暗号資産を取引する際に必要な「ウォレット」って何?どんな種類があるの?基本を解説

9月7日、エルサルバドルでついにビットコインが法定通貨となりました。ニュースの映像では国民が係員の案内に従って専用ウォレット「チボ(Chivo)」の操作をしたり、国内に設置されたビットコインATMを操作したりする様子が報じられました。

その一方で、ビットコインの法定通貨化に反対するデモの動きもみられ、当日にはシステムトラブルも発生しました。エルサルバドルの歴史的な取り組みは波乱の幕開けとなりましたが、月末には同国大統領がウォレットのアクティブユーザー数が210万に達したことを発表しました。これは国民全体の約3割に相当します。

日本で流行している決済アプリ「ペイペイ(PayPay)」の登録ユーザー数が約4000万で日本の人口の同等割合ですから、エルサルバドルにおけるウォレットの広がり具合がいかに大きいかがわかります。

エルサルバドルはウォレットの利用者に対して30ドル相当のビットコインを配ることによって普及を後押ししています。みなさんはもし3,000円相当のビットコインをタダでもらえるなら暗号資産のウォレットを使ってみたいですか?

おそらく多くの方は「そもそもウォレットって何なの?」という疑問をもっているかと思います。今回は暗号資産のウォレットについて解説します。


暗号資産の取引に必要なウォレットとは?

「ウォレット」とはその訳の通りお財布です。みなさんが日常的に使うお財布では(1)お金の残高を管理すること(残高管理)(2)モノやサービスの購入にお金を使うこと(出金)(3)残高が足りなくなったらお金を追加すること(入金)の3つの機能があります。暗号資産のウォレットもお財布としての基本的な機能を備えていて、たとえばビットコインの残高管理や入出金を行うことができます。

一般的なお財布との違いは、取り扱うものが現金ではなくデジタルマネーであることです。基本的に電子マネーや決済アプリなどのお金はデータとして存在しているためデータベースによって管理されています。私たちはこのようなお金をパソコンやスマートフォン、ICカードなどの端末を通じてデータベースを書き換えることで取引しています。

暗号資産も同様に、ブロックチェーンというインターネット上のデータベースを書き換えることで取引しています。つまりウォレットはブロックチェーンとの橋渡しとして機能します。

ウォレットをさらに理解するためには、暗号資産が公開鍵暗号方式による電子署名によって管理されていることを知る必要があります。公開鍵暗号方式とは第三者にも公開する「公開鍵≒アドレス(銀行の口座番号のようなもの)」と、自分だけが知る「秘密鍵(銀行の暗証番号のようなもの)」を用いた暗号方式になります。

自身のアドレスから暗号資産を送る際には秘密鍵による署名が必要になります。つまりウォレットはこの秘密鍵を保管し、暗号資産を移動する際には秘密鍵を使ってブロックチェーンに署名するものになります。

以上をまとめると、ウォレットはまず暗号資産の残高を管理することができます。また、ウォレット内の秘密鍵でブロックチェーンに署名し、そのアドレスにある暗号資産を移動することができます。別のところからウォレットのアドレスに入金することもできます。

ただし、自身の秘密鍵が外部に漏れてしまうと第三者によって資産を移動されてしまうので、ウォレットを使用する際には秘密鍵を厳重に保管するようにしましょう。

暗号資産ウォレットにはどんな種類があるの?

暗号資産のウォレットは、利用環境や秘密鍵の管理方法などの違いによっていくつかの種類があります。

●ウェブウォレット

ウェブウォレットとはウェブブラウザ上で利用可能なウォレットです。他のインターネットサービスと同様にウェブブラウザからIDとパスワードを使ってアクセスすることができます。最も気軽に利用できますが、秘密鍵の管理をサービス業者に委ねるため、委託先のリスクを負います。取引所が提供するウォレットも広義ではウェブウォレットに含まれます。

●ソフトウェアウォレット

ソフトウェアウォレットとはモバイルやデスクトップのアプリとして利用可能なウォレットです。ウェブウォレットと違い、サービスサイトからアプリを自身の端末にダウンロードし、その端末で秘密鍵を管理します。資産を自分で管理することができますが、基本的に端末はオンライン接続されているため、インターネット上のリスクはあります。

●ハードウェアウォレット

ハードウェアウォレットは暗号資産の秘密鍵を管理するデバイス型のウォレットです。基本的にデバイスはオフラインで管理し、ウォレットの操作をするときだけオンライン状態のパソコンにUSB形式のデバイスを接続します。取引の都度ウォレットを操作する手間や物理的な紛失リスクはありますが、ウェブウォレットやソフトウェアウォレットに比べて安全性は高くなっています。

●ペーパーウォレット

ぺーパーウォレットは紙やカード、金属板などで秘密鍵を管理するウォレットです。暗号資産の秘密鍵は不規則な文字列で表記されますが、実際の管理においてはこの文字列を見慣れた英単語の並びによって管理する仕組みがあります。この並びをバックアップフレーズやニーモニックなどと言います。取引の利便性は低いですがオフライン状態のまま秘密鍵を安全に管理することができます。

多くの方はまずは取引所を利用すると思うので、秘密鍵を自分で管理する必要はありません。しかし、取引所リスクを考えると中長期的に保有する分については個別のウォレットで管理するという選択肢も考えられます。

ウォレットはなんだか使うのが難しそうに見えますが、機能についてはお財布と変わらず、慣れてしまえば自分で資産を管理することができる便利な道具です。取引所の利用に慣れた方は資産保全策の一つとしてウォレットの利用を検討してみると良いでしょう。

<文:暗号資産アナリスト 松嶋真倫>

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