逆転負けで遠のくロッテの背中… 鷹・工藤監督はなぜ甲斐野の回跨ぎを選んだか?

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

6回に板東が追いつかれ、7回には回跨ぎとなった甲斐野が勝ち越しを許す

■ロッテ 5ー4 ソフトバンク(15日・PayPayドーム)

ソフトバンクは15日、本拠地PayPayドームでのロッテ戦で痛恨の逆転負けを喫した。4回に逆転に成功したものの、6回、7回に試合をひっくり返されて敗戦。工藤公康監督は裏目に出た継投策の意図について明かした。

1点をリードして6回を迎えると、ソフトバンクベンチは継投に出た。4回から2番手で好投していた松本から板東にスイッチ。だが、この板東がエチェバリアに二塁打、山口に四球を与えると、藤岡に右前へ同点の適時打。さらに田村に四球を与えると、堪らず甲斐野にスイッチした。

1死満塁のピンチでマウンドに上がった甲斐野は魂のこもった投球を見せた。荻野を捕邪飛。捕手の甲斐がロッテベンチに入りそうな打球を掴み取る好守だった。続く菅野は157キロの真っ直ぐで空振り三振。一打逆転のピンチを凌ぐと、マウンド上で雄叫びをあげた。

ソフトバンク・甲斐野央【写真:藤浦一都】

6回を板東、7回を甲斐野に任せるのは工藤監督の想定通り

絶体絶命の窮地を凌いだ甲斐野は7回もマウンドへ上がると、この回跨ぎがまた誤算に繋がった。先頭の中村奨に死球を与えると、暴投で二塁へ進め、角中に左中間への適時二塁打。左翼の栗原が懸命にグラブを伸ばしたが、わずかに及ばず勝ち越しを許した。この6、7回の継投が勝負の行方を左右することになった。

なぜ、この継投策になったのか。そして、なぜ、絶体絶命の窮地を凌いだ甲斐野に回を跨がせたのか。この日、セットアッパーのモイネロが出場選手登録されていた。本来の形であれば、7回に岩嵜、8回にモイネロ、9回に守護神の森のリレーができたはずだった。

工藤公康監督は試合後に「松本が2回をピシッと言ってくれたので、その後はまあシミュレーション通りでいけました。板東が苦しんでいたので、甲斐野が回跨ぎという形になってしまったんですけど……」と語った。甲斐野が回跨ぎとなったのは想定外だっただろうが、6回を板東、7回を甲斐野で凌ぐのは、当初から描いていたプラン通りだったという。

15日に1軍登録されたリバン・モイネロ【写真:藤浦一都】

この日出場選手登録されたモイネロ起用の可能性は…

では、この日登録されたばかりのモイネロはどう使う予定だったのか。指揮官は「今日はモイネロ(を投げさせる予定)はなかったです。ブルペンで投げて最終的に確認して、というところだったので、今日は使うつもりはなかった」という。モイネロをベンチに置くことによる戦略上の狙いがあったと思われるが、投げさせる予定のない投手を登録し、貴重な1枠を費やしたか。

継投策が裏目に出て、痛恨の4連敗となったソフトバンク。首位ロッテとの差は8.5ゲームと開き、CS出場圏内の3位楽天との差も3.5ゲームに開いた。それだけでなく、5位の西武も2.5ゲーム差に接近してきた。

「負けたので使っている僕が悪い、責任を取らないといけないと思っています。選手には昨日、勝ち負けは気にせず100%を出して欲しい、勝敗は9回の最後のアウトを聞くまで分からないんで精一杯やってくれればいい。結果はこちらが受け止めてやるから意識しないでやってほしいと言っている。勝敗に関しては僕自身の責任だと思っています」。試合後、こう語っていた工藤監督。逆転でのリーグ優勝どころか、下位の2チームが追いかけてきている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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