土曜上位4台ペナルティの波乱を経て、日曜にトヨタを降したシボレーが完勝/STC2000第9戦

 9月24~26日の週末にアルゼンチンはサン・フアン、ビリクム・サーキットで開催された2021年のスーパーTC2000(STC2000)第9戦は、土曜からルノー、ホンダ、トヨタ、そしてシボレーが入り乱れる混戦模様の週末に。

 土曜クオリファイレースでは、予選を制したアグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)を従え、ディフェンディングチャンピオンでシリーズ5冠を誇るマティアス・ロッシ(トヨタ・カローラSTC2000)が勝利を飾ったかに見えたが、TOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニアのエースを含むトップ10圏内の4台が各種の“ペナルティ”により姿を消し、5位チェッカーを受けたフランコ・ビビアン(トヨタ・カローラSTC2000)が勝利を得る波乱の幕開けとなった。

 しかし日曜のフィーチャーレースでは、雪辱を期す2016年シリーズ王者が脅威の巻き返しを見せ、シボレーのカナピノが逆転での今季3勝目をマーク。選手権でも2019年チャンピオンのリオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)に次ぐランキング2位の座を維持している。

 この9月第1週に首都ブエノスアイレスの元F1トラック、オスカー・ファン・ガルベスで開催されたシリーズ伝統の1戦である200kmレースを経て、長らく選手権首位の座を守ってきたロッシがペーニャにリーダーの座を明け渡すなど、シリーズ佳境でタイトル戦線にも大きな動きが出ている。

 そんななか始まった土曜予選では、シボレーのカナピノが今季2度目、キャリア通算28回目のポールポジションを獲得し、背後にはトヨタの王者ロッシとルノーのペーニャが続くなど、技術的に南米最高峰と宣言し“世界最速のFFツーリングカー”を標榜する同シリーズに、ファクトリーチームとして参戦する3マニュファクチャラーの熾烈な争いが具現化された。

 そのまま土曜午後には25分+1ラップのクオリファイレースを開催。シリーズ独自のハンディキャップ・システムにより予選5番手のホンダ陣営、プーマ・エナジー・ホンダ・レーシングのファビアン・シャナントゥオーニ(ホンダ・シビックSTC2000)と、同じく予選9番手に喰い込んだビビアンのカローラが、フロントロウからレースに挑んだ。

 背後では実力者たちによるポジション変動が頻発し、目まぐるしく順位が入れ替わるなか、最前列スタートの優位を得たシャナントゥオーニが今季初勝利に向け邁進。チェッカーまで残すは2ラップというところで「ひとつ目の事件」が発生する。

 ここまで先頭を守り続けたホンダ・シビックSTC2000はギヤボックス破損からペースダウンを余儀なくされ、背後にいたロッシ、カナピノ、ビビアンらに次々とパスされる無念の事態に。

ディフェンディングチャンピオンでシリーズ“5冠”を誇るマティアス・ロッシ(トヨタ・カローラSTC2000)が土曜クオリファイレースを制したかに見えたが……
上位勢の相次ぐペナルティにより、5位チェッカーを受けたフランコ・ビビアン(トヨタ・カローラSTC2000)が勝利を得る結果に
混乱の土曜表彰式で2位壇上に上がったアグスティン・カナピノ(左)も、最終的には3位に
土曜は無念の結果となったファビアン・シャナントゥオーニ(ホンダ・シビックSTC2000)は、日曜最後尾からの巻き返しに

■シボレー、トヨタ、ルノーの3車種が表彰台を分け合う

 これでトップチェッカーをくぐり、タイトル戦線復帰に向けまずは土曜先勝……と思われたロッシに対しても、このレース「ふたつ目の事件」が襲い掛かり、コースの『トラックリミット違反』とシグナルグリーン時の『ジャンプスタート』により、暫定リザルトに対し45秒加算のタイムペナルティが課され、18位にまで後退する。

 さらに、2位にいたカナピノと僚友のベルナルド・レイバー、ロッシの僚友を務める“スピードスター”ことジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)、それにダミアン・フィネンチ(ルノー・フルーエンスGT)ら4名にも『ジャンプスタート』ペナルティの対象となることが宣告され、最終的に5位でフィニッシュラインを通過したビビアンが今季2勝目を飾る結果に。

 続く2位にも漁夫の利を得た2冠王者ファクンド・アルドゥソ(ホンダ・シビックSTC2000)が入り、カナピノがなんとか3位に留まる形となった。

 明けた日曜午前8時55分からの“フルタンクテスト”では、マティアス・ミラ、ペーニャ、そしてフィネンチとルノースポール・カストロール・チームがワン・ツー・スリー・フォーメーションを完成させ、迎えた午前11時50分からの最終レース。40分+1ラップの勝負に向け、前日勝者ビビアンのトヨタと、アルドゥソのホンダがフロントロウに並んでレースが始まると、オープニングラップを終えた2周目突入のホームストレートで、シボレーのカナピノが早くもホンダを捉え2番手に浮上する。

 勢いそのままに“プッシュ・トゥ・パス”を有効活用したカナピノは、続くラップで首位ビビアンも捉えてトップへ。前戦でサッシャ・フェネストラズとペアを組んだサンテロのカローラも背後から追随し、終盤に向けては10番グリッドから力強いレースペースでジリジリとポジションを回復したペーニャのルノーが3番手にまで上がってくる。

 チェッカーを目前に幾度も首位に仕掛けた2番手サンテロだったが、わずか0.803秒差でシボレー攻略は叶わず。カナピノがシーズン3勝目、キャリア通算25勝目を挙げ、トヨタ、ルノーの3車種が表彰台を分け合う結果となった。

 一方、18番手から追い上げを見せたロッシだったが、トップ10圏内進出はならず。この結果ペーニャが155点でポイントリーダーの座に留まり、カナピノが154点と首位に肉薄。以下、サンテロが113点、ロッシとアルドゥソが109点で並ぶオーダーとなった。

 続くSTC2000第10戦は、10月9~10日の週末にサンタフェ州ロサリオに位置する伝説のドライバー名を冠したトラック、アウトドローモ・ファン-マニュエル・ファンジオでの開催が予定されている。

40分+1ラップの勝負に向け、前日勝者ビビアンのトヨタと、アルドゥソのホンダがフロントロウに並んでレースがスタート
2019年チャンピオンのリオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)は表彰台圏内まで進出する
カナピノとの攻防を繰り広げたジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)だが、勝利には1歩及ばず
ペーニャが155点でポイントリーダーの座に留まり、カナピノが154点と首位に肉薄。以下、サンテロが113点、ロッシとアルドゥソが109点で並ぶオーダーに

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