阪神ドラ6・中野 有言実行の新人王あるぞ! 恩師が明かす「攻める守備」の原点

好捕連発でチームを救った阪神・中野(中)。右は大山(東スポWeb)

阪神は24日の巨人戦(東京ドーム)を6―6でドロー。同点で迎えた9回一死満塁の大ピンチから中野拓夢内野手(25)が好守を連発し、サヨナラ負けの危機からチームを救う大仕事を見せた。入団当初全くの無名だった社会人出身ドラ6は、切れ味鋭い打撃と積極的な守備で今や新人王候補の一角に数えられるまでに急成長。ルーキーとは思えぬ〝渋い〟働きで矢野阪神を支える背番号51の原点は――。

25歳にして〝いぶし銀〟の風格を漂わせるルーキーが、超ド派手なビッグプレーで伝統の一戦を彩った。

サンズの適時二塁打で同点に追いついた直後の9回。ゲームをこのままクローズさせるべく、阪神は守護神・スアレスをマウンドに送り込むが、坂本、岡本和の連続安打などで一死満塁の大ピンチを迎える。1つの失点も許されぬ状況下で迎えた打者は、この日2安打2打点と当たっている丸。絶体絶命の窮地に虎は追い込まれた。

カウント1―0からスアレスが投じた155キロ直球を丸は強振。打球は強烈な勢いで三遊間へ飛んだが、これを遊撃・中野が横っ飛びで好捕するスーパープレーを披露。すぐさま本塁に送球し三走・増田大を封殺した。

なおも場面は二死満塁。次打者・中田の放った遊撃への打球はドライブ性の難しいライナーだったが、これも中野が地面スレスレで好捕し、ゲームセット。ルーキーの好守2連発が剣が峰の虎を救った格好だ。

中野は2つのビッグプレーについて「1点与えたら終わりの場面でしたし、自分としても割り切って(本塁へ)送ることができた。とにかく攻める守備を心がけていた。今日はいい引き分けだったと思う。残り2試合、勝ち切れるように頑張っていきたい」とコメント。熱戦の直後であろうと、ルーキーらしからぬ落ち着いた語り口はこの日も変わらなかった。

出身は山形県。母校・日大山形高時代の恩師・荒木準也監督(49)は東北福祉大野球部在籍時に、阪神・矢野監督の3学年下の後輩として、ともにプレーした縁がある。「大学4年時に矢野さんは東北福祉大の主将だったのですが、後輩にも気さくに話しかけてくれる、本当に好青年といったタイプの方でした。もちろん熱さも持ち合わせた方でしたけどね。私は当時1年生。上下関係の厳しい時代でしたが、矢野さんのことを悪く言う1年生は一人もいませんでした。こうして教え子の中野が阪神でプレーしているのには、ご縁を感じます」と振り返る。

「中野は高校当時から予測と準備ができるタイプでした。考える力のある子。守備のセンスの良さは感じていましたね。失策は確かに多いのですが、ミスをした後も臆せずに勇気を持ってプレーできるメンタルの強さもある」。中野の失策数はセ・トップの15。だが、この日のように「攻める守備」を貫いているからこその数字とも言える。恩師も「積極性を重んじる矢野さんのチームらしいですよね。今後とも中野には攻撃的な守備を貫いてほしい」と教え子の背中を押す。

「佐藤輝くんや栗林(広島)くんもいますが、中野がこのままレギュラーとして今の数字を維持し、阪神を優勝、日本一に導けば新人王もあり得ると思います。私の先輩でもある矢野監督をぜひ胴上げしてほしいですね」

入団当初、新人王獲得を目標に挙げた無名ドラ6の言葉を、真に受けた虎党はそう多くなかっただろう。だが、その名の通り夢は今、拓かれようとしている。

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