結成10周年の「越後上越上杉おもてなし武将隊」(新潟県上越市)、コロナ禍でYouTubeやテレビ出演が増加

(越後上越上杉おもてなし武将隊チャンネルより)

新潟県上越市の越後上越上杉おもてなし武将隊(公益社団法人上越観光コンベンション協会運営)は2011年4月に結成され、今年でちょうど10周年を迎えた。今年5月には上杉謙信公の居城で新潟県上越市の春日山にある謙信を祀った春日山神社の境内で10周年祭が開かれ、演武を披露、集まった多くのファンを魅了した。

メンバーは、戦国武将の中でも全国的な人気を誇る「義」の武将、上杉謙信公のほか、謙信の養子となった上杉景勝、謙信の姉である綾姫、女武者のまつえ、足軽の十吾郎の5人。

新型コロナウイルスが流行する前は、東京都や大阪府に春の高田城址公園観桜会などのPR活動のために出向くことも多かったが、コロナ禍の現在、市外県外へ行くことはほぼなくなった。リーダーである上杉謙信公はこう話す。「原点回帰ではないが、コロナ禍で県外に行けない分、春日山城跡をはじめ、市内の小学校、保育園などで地元の人や子どもたちと触れ合うことができるようになった」

また、県外に行けない代わりに力を入れているのが、YouTubeや地元のケーブルテレビ「上越ケーブルビジョン」への番組出演だ。

まず、YouTubeは2020年4月末からスタートした。実は、企画の立案から撮影、動画の編集まですべて武将隊のメンバーでやっているというから驚きだ。景勝は「企画も自分で考えている。この間はソロキャンプをして、炭火でステーキを焼くという動画を投稿した。戦国武将の『野営』を現代の『キャンプ』でやるという企画だった」と話し、楽しみながら制作している雰囲気が伝わってきた。当初チャンネル登録者は400人ほどだったが、その後順調に増加し、現在は1,400人ほどまで増えた。

一方、上越ケーブルビジョンの情報番組「すまいるone」にゲストMCという形で出演している。この番組は飲食店の料理を食べてレポートする「食レポ」などがあるが、謙信公は直近では上越市にある立ち食いそば店のカレーを食べてきたという。ユーチューバーとテレビ出演ということで、コロナ禍でいわゆる“タレント活動”も増えたといえるが、謙信公は「やはり我々の本分は来てくれた人におもてなしをすること。それを忘れてはいけない」と自身とメンバーを戒める。

謙信公によると、発足当初の10年前と比較すると、春日山を訪れる人も様変わりしたという。「基本的に歴史や城が好きな人は年配のマニアの人が多いが、7、8年前からゲームや漫画の影響だと思うが、20代から30代の若い女性が1人で来ることも増えてきている」(謙信公)。綾姫も「若い歴史好きな人たちが、聖地巡礼のようなことで春日山を訪れる人もいる」と話す。

上杉謙信公

上杉景勝

綾姫

最後に謙信、景勝、綾姫の3人に演じることでのやりがいについて聞くと、景勝は「県外にPR活動に行った場所から実際に春日山に来てくれた時は、目的が達成されてうれしい。また、現在では、動画投稿を見た人からコメントが入るとうれしい」と語った。

綾姫は「私は昨年7月からの加入なので県外に出る機会はまだないが、YouTubeやケーブルテレビに出るなど地元に対するおもてなしはできている。『見たことあるよ』と言われるのはうれしい」と話す。

謙信公は「上杉謙信を知らない人もまだいるので、私を通じて上杉謙信という武将がいたことを知ってもらうことも大事だと思う。また、子どもたちに『かっこいい』と言われたり、『謙信みたいになりたい』と言われたりするとうれしい」と話す。

10年前に上越市の発案でわずか7か月の期間限定ユニットとして誕生した越後上越上杉おもてなし武将隊は、ついに10周年を迎えるまでに成長した。織田信長や豊臣秀吉、徳川家康などは全国に何人もの武将隊が存在するが、謙信はこの武将隊のただ1人だけ。そのオンリーワンを強みにアフターコロナを見据え、上越市のPRに励んでほしい。

ポーズを決める武将隊メンバー

【関連リンク】
越後上越 上杉おもてなし武将隊サイト

(文・梅川康輝)

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