【MLB】マリナーズ20年ぶりPOならず 最終戦まで大奮闘、指揮官「未来はとても明るい」

最終戦に敗れたマリナーズナイン【写真:AP】

可能性残して迎えた最終戦、大谷翔平の一撃食らい敗戦

マリナーズの2021年が終わった。3日(日本時間4日)、本拠地・シアトルでのエンゼルス戦に臨んだマリナーズだったが、試合終了間際にワイルドカードの最後の1枠がレッドソックスの勝利で決まり、2001年以来20年ぶりのポストシーズンに駒を進めることはできなかった。試合は3対7で敗れた。

初回、今季46号となる大谷の先頭打者本塁打で勢いづいたエンゼルス打線はつながりを見せ、5回までに7点を奪い主導権を握った。マリナーズ打線は要所で畳みかけることができず、得点は2回と6回の計3点。前日の試合では、2点リードの8回表にセットアッパーのシーウォルドが痛恨の逆転3ランを浴びるも、その裏の攻撃で2死満塁から3番のハニガーが2点適時打を放ちワイルドカード争いに踏みとどまったが、この一戦では4点差を跳ね返すことはできず、終戦を迎えた。

試合後、サービス監督は今季を総括した。

「チームにも選手たちにとってもものすごいシーズンになった。マリナーズ球団組織にとって飛躍の一歩になった。我々の未来はとても明るい。プレーオフへのゴールラインへは踏み込めず悔しい限りだが、自身で振り返るとすぐに浮かんでくるのは、シーズンで勝つべき試合もたくさんあったということ。今日の1試合を落としたのは確かに痛いことだが、バランスが大事だ」

シーズン最終の162試合目でついえた悲願のプレーオフ進出。大躍進の道のりは険しかった。

5月には2週間の間に、2度のノーヒットノーランを喫するなど、貧打にあえぐ打線は先行きを不安にさせた。中継ぎが責任を果たせず、敗れる試合も多かった。7月終わりには、ディポトGMが守護神のケンドール・グレーブマンとラファエル・モンテロを同地区のアストロズに交換トレードで放出。荒療治の補強は奏功し、見返りに獲得した中継ぎのジョー・スミスと内野手のエイブラハム・トロが新天地で安定した働きを見せ始めると、中軸のミッチ・ハニガー、カイル・シーガーも調子を上げ、JP・クロフォード、タイ・フランス、ジャレッド・ケルニックら若手選手とつながりのある打線を構築。夏場からは投打がしっかりと噛み合う展開を繰り広げた。

シーズン前のメディア予想を覆す大躍進、理由はどこに?

4日前だった。試合前の会見でサービス監督にこんな問いがぶつけられた。

――シーズン前の展望でマリナーズは、スポーツイラストレイテッドで69勝、ESPNでは70勝のそれぞれ地区4位と予想されていたが、それが間違いだったことを示したシーズンになった。今、どういう思いか。

笑みを浮かべていた指揮官の表情が変った。

「少し前のことだが、クラブハウスで13人の野手を集めて私は言った。『ナンセンスなことに目を通すことも耳を傾けることもやめよう。この機に及んで信じるべきは、クラブハウスの中にいる人間だけだ』とね。コーチたちもここまで機を見はからって言ってきたことだが、それをしっかりと受けとめるのは選手たちだ。お互いを信頼して、浮き沈みのある容易ではない道を進んできた彼ら自身が、ここまでの状況に押し上げたということだね」

2003年以来18年ぶりとなるシーズン90勝(72敗)を積み重ね地区2位に浮上したマリナーズは、ポストシーズンを20年連続で逃し、米4大スポーツワースト記録更新のシーズンとなったが、夏場から見せる簡単に負けない展開を維持し続けた戦いぶりには、確かなチームの成長が見えた。

選手個々の意識改革と大物選手獲得に頼らない若手選手の育成に重点を置く組織の方針が実り出したマリナーズの2022年に期待は高まる。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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