2022年WorldRX本格電動化初年度“RX1e”に14台が参戦「歴史上最速、電動化に最適の競技」

 WorldRX世界ラリークロス選手権で2022年からの導入が予定される電動最高峰“RX1e“クラス初年度に向け、シリーズオーガナイザーはすでに「14台のエントリー」があることを確約。0-100km/hわずか1.8秒というF1をも上回るパフォーマンスの新時代エレクトリック・ラリークロスに向け「この競技と電動モビリティの親和性に大いなる手応えを得ている」とした。

 WRC世界ラリー選手権のファクトリー契約ドライバーとして活躍し、近年はERCヨーロッパ・ラリー選手権の舞台に活動の場を移しているアンドレアス・ミケルセンの手により、この5月にも本格テストを実施しているRX1e車両だが、その現場に用意されたRX1e“ミュールカー”は、シュコダ・ファビアのラリー2エボをベースに前後のアクスルにモーターを搭載するツインモーター仕様とされ、2個のインバーターと革新的な冷却システムを備えた52.65kWhのバッテリーを採用することで、現行のRXスーパーカーより強大なトルクを発生する。

 この電動マシンはオーストリアのパイオニア企業であるクライゼル・エレクトリック社が、ラリークロス・プロモーターGmbHおよび統治機関であるFIA国際自動車連盟と緊密に協力して開発および製造したもので、ツインモーターの総合出力は500kW(約689PS)に到達。瞬間的に880Nmものトルクが供給される。

 容量52.65kWhのバッテリーはシステム重量300Kgとなり、独自の安全機能を備え、重量配分を考慮した特別設計とされる。車両全体の総重量は1330kgに規定され、フロントアクスルとリヤアクスルで独立したモーターはカーボンラップし、プリロードオプション付きの高性能トランスミッションとLSDを装備する。

 これら競技車両への再充電は、再生可能なグリーンエネルギーによって賄われ、コンテナとモバイル充電ポイントで構成される特注のソリューションを供給するGCKエネルジー社によって管理される。

 キット化されたユニット全体は既存のRXスーパーカーの内燃機関をコンバートして搭載することも可能なら、まったく新しいシャシーに組み込むことも許可されており、14のキットはすでに新規および既存のチームによってオーダー予約がなされており、その内訳や詳細はやがて明らかにされるという。

アンドレアス・ミケルセンの手により、この5月にも本格テストを実施しているRX1e車両
この電動マシンはオーストリアのパイオニア企業であるKreisel Electric(クライゼル・エレクトリック)社が、Rallycross Promoter GmbHおよび統治機関であるFIA(国際自動車連盟)と緊密に協力して開発および製造したもの

■「電気モビリティがますます重要性を増している」とジャン・トッドFIA会長

 これらのモデルには参戦ブランドごとに異なるボディワークのデザインが採用されるものの、全車が同一の電気駆動パワートレインを使用する。ラリークロス史上最速のマシンと、世界最高峰のドライビング技術を持つドライバーたちの組み合わせは、ファンにとって「魅力的なショーを提供する最高の素材になるはず」だとラリークロス・プロモーターGmbH、エグゼクティブプロデューサーのアーネ・ディルクスは自信を見せている。

「プロモーターとして、我々はこの素晴らしいスポーツを育み、成長させ、これからも多くの世代が繁栄し続けることを保証する責任がある」と続けたディルクス氏。

「チームとドライバーはエキサイティングな電動化時代への移行に積極的に取り組んできたし、我々は現在も経済から環境、社会に至るまで、持続可能性の重要な柱を完全に受け入れるというビジョンとコミットメントを共有する、多くのメーカーと積極的に話し合っているんだ」

 新たなEV時代のレースフォーマットは、FIA、チーム、オーガナイザーやプロモーターを交えて真剣な議論が交わされている最中だというが、追い越しの機会を増やし、さらに緊密なレースを実現することを目的としている。実際、イベントのコンセプト全体が再評価されており、イベント内外、オンでもオフでも観客と関わり、楽しませ、ラリークロスの豊かな歴史とDNAを維持しながら、新たな機会と全方位での多様化を模索する。

「短期決戦の鋭くソリッドな競技展開は、電動化推進と完全にマッチするんだ。ドライバーはこれまで以上にパワーを自由に使えるようになり、いつでも最大限に活用することができる。幸運にも私自身、RX1のテスト車に乗ることができたが、これは絶対的なロケットだと確信を持って言えるね!」と、前出のディルクス氏。

 一方、FIAの会長を務めるジャン・トッドも、この新世代EVラリークロス車両の登場により「WorldRXこそ、FIA世界選手権のステータスを持つ過酷な環境で、電動ロードカーのパフォーマンス能力を披露するのに最適なステージになる」と、その意義を語っている。

「FIA WorldRX世界ラリークロス選手権の電動化に対する我々のビジョンが、初のエレクトリック・シーズンを前にフィールド上に14台ものエントリーを集めたのを確認し、晴れて具現化するのが見られて喜ばしい気分だ。電気モビリティがますます重要性を増していることは、想定された事態なわけだからね」

ツインモーターの総合出力は500kW(約689PS)に到達。瞬間的に880Nmものトルクが供給され、0-100km/hわずか1.8秒というF1をも上回るパフォーマンスを誇る
車両全体の総重量は1330kgに規定され、容量52.65kWhのバッテリーはシステム重量300Kgとなり、独自の安全機能を備え、重量配分を考慮した特別設計とされる

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