日韓で揺れる仏像盗難事件、「倭寇が略奪」で返還要求の韓国寺側に有利か...韓国検察が鑑定「受け入れ」

2012年に長崎県対馬市の観音寺から韓国人窃盗団に盗まれた事件(対馬仏像盗難事件)で、韓国の裁判所が1審で盗難仏像の日本への返還を事実上拒否する決定を下したことで、日韓間で外交問題となっていたが、2審が開かれている韓国高裁で動きがあった。

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大田(テジョン)高裁は15日、忠清南道瑞山市の浮石寺が韓国政府を相手取った控訴審において、韓国政府を代理した検察側が、これ以上、仏像の真偽について争わないと述べた。 これについて韓国メディアは、1330年に浮石寺で同仏像が制作されたという韓国文化財庁の鑑定結果を受け入れるというものであると解釈している。つまり浮石寺側に有利となる。

検察は去る7月、動物像を盗んだ韓国人窃盗団らが、2012年に仏像を盗み釜山港で通関させるときに「贋作」という所見を出した鑑定委員を証人として申請し、これが偽物であると主張してきた。偽物であると判定されれば、寺側の所有権主張の根拠が無くなるため、外交問題化を避けたい韓国政府としては望ましい結果になる。

金銅觀音普薩坐像/韓国文化財庁提供

一方で、同裁判には、盗まれた側の観音寺が参加すると表明しており、検察側は観音寺が参加するまで裁判を延期すべきだと主張した。しかし、浮石寺側の弁護士は、観音寺の参加意思が明らかではいとし、早急な判決を要求したと韓国各紙は伝えた。

裁判所側は「次の公判まで観音寺の参加意思が明らかでない場合は、裁判を終結する」と明らかにした。次の裁判は11月24日に開かれる予定であり、観音寺(日本)の参加がなければ浮石寺(韓国)側に有利な判決が確定する可能性が出ている。

対馬仏像盗難事件とは、キム容疑者(当時69)ら窃盗団が2012年10月に日本に渡り、対馬の観音寺から金銅仏像を盗んだことで日韓間の外交問題に発展した事件を指す。仏像は高さ50.5㎝、重38.6㎏で、1330年に浮石寺で製作されが、後に「倭寇」の略奪により日本に渡ったものと推定されている。韓国初となった国外文化財訴訟の裁判において、キム容疑者ら窃盗団は「日本が略奪して行った文化財を持ち帰ったので私たちは愛国者だ」などと主張した。

1審では、浮石寺側が勝訴している。仏像は現在、大田国立文化財研究所に保管している。同紙事件の裁判は長期化しており、控訴審が続くなかで裁判官が変わり、検察側訴訟代理人も人事異動などを理由に、10人が交代している。

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