阪神 本当は巨人戦3連勝できた? もったいない…ベンチの歓喜が生んだ「怠慢プレー」

土壇場の9回に同点ツーベースを放った阪神・サンズ(右)。塁上で喜んでいたが…

優勝争いのライバル・巨人との3連戦に2勝1分けと勝ち越し、28日からは本拠地・甲子園で広島3連戦に臨む阪神だが、首脳陣には浮かれムードはない。勝ったからこそ前向きに振り返られる反省もできた。それは「ベンチでの喜び方」。残り23試合、大詰めとなるペナントレースで今後に生かすべき出来事とは…。

24日からの敵地での3位・巨人との3連戦を2勝1分け。絶好調の首位・ヤクルトにピタリと追走し、下からの突き上げをはねのけた地力を矢野燿大監督(52)も「これからは1勝、1敗が(順位を)左右する。こういう試合から(選手が)成長していけると思う」と評価。優勝へ確かな手応えを得た3連戦になった。

24日のカード初戦は最終回に敵の守護神・ビエイラを攻略してドロー決着にすると、2戦目は左腕・高橋遥の完封勝利、3戦目は4番・大山の先制弾にベテラン・糸井の決勝打と、次々に殊勲を上げるヒーローが出てきたのも今後への好材料。そんなムードを反映してか、ベンチ内はいつも以上の一丸ムードでテンションの高さがあったという。

一方、残り試合の教訓とすべき出来事もあった。「そのあとの2試合に勝てたから結果的に前向きに振り返られるけど、これが逆の結果だったり1勝1敗だったら余計に引きずる材料にもなった。試合直後はコーチの人たちも引き分けに終わって『しまった』と思っただろうし」(チーム関係者)と、見せてはいけない〝スキ〟もあったという。24日の初戦、5―6と1点を追った9回だ。

無死二塁からサンズの中越え二塁打で同点としたシーン。土壇場で10打席ぶりの安打を放ったサンズは二塁到達後、沸き返る三塁ベンチへガッツポーズ。ナインや多くの関係者が助っ人へ歓喜を送り返していたタイミングと時を同じくして、巨人の中継プレーが乱れ、本塁返球が捕手の後方へそれる大暴投になっていた。三塁進塁が可能だったにもかかわらず、判断が遅れ、結局、サンズは二塁止まり。その後は犠打で一死三塁としたが、仮にその一打で「二塁打+敵失で三塁進塁」となっていれば、7―6と勝ち越せた可能性もあったという見方だ。

首脳陣の一人も「確かに変わるよ、作戦が。『無死三塁』と『一死三塁』ではウチも相手も」と自戒の念を込めてこう話す。「残り試合を考えたら『価値ある引き分け』ってあるのかもしれないけど、勝つに越したことはない。やっぱり本当に喜んでいいのは試合が終わってから。特にインプレー中は。今後はああいう判断遅れは繰り返しちゃいけない」

試合中、価値あるプレーをした選手に首脳陣やナインの区別なく、全員が賛辞を送る慣例は矢野阪神の定番スタイル。今後はスキなく、喜怒哀楽を表現して一丸ムードにもメリハリを――。「3連勝」できたかもしれない巨人3連戦で得た教訓を、切羽詰まった攻防の連続になる残り試合に生かさない手はない。

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