糸魚川市能生の医師・室川諭さん(76)は9月1日付で、「能生白山神社春季大祭社参行列之図」を同神社に奉納した。江戸時代末期の行列の様子を再現した日本画の大作で、社務所に飾られた。
作者は三重県津市出身で、千葉県八千代市に長く居住した現代美術作家・浅井昭氏(1928~2017年)。精力的な創作活動で国内外において多数受賞した他、1972(昭和47)年から98(平成10)年まで多摩美術大油絵科で教壇に立った。八千代市芸術文化協会長などを歴任し、同市の平和祈念碑も手掛けている。
室川さんは、母校・東邦大の美術部で浅井氏の指導を受けた縁。八千代市の自宅に下宿したこともある。浅井氏は、室川さんたっての依頼を快諾した。
同作品(縦60センチ×横5・6メートル)は、同神社所蔵の古文書「御祭禮入用帳」の記述に基づいた。同社の別当寺に当たる宝光院の代官・加藤五十吉により安政2(1855)年、往時の春季大祭の概要が記されたもの。当時は神社近くに家並みはなく、日本海を背景にした行列図となった。
室川さんは同書の記載とともに、現在の大祭、境内、弁天岩など神社周辺の写真を資料として提供。浅井氏はこれらを参考に、自ら時代考証を行った。実際の春季大祭も1度見学している。
行列の順序や装束、身支度、持ち物などを精密に描写。加えて僧侶、神主、稚児、侍などの一人一人が表情豊かに描かれた。約7年を費やし2011(平成23)年に完成した。浅井氏は同17(同29)年、89歳で死去。諸事情から生前の奉納は間に合わなかった。
奉納に当たり室川さんは、あらためて浅井氏との縁に感謝し「この額を見て当時の様子をしのんでほしい」と話した。中村利勝・筆頭総代(74)は「大事なものを頂きありがたい。皆さんに見ていただきたい」と願った。