ヤクルトOBが古巣Vへ一抹の不安「明らかに今がMAX」 勝負の潮目は“月替わり”

阪神・矢野燿大監督、ヤクルト・高津臣吾監督、巨人・原辰徳監督(左から)【写真:荒川祐史】

ヤクルトは抜群の投手運用で2年連続最下位から上昇

残り20数試合となっても、ヤクルト、阪神、巨人の激烈な優勝争いが続くセ・リーグ。3球団それぞれの強み、不安材料、Vへの起爆剤は何か? 現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として21年間活躍した野球評論家・野口寿浩氏に分析してもらった。

27日現在、8連勝中のヤクルトが首位に立ち、2位の阪神も勝率9厘差(ゲーム差なし)に肉薄。巨人は26日の阪神戦に敗れた時点で4ゲーム差をつけられ、自力優勝の可能性が消滅したものの、まだ諦める状況ではない。

ヤクルトは昨年まで2年連続最下位と低迷していたが、2015年以来6年ぶりの優勝が現実味を帯びている。野口氏は「ヤクルトの強みは、第1に得点力抜群の打線(総得点523、1試合平均約4.5得点がリーグトップ=27日現在)。第2に選手に無理をさせない首脳陣の運用力だと思います」と指摘する。

先発要員の1人である高橋奎二投手の出場選手登録を26日に抹消したが、「おそらく、いろいろ故障歴のある高橋の先発を1度飛ばし、勝負所となる神宮6連戦(10月5-7日=対巨人、同8-10日=対阪神)中に、万全の状態で登板させるための配慮だと思います」。

一抹の不安は「明らかに今がMAXの状態で、今後はこれをキープするか、もしくは下がるしかない。一方、阪神はMAXではないし、巨人に至っては状態が悪い。もちろんヤクルトがこのままの勢いで逃げ切る可能性もありますが、何かのきっかけで潮目が変わってしまうかもしれない」という点。間もなく10月とあって、野口氏は「僕が長年プロ野球に携わってきた中で、原因はわからないけれど頻繁に起こっているのが、月が替わると流れが変わる──という現象です。OBの1人として、それが当てはまらなければいいと思います」と述懐。心配は尽きないようだ。

阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

追う阪神、失速気味の先発投手陣がアキレス腱…

追う阪神の強みは、近本光司外野手と中野拓夢内野手の1、2番コンビが相変わらず打撃好調な上、2勝1分けと圧倒した対巨人3連戦(24-26日)でジェフリー・マルテ内野手、大山悠輔内野手の主軸にも復調の兆しが見えたこと。

打撃不振のドラフト1位ルーキー・佐藤輝明内野手は、2軍調整を経て23日に戦列復帰したものの、「H」ランプがなかなか灯らず、連続打席無安打は27日現在「50」まで伸びている。それでも野口氏は「佐藤輝らしい強い当たりが出始めた。ヒットが1本出れば、本塁打を含めてドバドバ出る気がします」。起爆剤となる可能性を感じている。

阪神のアキレス腱は、先発投手陣にある。前半の快進撃を支えたエース・西勇輝投手は、7月以降1勝5敗、防御率5.52と急降下。既に10勝を挙げている青柳晃洋投手も失速気味だ。「いま自信を持って送り出せる先発投手は、故障明けの高橋遥人と秋山拓巳の2人だけ。不振の西勇に取って代われる人材も見当たらない」と野口氏。打力と継投でどこまでカバーできるか。

巨人のゼラス・ウィーラー【写真:荒川祐史】

巨人は中4~5日の“特攻ローテ”が吉凶どちらに出るか

巨人はやや引き離された格好だが、野口氏は「本塁打、打点がリーグトップの4番・岡本和真(27日現在、本塁打はヤクルト・村上とタイ)がいるのは強みです。幸い、前を打つ松原聖弥、坂本勇人も好調。チャンスを作って岡本に回す数が増えれば、自ずと得点力も上がる」と見ている。

さらに、ラッキーボーイになりそうな男がいる。「(ゼラス・)ウィーラー(内野手)です。最近は代打出場が増えましたが、明るい性格で彼が打つとチームが盛り上がるし、相変わらず得点圏打率も高い(.368)。スタメンで使った方が生きると思います」と先発起用を推奨する。

一方で、巨人は9月に入ってから先発投手を菅野智之、山口俊、戸郷翔征、高橋優貴、CC・メルセデスの5人に絞り、中4~5日で回す“特攻ローテ”を敷いている。野口氏は「ペナントレースはまだ3~4週間ある。最後まで持つのか、もう1枚加えた方がいいのではないか、という不安は拭えません」と言う。

それぞれ強みも弱みも抱える3球団。過酷なシーズン最終盤を経て、1か月後にトップでゴールテープを切るのは果たしてどこだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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