富の分配なくして成長なし!立憲民主党の考える経済政策とは?乙武洋匡が立憲民主党・江田憲司氏に迫る!

選挙ドットコムでは、乙武洋匡氏をMCに迎え選挙や政治の情報をわかりやすくお伝えするYouTube番組「選挙ドットコムちゃんねる」を毎週更新中です。

今回は2021年7月11日に公開された対談の様子をご紹介。ゲストは立憲民主党・江田憲司議員です。横浜市長選や経済政策ついて伺いました。

 

 

横浜市長選挙について

最初の話題は、2021年8月に行われた横浜市長選挙について。

乙武氏は、「野党系から『江田さんに出て欲しい』という意見が多かったと聞いている。江田さんは首長ではなく国会議員にこだわっていきたいのですか?」と尋ねます。

江田議員は、「首長が良い悪いではく、僕は国政しか知らない人間だ。首長に適している人はそれなりにいると思う。僕はずっと政界再編を訴えてきて、野党第一党の立憲民主党で代表代行までさせて頂いている。まさにこれからチャレンジしようという時に、寄り道はできない。

国民の関心はコロナ対応にある。(横浜市長選挙に当選した)山中竹春さんは、データサイエンティストで医学部教授。今、菅政権は科学者の言うことも聞かず、データや知見に基づかないコロナ対応で失敗を繰り返している。それに対して、山中さんのような科学者のデータ分析によるコロナ対応をしっかりしていく」と答えました。

立憲民主党に任せて経済は大丈夫なの?

江田議員は、「なぜ日本経済が混迷から抜け出せないかというと、国民の懐が寒くなっているから。お買い物をしてくれないから消費が伸びない。根本治療は、国民の懐を暖かくしてお買い物をして頂くこと

その一つがベーシックサービスの充実だ。医療、福祉、介護、子育て、教育といった人生を生きていく上で不可欠なサービスへ予算を重点的に配分する。よりストレートなやり方としては、減税がある。たとえば、年収1千万円以下の人の所得税を1年間ゼロにする。

今、所得税は5.6兆円ほどの収入があるが、そのうち5兆円はサラリーマンからの源泉徴収だ。この源泉徴収を1年間ゼロにすることで、年収4百万〜5百万円ぐらいの年収世帯で1人あたり10万円程度の効果がある。これは即効性もあるし簡便なやり方だから、コロナ禍で実現させたい。そして、非課税世帯には給付金を出す。このような手段を組み合わせて消費を伸ばすことで、経済は上向かせられる」と話しました。

財源の捻出について

経済政策の財源はどのように考えているのでしょうか。

江田議員は、「財源については増税で対応する。ただし、富裕層や大企業に限って増税する。たとえば法人実効税率は今、大企業も中小企業も一律30%弱。所得税は所得の高い人ほど税率が高くなる累進税率になっているが、法人税も累進税率を導入する。そうすると、40%対象の大企業にとっては増税になり、10%対象の中小企業にとっては減税になる。

また、所得税は所得が1億円を超えるとどんどん負担率が下がっていく構造になっていて、お金持ちになればなるほど所得税の負担率が低くなる。さらには1億円を超える所得の人ほど株式取引をやっていて、その利益は本体所得と分離してたったの20%しか税金がかからない(分離課税)。

今、所得税の最高税率は45%で、昔は75%だったのをどんどん下げてきた。お金持ちは税の負担能力があるのだから、所得税の最高税率もせめて50%に上げたい。プラスして、株式で儲けた人には少なくとも30%の税率は負担して頂きたい。これは大企業イジメでも富裕層イジメでもなく、今までが優遇され過ぎていたのだから、税の負担能力が高い人には応分の負担を求めるということ。

財務省の資料を見ると、大企業が一番法人税を負担していないと分かるが、このことも国民は知らない。大企業が中小企業よりも法人税を負担していないのは何故かというと、研究開発減税や省エネ減税などの政策減税があるから。名前は言えないが、某大企業は法人税を負担していない。

アメリカでも同じ問題があり、IT企業の大金持ちが所得税を負担していなかった。だから、バイデン大統領も富裕層や大企業に限って増税しようとしている。そして財源を捻出し、インフラや生活投資にしようと言っている。僕らはバイデン大統領が誕生する前からこのような検討をしていて、アメリカと日本の民主党がいみじくも歩調を合わせる形になった」と話しました。

自民党にはできない経済政策

乙武氏は、「『生産性のないゾンビ企業を活かすより、大企業のほうが雇用を生み出すのだから、そこを生き残らせたほうがいい』と感じる人もいると思う」と投げかけます。

江田議員は、「ゾンビ企業も構造改善はやるべきだと思うが、今、企業は設備投資を控えていたり人件費を増やさなかったりで、戦後最大475兆円の内部留保を持っている。ここを何とか市場に流したい。法人税を上げれば、人件費を増やしたり設備投資に回したりしないと、利益を出しても法人税で取られてしまうことになる。

さらに、個人の金融資産残高はタンス預金も含めて1,900兆円もある。この1,900兆円の予算をなるべく所得再配分に使いたい。たとえば健康保険の保険料は、月収が139万円を超えると全部負担額は一緒になる。お金持ちにもう少し健康保険料を負担して頂ければ、医療も安定する。ここを改善しないと財源が出てこない。

僕は〝分配なくして成長なし〟と言っている。従来の経済学では、経済成長と所得再分配は二律背反と言われていた。しかし最近では、新自由主義を標榜してきたIMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)という国際機関ですら、『経済成長と所得再分配は両立する』と言っていて、むしろ分配を強めることで成長にもつながる。

ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者:クルーグマンは、1%の超富裕層から税金を取り、99%の普通の人に分配していくことが成長戦略だと主張している」と話しました。

最後に乙武氏は、「富裕層にも、所得(フロー)を持っている人と資産(ストック)を持っている人の2種類がある。ストックに税金をかけていくほうが経済は成長していくと思う」と投げかけます。

江田議員は、「マイナンバーカードですら普及していない日本で、資産をどれだけ把握できるのかという問題がある。一つのアイデアとして、相続税をもう少し払って頂くということも考えていかなければならない。これは、大企業や富裕層を支持基盤にしている自民党には言えないことだ。増税は、法律を変えれば明日からでもできる」と話しました。

江田憲司氏プロフィール

1956年岡山県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通商産業省に入省。官房総務課、資源エネルギー庁等を経て、1987年、ハーバード大学国際問題研究所フェロー(特別研究員)。1990年、海部・宮澤内閣で首相官邸に出向(内閣副参事官)し、総理演説や国会対策を担当。その後、産業政策局、通商政策局等を経て、1994年、村山内閣で橋本龍太郎通産大臣秘書官。1996年、橋本内閣で総理大臣秘書官(政務担当)。内閣総辞職と同時に通産省には戻らず退官。 退官後、桐蔭横浜大学法学部客員教授等を経て、2002年、衆議院議員に無所属で初当選。その後、みんなの党(幹事長)、結いの党(代表)、維新の党(代表)、民進党(代表代行)を経て、現在、衆議院議員6期(無所属)。

 

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