打たせてくれない

 初球、緩い変化球が外角に外れてワンボール。2球目も同じようなコース。さあ、バッティングチャンス…のはずの3球目が来ない。「やっぱり勝負しません」-申告敬遠で一塁ベースへ。観客席のブーイングがやまない▲記録的な四球攻めに遭い、打たせてもらえない打席が続く。米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手。ライバル2人を1本差で追う本塁打王争いは足踏みのまま▲ここ3試合の四球が4個、3個、4個。3試合11四球は大リーグのタイ記録で、3試合続けて3四球以上は2003年以来。仮に「3四球」がもう1試合続くと、ここでも1930年のベーブ・ルースに並ぶらしい▲四球も作戦のうち、投手がまともに勝負してこないのは強打者の宿命だ。日本のプロ野球史上、最も四球の多い打者はもちろん世界の本塁打王、王貞治さん。長嶋茂雄さんは打席でバットを逆さに持って、度重なる敬遠に抗議したことがある▲当の大谷選手はいら立つそぶりなど見せず、バットや装具を取りに来たボールボーイをからかったり、相手の野手と談笑したり。楽しげな表情が変わらないのは何よりだが▲ひょっとして「日本人の本塁打王」に対する抵抗感や拒否感が…と、ふと気になった。力と力の勝負で余計な想像を打ち消してほしい。残りは8試合。(智)


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