという。だが、世論調査のたびに支持率は最低を更新し、売り上げも不調に。
そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。緊急事態宣言が繰り返され、国会見学に訪れる人が激減。コロナ前に多い月で1800人前後だった買い物客はコロナ後に6分の1程度になり、一日の売り上げは半分ほどに落ちた。
◆売れ行き、歴代首相では…
実際、首相の関連商品はどのくらい売れているのか。
「不出馬表明直前は1日数個。片手くらいしか売れなかったのが、今は両手ぐらい売れるようになった」と寺田さん。引き合いが増えたため従来より多めに仕入れているが、問屋に残る在庫もわずか。30個ほど残っていた湯飲みはすでに完売し、まんじゅうは店頭に並べている限りという。
店を切り盛りして半世紀。佐藤栄作氏以来25人の首相を見届けてきたという寺田さん。「関連商品の売れ行きは内閣支持率に比例する」が持論だ。
「菅さんは歴代首相では下の方。(民主党政権時の)野田(佳彦)さんより下で、菅(直人)さんと同じくらい。でも、コロナ禍で厳しい中では立派な売れ筋商品だよ」
では、これからの「一押し」は何か。寺田さんが指さしたのは、胸の位置にサーフィンに興じる河野太郎行革相(15区)がデザインされたTシャツだ。
河野氏の総裁選出馬を見越していたわけではなかったが、国民の高い人気にあやかろうと試しに10枚仕入れたところ、数日のうちに8枚が売れた。さらに10枚追加発注したところという。「さすが、波に乗っているよね」。またも、寺田さんはにんまりと笑った。