【新型コロナ】神奈川でも増える子どもの感染 10歳未満顕著に 治療薬も乏しく「長い闘いになる」

新型コロナに感染した生後11カ月の乳児をケアする医師=8月下旬、横須賀市立うわまち病院(同院提供、画像を一部修整しています)

 新型コロナウイルスの感染者が9月以降、減少する中で、子どもの患者数は増えている。神奈川県内でも新規感染者のうち10代以下が2割を超える日があり、10歳未満に限ると、感染者数がピークだった8月と比べて増加傾向が顕著だ。子ども向けの治療薬は乏しく、12歳未満はワクチン接種も対象外。現場で奮闘する小児科医は「長い闘いになる」と先を見据える。

◆夏休み中に拡大か
 9月上旬、三浦半島の医療を支える横須賀市立うわまち病院のコロナ病棟には、成人の重症・中等症患者とともに、3人の子どもが収容されていた。

 鼻づまりから呼吸困難に陥った乳児や、高熱から飲食ができなくなった子ども…。同院小児医療センター長の宮本朋幸医師(55)は「小児の感染者増はデルタ株の特徴。夏休み期間中に子どもの間で広がったのだろう」と分析し、「通常の風邪と比べてコロナの発熱は自力で飲食ができなくなる傾向があり、重症度が増す」と警戒する。

 同院は県内に7カ所ある小児コロナ患者の受け入れ拠点病院の一つで、15歳未満の患者数は増加している。新型コロナで入院する子どもは、7月までは月平均で3人程度だったが、8月だけで8人と急増。その後も高止まりしている。県内全体で見ても、過去最多(2878人)の感染者数を記録した8月20日には、10歳以下の割合は18%だったのに対し、今月17日には24%まで増加。10歳未満の割合も6%から12%へと大幅に増えた。

 厚生労働省によると、全国では9月9~15日の1週間で10歳以下は約1万4千人が感染し、全体の約22%を占めた。2学期が始まったことで6~12日には小学校でクラスター(感染者集団)が32件発生し、前週の3倍超になったという。

◆「特有の難しさ」
 同院のコロナ病床は中等症29床、重症8床。状況に応じて子ども用に病床を確保しているが、「子どもと同室になることを拒む成人患者もいる」(宮本医師)ため、なるべく個室を使うなど苦慮している。

 さらに「小児特有の難しさ」の対応にも追われる。乳児には看護師が3時間おきにミルクを飲ませ、泣く度にだっこするなど「密」なケアが欠かせない。幼い子どもは自分で症状を訴えられず、診察をしようとしても「嫌だ」とだだをこねられることも。宮本医師は「機嫌が悪い時や寝ている時も体調が悪化しているかもしれない」と全身をくまなくチェックし、異変がないか目を光らせる。

© 株式会社神奈川新聞社