島原市のコミュニティーバス 10月から「タクシー形式」に AI活用

コミュニティーバスに乗り込む利用者ら=島原市下川尻町、島原港ターミナルビル前(市提供)

 長崎県島原市のコミュニティーバスの運行方法が10月から変わる。これまでは、決められたルートを時刻表通りに運行する「バス形式」だったが、乗客が行きたい停留所だけに止まる「タクシー形式」へ。人工知能(AI)を駆使して最短ルートを探り、市中心部へも乗り入れるようになるため、利便性向上につながりそうだ。

 市民の反応はおおむね好意的だ。
 60代の女性は、10月からのタクシー形式への運行変更に「スーパーなどでの買い物に、気軽に行けるようになる」と喜ぶ。通勤で利用する50代の男性公務員は、通勤時間帯のバスが満員で「密状態」になるのが怖かった。「選択肢が増え通勤が快適になった上に、今後は目的地に早く着くのでより便利になる」と期待する。
 同バス(9人乗りワゴン車)は、市の委託を受けた島鉄と市内のタクシー事業者が昨年3月に運行を始めた。高齢者の外出を促進し公共交通の空白地解消を図るのが目的。一部公民館や島原港を発着点に、▽三会・杉谷線(路線距離約32キロ)▽大三東・三会線(同約24キロ)▽有明線(同約31キロ)▽大下・木場線(同約17キロ)▽安徳線(同約24キロ)▽白山線(同約13キロ)の6ルートを1日各4便。各路線を時計回り・反時計回りに循環したり、発着場所を起点に往復したりする。
 3ルートで運行を開始した昨年3月は、1カ月間で121人が利用。順調な滑り出しだったが、20年度は計704人にとどまった。新型コロナウイルス感染拡大が主な要因だが、使い勝手の悪さも理由に挙げられる。
 前日夕までの予約が必要で、停留所にいきなり行っても乗車できないからだ。このため、予約時間を出発30分前までにしたり、ルートを増やすなどして改善。その結果、今年7月までの3カ月間の乗降客数は平均80人以上と、持ち直しつつある。
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 島原鉄道が9月末で市内のバス路線を大幅廃止するのに伴い、コミュニティーバスは10月から「タクシー形式」に変更。停留所の数を今の約110カ所から約250カ所へと倍以上に増やす。島鉄が廃止する住宅地を走る区間も引き継ぐ。
 市は約1千万円をかけ、AIを活用した専用の送迎サービスを導入。利用者が目的地や乗車時刻などを電話やネットで予約すると、予約者数に応じて、AIがそれぞれの目的地(停留所)に行くにはどのルートが最短かを計算する仕組み。予約が一人だけなら、最寄りの停留所から目的地まで直行する。
 市政策企画課によると、2022年春に再オープン予定のイオン島原店(弁天町1丁目)敷地内へも乗り入れる予定。運賃は現在と変わらず中学生以上200円、小学生100円、未就学児は無料。
 浜野彰・市市長公室島原ふるさと創生本部長は「路線バスを長時間待っているお年寄りの姿もよく見かける。周知を進め、利用者の増加につなげたい」と話す。

市内7地区を色分けし、全停留所を示した地図

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