楽天・浅村栄斗は実質“200安打”超え もっと評価されていい「四球王」

四球数リーグトップの浅村(東スポWeb)

【広瀬真徳 球界こぼれ話】プロ野球シーズンも佳境に入りタイトル争いが激しくなりつつある。

投手であれば勝利数を筆頭に防御率と奪三振。打者であれば打率、本塁打、打点がタイトル争いの象徴だろう。だが、例年この時期になると上記以外に「もっと評価されてもいいのでは」と感じる項目がある。それが打者の「四球数」だ。

周知のとおり四球は打席でボール4つを選べば自動的に一塁に出塁できる貴重な攻撃ツール。打者からすればヒットを打つのと同じで、四球で出塁するためにはファウルで粘る技術や鋭い選球眼も要求される。プロの世界では打席で棒立ちするだけで容易に奪えるものでもない。

「敬遠」による四球も端的に言えば投手が勝負を避ける逃避行為。四球数に含まれる打者の敬遠数はむしろ強打者の勲章とも言える。にもかかわらず四球数は「首位打者」や「本塁打王」と肩を並べるどころかタイトルすらないのだから惜しい気がしてならない。

例えば今季のパ・リーグで言えば楽天の浅村栄斗内野手(30)。ここまでの打撃成績は3日現在打率2割7分、14本塁打、57打点で打撃主要3部門ではタイトル争いに絡んでいない。だが、四球数はリーグトップの90個で2位の楽天・島内と日本ハム・西川(81個)を大きく引き離している。楽天ではリーグ打点王争いを続ける島内の打撃に目が行きがちだが、浅村も四球によるチーム貢献度では決して負けてはいない。

一部野球ファンやメディアからは「今季の浅村は数字を見る限り本来の打撃とは程遠い」という声が時折聞かれるが、それは打撃3部門だけを見ているからにほかならない。事実、四球を安打として換算すれば浅村はすでに今季“200安打”を軽く超えている。これこそがチームへの見えない貢献。そう思うとやはり浅村は打撃成績以上にクローズアップされるべき存在だろう。

そんな思いもあり先日、あるパの球団スタッフに四球に関する査定について聞いてみた。返答は「各チームの主力選手や外国人選手の中にはシーズンを通しての四球数をインセンティブ(出来高)に加えている。浅村選手の契約内容は定かではありませんが…」とのことだった。同時に「査定担当を含めた球団内の玄人は四球数を高く評価しています。でも、ホームラン等に比べ地味な印象があるので一般受けはしないのでしょう。ただ、『四球』は見た目以上に相手にダメージを与えますから。『四球王』というタイトルはあってもいいでしょうね」

打席で打たずして頻繁に出塁できる選手は球界内でも限られる。その意味でも「四球王」は打撃3部門に並ぶタイトルとして再評価されるべきではないだろうか。

☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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