定年後は親と同居も考えるアラ還夫婦「3000万円の家を買っても老後資金は足りる?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、59歳・公務員、妻と二人暮らしの男性。資産は貯蓄額約3,600万円、投資信託約1,500万、退職金は1,200万程度の見込み。実母との同居も考えて、3,000万程度の中古物件購入を希望していますが、老後資金は足りるでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。

59歳地方公務員です。妻は57歳民間正規社員、子どもはありません。

自分の体調が悪く、定年1年前の退職を考えています。現在の年収は約650万円。資産としては、貯蓄額約3,600万円、投資信託約1,500万、退職金は1,200万程度の見込みです。59歳で退職後は65歳まで、手取り年収200万円程度の仕事に就こうと思っています。

現在は賃貸アパートですが、可能であれば戸建て3,000万程度の中古物件購入を検討したいと考えています。実母(82歳)は実家で1人暮らしをしていますが、今後、状況に応じ同居することも検討することになります。現在、母親の健康状態は普通です。

自分の老後資金が足りるかどうか不安があります。よろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・男性、59歳、公務員、既婚

・同居家族について:妻(57歳)、会社員。介護等なし、子どもなし

・住居の形態:賃貸(富山県)

・毎月の世帯の手取り金額:42万円(妻月収12万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出の目安:36万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万円

・食費:8万円

・水道光熱費:1万6,000円

・保険料:2万円

・通信費:1万6,000円

・車両費:1万円

・お小遣い:7万円

・その他:7万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):3,600万円

・現在の投資総額:1,568万円

・現在の負債総額:70万円

・老後資金:公的年金230万円、退職金の有無、退職金1,200万円


飯田:今回は、体調不良のために定年退職まで1年を残して退職を考えている相談者様です。とはいえ、退職してから65歳までは働く予定とのこと。現在は、賃貸アパートで奥さまと2人暮らしですが、戸建ての購入を考え、実家で暮らすお母様との同居も視野に入っているようです。相談者様の最大の悩みは、老後資金が足りるのかということ。相談者様の場合、老後資金は足りるのでしょうか? また、注意すべきポイントにはどのようなことがあるのか? 考えてみましょう。

ストックとフローから、考えてみましょう

老後資金が足りるかを考える前に、まずは、現状、お金がどのようになっているのか、流れはどうなのかを確認してみましょう。

現在の年収は約650万円で、資産は貯蓄額約3,600万円、投資信託約1,500万円。退職金は、1,200万円程度の見込みとのこと。

退職時に手元にあると予想されるお金は6,300万円となりますが、負債が70万円ありますので、最終的には、6,230万円が手元にあると思われます。

ただ、現状の生活の毎月の出費は36万円です。退職後の収入としては、手取り年収200万円程度とのことですので、月収に換算して16万5,000円強。奥さまの月収は12万円ですので、あわせて28万5,000円。単純に7万5,000円不足することになります。

現状の出費で気になったのは、食費8万円、お小遣い7万円、その他7万円です。夫婦2人の出費としては、多めです。これらを見直して7万5,000円を捻出できれば、現状を維持することができますし、少しでも節約ができれば、不足分を減らすことができますよね。

マイホーム購入をした後の生活はどうなる?

相談者様は、マイホームを3,000万円で購入することを希望されています。退職のタイミングでマイホームを購入すれば、住居費8万円が浮くことになりますので、今まで通りの生活でも問題ないことになります(とはいえ、支出の見直しは必須です)。

その場合は、マイホームの購入費用と諸費用を踏まえ、手元に残るお金は3,000万円程度になると考えられます。

マイホーム購入後、相談者様が65歳までのお金の流れとしては、預貯金等3,000万円、夫婦の月収は28万5,000円、毎月の支出は、貯金を含めず28万2,000円となります。計算上では、かろうじてプラスとなります。

住居費に代わって、固定資産税や都市計画税が必要になりますので、日常生活の支出をおさえる努力をしてほしいと思います。

ただ、シミュレーション通りに手元に3,000万円を確保できれば、65歳以降の生活において、安心材料になることは間違いありません。

老後資金は足りるのか?

相談者様の年金見込み額は230万円。奥様の年金見込み額を基本の78万円としたときのリタイア後の合計年収は、308万円。月額に換算して、約25万6,000円です。実際は、もう少し多いとは思いますが、今までと同じ生活を続けていると、3,000万円から切り崩さなくてはなりません。もちろん、セカンドライフで3,000万円を下回ってはいけないという決まりはありませんので、いくら手元に残しておきたいのかを夫婦で話し合ってほしいと思います。

お金の流れを踏まえた場合、老後の生活に困ることはないと思いますし、現在、独立して暮らしているお母様ですので、同居をしても問題ないでしょう。老後資金は足ります!

これからの大きな出費となるのがマイホームです。築年数はもとより、地域や立地条件によって、価格は大きく違ってきます。信頼できる不動産会社に依頼して、物件を探していきましょう。

中古物件選びのポイント

中古の戸建てを希望とのことですので、どのような形で物件を購入するのかを慎重に考えてください。中古物件のなかには、現状引き渡しという物件があります。それは文字通り、そのままの状態で購入することを意味します。場合によっては、いらない家具がついていることもあります。

現状引き渡しの場合、物件価格は低くなりますが、自分の手でリフォームを手配すると、予算オーバーになってしまう可能性があります。できるだけ状態がよく、手を加えなくてもすむような物件を探してください。あらかじめどのような場所にあって、どのような設備が整っている物件がいいのかを、考えておくと良いですね。

不動産は、ひとつの出会いです。予想以上によい物件に巡り逢える可能性もありますので、前向きに探していくと良いでしょう。

相談者様は体調不良で退職されるとのこと。有意義な老後を送るためにも、身体の状態が何よりも大切です。くれぐれも無理することなく、体調と相談しながら、計画を立てていってくださいね。

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