性奴隷制をテーマにした朝鮮の小説 加害国日本をめぐるミステリー

朝鮮で性奴隷制問題を扱った小説が多くの読者の共感を得ている。

作者はチョン・イングァンさん。チョンさんは2016年、日本軍性奴隷制をテーマにした長編小説「4片の氷」で一躍文壇の寵児となった。タイを舞台に日本による性奴隷犯罪と歴史わい曲をめぐって加害国日本と被害を受けた3カ国の登場人物が織りなすミステリー推理小説。

「4片の氷」の作者、チョン・イングァンさん(C)朝鮮新報

本作は朝鮮で性奴隷制問題を扱った初の小説とされる。過去に多くの作家たちが政治的・文学的表現において困難を伴うこのテーマに挑んだが日の目を見なかった。とくに性奴隷被害の表現・描写は、「民族的尊厳の見地から読者の理解を得られない」として敬遠されてきた。

チョンさんは本作であえて加害者に焦点を当てた。日本人の国民性と性奴隷制における精神病理を抉り出した。

本作は昭和天皇に有罪判決を下した2000年12月の女性国際戦犯法廷が執筆のきっかけになったという。

チョンさんは「同時代作家の使命として歴史的課題に向き合い、読者の期待に応えていきたい」と話す。最新作は祖国統一をテーマにしたノンフィクション小説「星たちの故郷」。

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