メクル第573号<旬感 V・ファーレン> GK 富澤雅也(とみざわ・まさや)選手(背番号1) いつでもポジティブに

「試合の流れを読めるのが強み」と語る富澤選手

 V長崎一筋(ひとすじ)6年目。チームの中で在籍(ざいせき)年数が一番長い選手になりました。クラブ存続(そんぞく)の危機(きき)やJ1昇格(しょうかく)とJ2降格(こうかく)、天皇杯(てんのうはい)ベスト4などクラブの歴史的な場面に遭遇(そうぐう)してきました。まさに「激動(げきどう)」の時間でした。「いろんなことを一気に経験(けいけん)して、刺激(しげき)的だったけれど、考える間もなく過(す)ぎ去っていった」と話します。
 2016年、V長崎に加入。大学時代に複数(ふくすう)のJクラブの練習に参加しましたが、オファーは来ませんでした。そんな時、V長崎から声が掛(か)かりました。「V長崎に拾ってもらった立場」。しかし、加入後2年間は公式戦に出場することができませんでした。「プロとして『準備(じゅんび)』という言葉はふさわしくないけど、この2年間どう成長していくべきかポジティブに考えることができた」。プロである以上結果が求められる世界で「焦(あせ)り」はあったが、来るべき時に備(そな)えて常(つね)に準備は怠(おこた)りませんでした。
 初めて公式戦に出場したのは18年の天皇杯2回戦。「この試合がサッカー人生でターニングポイントだった。GKとしてまだまだ至(いた)らなさを感じたが、試合に出て得た経験は大きかったし、今につながっている」と振(ふ)り返ります。
 「Jリーガーとしてラストチャンス」。強い覚悟(かくご)で臨(のぞ)んだ19年は、飛躍(ひやく)の年になりました。ルヴァン杯で活躍してプレーオフ進出に貢献(こうけん)。良い流れのまま巡(めぐ)ってきたリーグ戦に初出場し、16試合ゴールマウスを守りました。「今まで試合に出られない時間が長かったけれど、過(す)ごして来た日々は無駄(むだ)ではなかった」
 背番号(せばんごう)を「1」に変更(へんこう)した20年は出場が1試合にとどまり、今年も開幕(かいまく)スタメンは勝ち取れませんでしたが、腐(くさ)ることはありません。「今、何をすべきか」。いつも物事をポジティブにとらえるようにしました。第10節の東京ヴェルディ戦を皮切りに出場機会を増(ふ)やし、9月14日のモンテディオ山形戦でリーグ戦自己(じこ)最多の17試合出場を果たしました。
 6年間の思いを胸(むね)に書いた言葉は「感謝(かんしゃ)」。プロ選手としていつまでもこの気持ちを忘(わす)れません。「良いときも悪いときも周りの支(ささ)えがあって、今がある」と語ります。
 チームの規律(きりつ)や約束事が明確(めいかく)にされている中で「監督(かんとく)が理想とする“絵”に近づける」のが目標。そのために一戦必勝で準備をしっかりして、スタメンを勝ち取ると意気込みます。「試合の流れを読めるのが強み」と言う長崎の守護神(しゅごしん)。V長崎の最後のとりでとしてゴールを守ります。

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