1回もたず10失点KOの悪夢から2週間 鷹・石川柊太を甦らせた教訓とは?

ソフトバンク・石川柊太【写真:藤浦一都】

「あの試合があったから『ああいう日もあるんだな』と思えるようになった」

■ソフトバンク 4ー2 日本ハム(25日・PayPayドーム)

ソフトバンクは25日、本拠地PayPayドームで行われた日本ハム戦に4-2で勝利した。先発の石川柊太投手が6回途中3安打10奪三振2失点と好投。2週間前に1回もたず10失点KOされた右腕が“悪夢”で得た経験を胸に復調の白星を挙げた。

ストレート、変化球ともに威力十分だった。初回は浅間、西川、野村と3者連続三振。2回もヒット2本で1点を許したものの、アウト3つを全て三振で奪った。序盤に4点の援護をもらい、6回まで3安打2失点と好投。9月4日のオリックス戦以来となる今季6勝目を奪った。

悪夢から覚める1勝だ。9月11日に札幌ドームで行われた日本ハム戦。石川は初回に5安打3四死球で10点を失い、1回もたずノックアウトされた。自信を喪失してもおかしくないほど、壮絶な大炎上だった。これを石川は「大きな経験だった。あの試合があったから『ああいう日もあるんだな』と思えるようになった」と振り返った。

2週間前のこの試合。石川曰く「前々回は調子も良かったし、いいところにも投げられていて、真っ直ぐもしっかり腕を振れていた。だけど、ああいう結果が生まれた」のだという。打ち取ったと思った打球が不運にも野手の間を抜けていく。打ち上げたフライが内野と外野の間に落ちる。「自分の実力が通用しないから苦しんでいるというよりも『なんで?』みたいな感じ」。ことごとく野手のいないところに打球が飛んだ。

「打たれる時は打たれるものだし、そこに大きな意味があるわけではない時もある」

前回登板だった9月19日の楽天戦は5回を投げて3安打2失点。ただ、カーブを引っ掛ける場面が目立ち、2つのデッドボールを含む4四死球を与えた。内容は不安定だった。「自分の中で前々回を深掘りし過ぎた。考え過ぎてしまったのが前回の登板。打者の反応が良くないからフォームが……、とか余計なところを意識してマウンド上でどうしようもなくなった」。工藤監督や投手コーチらとも会話を重ねる中で、徐々に頭の中を整理できた。

投手は打球の結果をコントロールすることはできない。いいところに投げようと打たれる時はあるし、逆に、ど真ん中に投げても抑えられる時もある。操れないことを考えすぎるのではなく、“シンプル”にやるべきことだけにマウンド上ではフォーカスし、打者との対戦に意識を集中させることが大事だった。

「(10失点は)そういう日もあるんだな、というのが印象だった。運要素を感じることができて大きかった。監督にも『シンプルにいけ』と良く言われるんですけど、打たれる時は打たれるものだし、そこに大きな意味があるわけではない時があるので。ストライクゾーンで勝負してダメならダメだよねという捉え方をしていけばいい。誤魔化しながらというのをしてしまうと、自分との戦いになってしまう」

この日は左打者に対してカーブを引っ掛ける場面もなく、三振の山を築き上げた。「結果的にカーブ、ストレート、フォークもカットも使えて、方向性としては今後大きいものなんじゃないかな、と。自分にあまりない低めの意識で投げたりもできて、幅も広げられた。相手が変われば、また違うのかもしれないですけどね」。悪夢を乗り越えて、再び立ち上がった石川。最終盤に向けて、ソフトバンクにとって重要なピースが輝きを取り戻した。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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