【復刻インタビュー】吉村秀樹(bloodthirsty butchers)×川口潤(『kocorono』監督)×中込智子(音楽ライター)(2011年2月号)- それでもなおバンドを続ける覚悟と強靱な意志を描いたブッチャーズのドキュメンタリー映画をめぐって

第三者とも違う視点でバンドを撮ってくれたら

──まず川口さんにお伺いしますが、ブッチャーズのドキュメンタリー映画を撮る構想は何年も前からあったんですか。

川口:実はそういうわけでもなくて、映画のプロデューサーであるキングレコードの長谷川(英行)さんからの発案なんです。2009年のクリスマスの頃に長谷川さんから突然電話が掛かってきて、「ブッチャーズのドキュメンタリー映画を作りたいので、監督をしてくれませんか?」と言われたんですが、「ムチャだ!」と思って(笑)。

──それは、対象が川口さんにとっても大きな存在であるブッチャーズだったから?

川口:いろんな意味でですね。それに、メンバーである本人たちに訊いてみないと分からなかったし、バンドにオファーして前向きだったら考えましょうかと長谷川さんには答えたんですよ。

吉村:まぁ、題材が題材だからね(笑)。そのオファーを受けて、俺は全然OKだよって答えたんだけど。

川口:そういう返事を割とすぐに頂いたので、じゃあやりましょうと。それで2010年の初頭から9月のツアー終わり頃までのバンドの活動を撮らせてもらって、その撮り溜めた映像を編集して、2010年の末に完成させたんです。ライブやリハはもとより、何かトピックとなる出来事がある時は教えて下さいとマネージャーのナベちゃん(渡邊恭子)に伝えて、時間のある限りカメラを担いで出かけたんですよ。

──川口さんのなかで、映画の方向性みたいなものはあらかじめあったんですか。

川口:映画をやるにあたって2010年の1月にメンバーと初顔合わせをして、そこでそんな話をしようと思っていたんです。でも、その時点では「こういう映画を作りたい」という具体的な案が僕にはなくて、メンバーのなかにも明確なビジョンはなかったんですよ。

吉村:「向けられたカメラに対して過剰なサービスはしないよ」っていうのはあったけどね。

川口:直接そう言われたわけじゃないんですけど、最初からサービス精神がなかっただけなんですよ(笑)。

吉村:カメラを向けられたからと言って、俺はふざけたことしか喋らないし、真剣なことは喋れないからね。

川口:レイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)からの指名でブッチャーズが前座を務めて、観客からブーイングを受けるシーンがあるじゃないですか。

──吉村さんが「ブーイングが中途半端なんだよなぁ…」と話した後に、舗道を歩きながらジーンズを下ろしてパンツを見せようとするシーンですね(笑)。

川口:あまり見えてないんですけどね(笑)。あの頃(2000年当時)は、僕がカメラを向けると吉村さんはよくふざけたりしていたんですよ。それに比べると今のほうが喋りはフラットになりましたよね。射守矢さんと小松さんは昔とあまり変わってないですけど。

吉村:レイジのシーンで喋ってるのはダイノジの大地(洋輔)なんだよ。

川口:チラッと映ってますよね。あの時はカメラを回す僕と大地君とネモをやってたナカノ君が一緒だったんです。

──サービス精神はない代わりに、バンドの内情をそこまで見せるか!? というほど赤裸々なシーンの連続ですよね。

吉村:でも、普段はメンバーに対してあそこまでキツイことは言ってないよ?(笑) ただ、去年はアルバム(『NO ALBUM 無題』)を作った前後の悶々とした感じがあったし、それがそのままフィルムに収められているんだよね。俺が映画の話をOKした時は、「何でこのタイミングでオファーが来るんだろう?」と思ったの。アルバムを作って出来たのはいいんだけど、この先どうしよう!? っていう時で。アルバムを作るにあたってのメンバーに対するモヤモヤが凄いあって、アルバムが出来て以降のバンドの動きを俺なりに考えてたんだけど、答えが全然出なくて頭に来てたんだよ。そんな時に映画の話が来て、「このしょうもない状態を撮ってどうすんだ!?」って最初は正直思ったわけ。でも、第三者とも違う視点でバンドを撮ってくれたらまた違った方向性が見えてくるかもしれないし、そこでひとつ答えが出るんじゃないかなと思ったんだよね。川口君はこれまでもずっとブッチャーズを撮ってきたからバンドのことは理解してるし、その上でとりあえず手探りで行きましょうか? って感じで撮影が始まったんだよ。

観終わった後の余韻がとにかく凄い

──ブッチャーズの2010年の活動を追いながらも、貴重なアーカイブ映像を織り交ぜて結成以来23年間の歩みもちゃんと押さえているのが見事だなと思って。

川口:ブッチャーズのことを全く知らない人たちにも観て欲しかったので、そういう要素も入れることにしたんですよ。

吉村:だいたいさ、なんで留萌とかに着目するんだよ!? って最初に思ったんだよね(笑)。でも、そこでバンドを最初に戻すって言うか、根っこにある部分から始めるっていうのが俺はいいなと思ったの。俺から始めるんじゃなくて、切り口として射守矢が留萌に帰るところから始まるっていう。

川口:ああ、そんなこと言ってましたね、吉村さん。あのシーンを撮ったのは、「毎年3月に留萌へ帰るから、付いてくれば?」って射守矢さんに誘われたからなんですよ。

吉村:まぁ、勝手にやってくれみたいな感じがあってさ。俺は留萌の映像になんて絶対映らねぇよ! って思ってたし(笑)。でも、射守矢が映るぶんにはいいかなと思った。

──留萌のシーンの前に、映画はいきなり「もっと自分の思いの丈を言えばいいじゃん!」という吉村さんの怒号から幕を開けるという凄まじい演出ですけど(笑)。

川口:それがその時点でのブッチャーズの姿だったし、紛れもない事実でしたからね。特にリアリティを追求しようと考えていたわけではないんですけど、僕なりのドキュメンタリーを撮ってみたかったんです。対象をじっくりと観察することがやりたかったと言うか。映画の最初の打ち合わせで集まった時に、話がだんだんズレて全然違う話になったんですよ。導入部に入っている言い合いは、まさにその打ち合わせの席でのものなんです。映画のことなんてもうどうでも良くて、吉村さんと小松さんがバンドの在り方について激しく言い合うっていう(笑)。そのやり取りを見て、今はこういう状況なんだなと思って。これは今撮ってるほうが面白いかもなと感じたんです。

吉村:「なんでこのバンドは未だにこんなやり取りをしてるんだろう!?」って?(笑)

川口:いや、吉村さんが孤立しながら『NO ALBUM 無題』を作り上げたことを僕は詳しく知らなかったし、知らなかったから余計に「相当鬱屈したものがあるんだな…」と思って(笑)。ナベちゃんが映画の話を敢えてOKした理由が何となく分かった気がしたんです。今思えば、映画を撮ることで風通しを変えるという狙いもナベちゃんとしてはあったのかなと。

──いち観客として、中込さんはこの映画をどうご覧になりましたか。

中込:何だろう、感動とも違うんですよね。でも鳥肌が立ったり奮える部分は間違いなくあるし、的確な言葉が未だに見つからないんです。ショッキングとも違うんですよ。何と言うか、観終わった後の余韻がとにかく凄いんですよね。考えさせられたりもするし、ひらめいたりもするし、頭のなかでグルグル回る部分もあれば、スパンと弾ける部分もあるし、そういう余韻が凄くあって。

川口:有り難いですよね。そういうふうに観てもらえるのが一番嬉しいです。

吉村:特にねぇちゃんはそうだろうね。歴史も知ってるし、アーカイブもあるし、今も繋がりがあるしさ。全く知らない目では見てないからね。

中込:うん、そうだろうね。

吉村:そういう目線で見ればグルグルしちゃうよね。

──フライヤーのコメントには「今思えば我ながら、分かっていたようで分かっていなかった」と書かれていましたが。

中込:知らなかった部分のほうが多いなと改めて思いましたね。知ってたつもりでも「いや、違った」っていう部分がありましたから。

川口:それは僕も同じでした。吉村さんの性格は分かっていたつもりでも、実際に撮って観てみないと分からないことが多かったです。

何にもない状況だけど“今”を撮ってくれ

──ブッチャーズの歩みとバンドの特性を、中込さんを始めとする縁の深い方々の証言によって補完している手法も功を奏していますね。

川口:札幌在住のReguReguの小磯(卓也)さんはドキュメンタリーの流れで不可欠だなと思って、“ライジングサン”へ行った時に会えて話ができたんです。それとは別に、映画的にインタビューを撮らなくちゃいけないと考えた時に、フラットに話せる人がいいなと思って。それで最初に中込さんに電話して、「すいません、助けて欲しいんですけど…」ってお願いしたんですよ(笑)。ブッチャーズの歴史を捉えるには中込さんの力が必要だったんです。

中込:私は大したことはやってませんよ。時系列的なことや交友関係とかを説明したくらいなので。

──でも、結成直後からブッチャーズのメディア露出を積極的に図った中込さんの功績はとてつもなく大きいですし、ブッチャーズを語る上で絶対に欠かすことのできないキーマンの1人ですよね。

川口:そうなんですよ。僕自身、中込さんの文章でブッチャーズに入っていきましたから。

中込:今にして思えば、逆に私のほうが有り難かったんですよね。『STRAIGHT AHEAD II』とかのアルバムを作ったりライブを企画したりもしましたけど、それは本来ライターがやらなくてもいいことじゃないですか。ブッチャーズに出会わなければそんな企画もやらなかったと思うし、ブッチャーズを何とか世に知らしめたいと思って動いたことが結果的に今の自分の財産になっているんですよ。だから、私としては「やってやったぞ」という気持ちは微塵もなくて、むしろいろんな企画をやらせてもらえたことにただただ感謝しているんです。

──映画を観て、「よくぞここまで成長して…」みたいな親心に近い感慨が中込さんのなかにはあったんじゃないかと思うのですが。

中込:それはあまりなかったですね。“ねぇちゃん”って呼んではくれてるけど、基本的に友達みたいな感覚ですし。それに、私はやっぱりようちゃんのことを尊敬してるんですよ。自分が追い求めても出せないものとか理由のつかない何かを音で表現してくれるわけじゃないですか。だから友達でもあり、尊敬する存在でもあるんです。歳はあまり関係ないんですよ。

吉村:そうは言っても、俺も明日(1月20日)で44になるしね。“死んでしまえ”のナンバーになっちゃうよ(笑)。

中込:いいじゃない、厄は明けたんだし(笑)。

──『NO ALBUM 無題』制作中の尋常ならざる悶絶ぶりは、多分に厄年も関係していたんでしょうか?(笑)

吉村:精神的には「抜け出してやる!」って思ってたよ。あまりにも地団駄を踏んでたからね。「上手く行かねぇなぁ…」の連続で、その状況から何とか抜け出したいと思いながら作ってたのは確かなんだよ。

──8カ月間付きっきりなわけですから、撮り溜めた映像は膨大な量だったんでしょうね。

川口:もう考えられないくらいの量でしたね。ライブはほとんど撮っていたし、行けなかったのは確か2回くらいだったと思います。

──そこから116分の作品として仕上げるのは至難の業ですよね。

川口:想像を絶する作業でしたよ。残したいシーンはたくさんありましたからね。

吉村:歴史的なものを追うのか、証言を追うのかで照準も変わってくるしね。俺は川口君に「今を撮ってくれ」って最初に言ったんだよ。「何にもない状況だけど今を撮ってくれ」って(笑)。

──でも、バンドの歴史と関係者による証言はとても理想的なバランスで構成されていると思いましたけど。

川口:中込さんに時系列的なことをお願いした時点で、「この辺の出来事は必要だろう」っていうチョイスはある程度固まっていたんですよね。あと、結果的にはほとんど使わなかったんですけど、僕がブッチャーズと知り合ってから撮っていた素材も一応全部チェックしておいたんです。でも、吉村さんが言うようにブッチャーズの今の姿に重きを置いたんですよ。ただ、ある程度歴史的な素材がないと「だから今の姿はこうなんだ」という説明がつかないので、アーカイブ映像は必要最小限で入れたんです。

吉村:ドーンと人気のあるバンドでも何でもないし、雑多なバンドだしね(笑)。

川口:でもたとえば、ザック(・デ・ラ・ロッチャ)とメンバーが楽屋で話し込んでいたのも事実なわけだし、本人のOKも取れたので、そういう素材は入れておきたかったんですよ。

吉村:誇大なイメージが出るのは俺もイヤだったし、川口君はそういう部分もよく分かった上で昔の映像を取り入れてるんだよね。

表現する人なら分かってもらえる部分がある

──僕が感動したのは、ブッチャーズの映画でありながらも観客である僕らの映画でもあるというところなんです。ブッチャーズという一介のバンドを通じて「なぜそこまでして表現に立ち向かうのか?」という表現者の抱える普遍的な命題を描いているし、表現者でなくても「お前はどうなんだ? そこまで打ち込める何かがあるのか?」と発破を掛けられているような気持ちになってくる。今を生きる人間なら誰しもが必ず打ち震える部分がある映画だと思うんですよ。

川口:そうなっていれば嬉しいですね。バンドじゃなくても音楽に関わっている人や表現する人なら分かってくれる部分がきっとあると思うんです。反面教師的な部分でもいいんですけどね。ただ、作っている間はこの映画をどうまとめ上げればいいのか全然分からなかったんですよ。出来上がってもよく分からなかったですから。試写を観た人の感想を聞いて、そういうふうに伝わっているなら良かったなと思ったくらいで。

中込:凄いなと思いましたよ。2時間近い映画なのに中弛みが全くないし、良い緊張感を保ったまま観られますから。普通の映画を観てても辛いじゃないですか、2時間って。

川口:もうあれ以上は削れなかったんですよね。削ろうと思ったら、フルで使っているライブの何曲かを途中で終わらせるしかなかったんです。でも、これは自分の映画だし、長いと思われてもいいやと思って。曲はちゃんと聴かせたかったし、まずファンを納得させなくちゃダメだなと思っていたので、フルレングスで使えるところは使いたかったんですよ。

──まぁ、ファンは結成間もない初期のライブ映像を観られるだけでも大納得でしょう。当時の映像を観ると、吉村さんは基本的に何も変わっていないんだなと思いましたけど(笑)。

川口:それは僕も思いました。昔から上から目線だったんだなと(笑)。小磯さんからお借りした初期の映像を観て「この人は昔からこうだったんだな」と思ったし、観る人にもそれを知って欲しかったんですよ。

──吉村さんから「このシーンはちょっと勘弁して欲しい」みたいなリクエストはなかったんですか。

吉村:俺は裸のシーンが多いから、それは何とかして欲しかったけどね(笑)。

中込:そこかい!(笑)

川口:実際に脱いでるんだから仕方ないじゃないですか(笑)。でも、僕は吉村さんにどつかれる可能性もあるなと思いながらこの映画を完成させたんですけどね。

吉村:この部屋(シアターNの会議室)でメンバー揃ってプレビューを観たんだけど、みんな意外に真剣だったんだよ。

川口:凄い真剣に観てましたよね。4人が観ている姿を了解を得てカメラに収めたんですけど、みんな全然喋らない状態で。

吉村:せいぜい「ここかよ! ここ映すのかよ!?」くらいで(笑)。

川口:観ているうちに、吉村さんだけがなぜかだんだん後ろのほうに下がっていくんですよ。それで、射守矢さんの実家で高校時代の卒業アルバムを見るシーンで大爆笑するっていう(笑)。

中込:あれはおかしかったですね(笑)。

川口:ちゃこちゃんの笑いが止まらなかったですから(笑)。

吉村:「頼むからアルバムを開かないでくれ!」って思ったからね(笑)。射守矢を1人で帰らせたのは間違いだったよ。俺がいたらあのシーンは絶対にカットしてたのに(笑)。

川口:「これ、吉村さんからOK出ますかね?」って射守矢さんに訊いたら、「多分ダメでしょう」って言われたんですよ。でも結局、使っちゃいました(笑)。「ダメ」って言われてから考えればいいやと思って。結果的には吉村さんからダメ出しは全然なくて、「裸のシーンが多いのはどうにかしてくれないか?」って言われたくらいなんですよ。さすがにそれはどうにもできなかったし、そのまま活かしましたけど(笑)。

吉村:まぁ、言われてみれば普段から裸になってるなぁ…と思ってさ。

川口:楽屋裏では大抵脱いでるから仕方ないんですよ(笑)。

吉村:よく裸でいるのと『kocorono』っていうタイトルは共通するのかな? って思ってね。

川口:僕は共通すると思ってますけど。

吉村:そういう心配もちょっとあったりなんかして、デコボコなのはいいんだけど、ちょっと裸のシーンが多いんじゃないか? っていうのが気になったんだよ。人が脱いでるのはいいんだけど、自分のは恥ずかしすぎる(笑)。

「7月」に頼らなくても成立する映画

──映画のタイトルを敢えて『kocorono』と命名したのはどんな意図があったんでしょうか。

川口:僕は『kocorono』とか『無題』がいいんじゃないかと考えていて、最終的に吉村さんにタイトルをどうするか尋ねたら「『kocorono』でいいんじゃない?」って軽く言われたんです(笑)。その後に「でもやっぱり、『kocorono』で良かったのかなぁ…」ってチラッと言われたんですけど(笑)。

吉村:いや、『kocorono』っていうアルバムのイメージで映画を観に来られても困るなと思ってさ。まぁ、困っても逆にそのイメージを粉砕してやる! っていう気持ちもあったんだよね。

川口:敢えて『kocorono』と名付けることで、そういうブッチャーズ特有の“アッカンベー!”的な姿勢とも取れるかなと思ったんですよ。

──「7月」の演奏シーンを敢えて入れなかったのも“アッカンベー!”的なスタンスゆえですか。

川口:「7月」の代わりに「8月」を入れたのは、僕が編集している映像だからなんです。僕がまだスペースシャワーに在籍していた頃なんですけど。あと、みんな絶対に「7月」は入るだろうと思っていたと思うんです。僕もギリギリまで悩んだんですけど、尺としても長くなるし、「7月」はみんな散々YouTubeとかで観ているだろうと思って。それと何よりも、「7月」に頼らなくても成立する映画でしたからね。僕は『kocorono』に限らずどの時代の作品も好きだし、「ブッチャーズと言えば『kocorono』だ」という人たちに対して“アッカンベー!”をぶつけたかった部分もあるんですよ。

吉村:粉砕だよ、粉砕。

川口:とは言え、いたずらにひねくれて作ったわけでもないんですけどね。

──その「7月」でギターをブン投げる“ライジングサン”の第1回目のステージとか、過去のライブ映像のなかから「これだけは入れておいて欲しい」というリクエストは吉村さんからなかったんですか。

吉村:なかったね。だって、入れたいと思ったらキリがないからさ。俺から欲してしまえばね。それは違う話だし、あくまで川口君から見たブッチャーズだから。「これだけは入れて欲しい」って言い出したら最後まで全部チェックしたくなっちゃうし。最初から自分目線じゃないから、俺の意見は外すよね。「あの部分は削ったらどうですか?」ってマネージャーからも言われたんだけど、「いや、それはダメだ」って突っぱねたんだよ。

中込:その割り切りと言うか決断は立派だと思うよ。

吉村:大人になったでしょ?(笑)

川口:あと、最初の打ち合わせの時に「バンドの言いなりになるような映画は作りたくない」って僕が言ったんです。それを踏まえた上でOKが出たし、そこまで言うなら任せたよって言うか、川口君もちゃんと責任を背負ってくれよ的なニュアンスはありましたよね。直接そういうことを言われたわけじゃないですけど。

──たとえば時系列で『未完成』の頃を追っている場面では現編成での「プールサイド」のライブ映像が挟まれていたり、時間軸の交差のバランスがとても鮮やかですよね。

川口:やっぱり今のライブが僕は好きだし、自分で撮っていたからなるべく今のライブを入れたかったんですよ。

中込:ようちゃんは昔から“今を生きる男”ですからね。ちょっとサウンドが変わったら過去の曲はもう二度とやらないし、若い時分からとにかく「今を見てくれ」っていうスタンスなんです。そこは昔からずっと一貫してるんですよ。

──あと、所属事務所の社長から「もうこれ以上フォローできない」と説明を受けて吉村さんが憮然とするシーンがあるじゃないですか。よくあんな場面まで入れ込んだなと思って。

吉村:俺はあのシーンになると必ず便所に行くからね(笑)。

川口:今のところ2回観てもらったんですけど、吉村さんはあのシーンで必ず席を立つんです(笑)。

──昨今のミュージック・ビジネスの過酷な一面を象徴するようなシーンだし、それをそのまま使ってしまうのが凄いなと。

吉村:だって、あれが現実なわけだからさ。

川口:あの8カ月のなかでもとりわけ大きな出来事だったし、外すわけにはいかなかったんです。ただ、そういう話し合いを撮るに際して、僕としてはなるべく静かな場所でやって欲しかったんですよ。そのほうが撮影しやすいので。それなのに、場所は必ず吉祥寺の「いせや」になるんですよね(笑)。なるべくしんみりしたくないという理由で。

──レコード会社との契約書にサインをするシーンは?

川口:あれも「いせや」です。「騒がしくて録音できないですよ、吉村さん」って何度言っても絶対に「いせや」っていう(笑)。

“腐れ縁”吉村と射守矢の特異な関係性

──ビヨンズの谷口健さんが“腐れ縁”と称していましたが、吉村さんと射守矢さんの何とも形容し難い特異な関係性がピンボールのように予測不能なブッチャーズの化学変化に大きく作用しているじゃないですか。この映画を観ると改めてそれがよく分かりますよね。

吉村:コアですね(笑)。俺はそこまで客観的には見れないよ。

川口:昨日、僕が単独で取材を受けた時にも2人の関係性について言われたんですよ。小学生の頃からずっと一緒にいる特殊な関係性はやっぱりユニークに映るんだろうし、音楽をやっている人じゃなくてもそういう仲の人はいるんじゃないですかね。

吉村:バンドをやってる人同士で仲がいいケースって意外と多いんだけど、俺なんかは「なんで!?」って思うわけ。確かに羨ましい部分ではあるんだけど、それがよく理解できないんだよ。

──射守矢さんに直接言えば済むことを、吉村さんが敢えて3人に対して叱咤するシーンもありますよね。今さら面と向かって話すのは照れくさいというのもあるんでしょうけど、それでも一蓮托生で同じバンドをやり続けているわけだし、本当に特殊な関係なんだなと思って。

中込:それこそ射守矢君の台詞で「バンドなんて番長連合みたいなものなんだから、やれていること自体が奇跡なんだよ」っていうくだりがありましたけど、あれは私、シビレましたよ。

吉村:俺はあの言葉の意味が全然分からなかったけどね(笑)。どちらかっちゅうと番長みたいに強くない人たちが集まってるんだから。

──一番番長っぽい吉村さんからまさかそんな言葉を聞くとは思いませんでしたけど(笑)。

中込:自分ではそういう感覚なのね(笑)。

吉村:ちょっと語弊があるんじゃねぇか? っちゅうか、俺だったらそういう表現はしねぇなぁっていう。

川口:でも、凄く分かりやすい表現ではありますよね。それくらい我の強い人間が集まっているのがブッチャーズというバンドだと思うし。

──射守矢さんも吉村さんから言われっぱなしじゃなくて、当たり前ですけどバンド全体のバランスをちゃんと考えているんですよね。自転車を押しながら、自分のベースと吉村さんの歌のバランスを考えているんだと語るシーンも出てくるじゃないですか。

川口:射守矢さんって、訊かないと何も言わない人なんですよね。そこは分かっていたので、僕が敢えて話を訊いたりしたんですよ。訊けばちゃんと話してくれるので。

──それはやはり、メンバーが川口さんに対して全幅の信頼を置いているから成し得たことなんでしょうね。

中込:うん、そうだと思う。

川口:であれば凄く嬉しいですけどね。

吉村:俺は一向に喋らないけどね。小松は異様なサービス精神で喋ってたけど(笑)。

川口:でもナベちゃんによると、小松さんは最初「いろいろとややこしいことになるから俺は何も喋らないよ」って言ってたらしいんですよ。それが結局、一番多く喋ってるんですよね(笑)。

──今回の映画では小松さんの野村監督みたいなぼやきが全編冴え渡っていますからね(笑)。

川口:確かに愚痴とも取れるんですけど、小松さんとしてはバンドのことを第一に考えて話しているんですよ。だから陰口とは取れなかったし、カメラが回っていてもああいうことを真正面から話すわけですからね。ただ、小松さんには「川口君、これどこまで使うの?」って訊かれたことがあったんですけど、「回してるものは全部使いますよ」と答えたんです。そしたら「俺、吉村さんと一緒には完成した映画を観れないだろうな…」って言ってましたね(笑)。

中込:ブッチャーズに加入したての19歳の小松に「あんなに腹に響く音が出せて凄いね」って話したら、「練習で吉村さんと射守矢さんがアンプをマックスにして音を出すから『お前、音が小さい!』って怒られるんですよ」って言ってましたよ(笑)。この映画を観ると、そういう関係性が今も何ら変わってないのがよく分かりますよね。

吉村:俺はこの映画で小松に比べて意味の分かんないことを喋ってるけど、普段はそんなに喋らないんだよね。だから「吉村さんの言葉が取れてない」って撮影の最後のほうで川口君に言われてさ。で、どうしたらいいんだ? ってなった時に、俺のなかでは1個しか答えがないわけ。海に行くしかないんだよ(笑)。

川口:各メンバー1日ずつインタビューの時間をもらったんですけど、吉村さんは海にでも連れ出さないとインタビューを受けてくれないだろうってナベちゃんと話していたんですよ。それでとりあえず海に連れて行くことにしたんです。でも、そこでも吉村さんは自分の好きなことしか喋らないし、「なんだよ!」と思って(笑)。終いには「泳ぎたいから海に入ってくるわ」って言い出して。でも、その時はもう9月の中旬でクラゲもいるわけですよ。それなのに「海まで来て泳がないなんて、川口君おかしいよ!」なんて言われたんです(笑)。ただ、その場面は抽象的なイメージとして使えるからまぁいいかなと思っていたんですけどね。

伝説になんかなっちゃいけねぇんだ

──ブッチャーズは一見吉村さんのワンマン・バンドに思われがちだけど、4人の力関係はあくまでイーブンだし、吉村さんはリーダーとして常に他のメンバーのことを考えているじゃないですか。3人の特性を引き出すべく敢えて自分から悪役を買って出ているようにも思えるし、その悪戦苦闘する姿がこの映画からは窺えますよね。

川口:ブッチャーズのファンが特に多く観ると思うんですけど、そこまで関心のない人がどう感じるかが楽しみですよね。吉村さんがジャイアンっぽい性格なのは知っているファンも多いでしょうけど、この映画を観てもらえればどれだけジャイアンなのかがよく分かると思います(笑)。

中込:リアル・ジャイアンですからね(笑)。でも、ようちゃんはジャイアンなんだけど、長嶋茂雄でもあると思ったな。私は今までようちゃんが長嶋茂雄だとしたら吉野(寿)は王貞治だと思っていたけど、むしろ射守矢君が王貞治で、小松がさっき話に出たみたいに野村克也なんだなと思って。

川口:なるほど。それは言えてるかもしれないですね。

──映画の終盤で吉村さんが「伝説になっちゃダメなんだよ。っていうことは、生き続けなくちゃいけないってことなのさ」と語る場面がありますが、まさにあの一言に尽きますよね。映画自体はそこで終わるけれど、ブッチャーズの疾走はまだまだこれからも続いていくという。

吉村:自分では何を話したのかよく分かってないんだけどね。

川口:あの時の吉村さんはガンガンに酔っ払ってましたからね(笑)。

吉村:あのね、伝説っていう言葉の感じがイヤなんだよ。そういう言われ方もイヤだし、分かってないのにそういうハッタリを貼られるのがイヤなわけよ。俺たちはリアルにバンドをやってるわけだし、そういう言葉を利用すれば今頃は立派な大人になってたはずなんだけどさ。

中込:ちゃんと分かってるじゃん(笑)。

吉村:でも、今さらながらに「冗談じゃねぇよ!」っていう気持ちがあって、もっともっとやれると思ってるし、伝説だとかロックンロール・スターになんかなっちゃいけねぇんだっていう思いがバンドの原動力になってるんだよね。

──自戒を込めて言うと、ブッチャーズは特に大仰な言葉で祭り上げられることが多いですしね。

吉村:言葉で言うのは凄く簡単だからね。でも、その安易な言葉に対してどうしても違和感があるんだよ。そうじゃねぇんだよ! っていうさ。本来の俺はもっとフレンドリーなんだけどね(笑)。

川口:映画を作るにあたっても似たようなことを思っていましたね。ブッチャーズがどれだけいいか、どれだけ凄いかを見せるのは、フォロワーがいっぱいいるわけだからいくらでもやれちゃうんです。でも、それをやっちゃったらつまらないし、現在進行形のバンドですからね。

吉村:そういうのは俺が死んでからやってくれって話だよね(笑)。

川口:崇め奉る描き方は映画で一番やりやすいんですけど、それをやっちゃオシマイだと思ったんです。それで健さんとかセイキさんとかフラットにブッチャーズを語れる人を選んだんですよね。

──中込さん然りなんですが、インタビューを受けている方々は皆一様にブッチャーズに対して畏怖の念がありつつも一定の距離感を保っていて、それが仲良し小良しの馴れ合いじゃない感じでいいなと思ったんですよ。

川口:たとえば怒髪天で言えば、増子(直純)さんだと違うなと思ったんですよ、僕のなかでは。映画の舞台挨拶やトーク・ショーなら絶対に増子さんなんですけど、話術に長けた方なので話がどうしても面白い方向に行っちゃうじゃないですか。赤いモヒカン、青いモヒカン時代の話とか(笑)。それなら留萌出身の(上原子)友康さんのほうがいいかなと思ったんですよね。

吉村:でも、友康の発言はほとんどカットだったけどね(笑)。

川口:DVDになったら特典で入れようと思っているんですけど、友康さんは小学生の時の話とか畜生の話なんかもしてくれたんです。でも、映画の流れとして泣く泣くカットしたんですよね。ただ、吉村さんと一緒にスタジオに入ってるシーンもあるし、2人の関係性を表すにはそのほうがインパクトとしては強いかなと思って。

──吉村さんが怒髪天の「オレとオマエ」を唄っているシーンですね。節回しはオリジナルと全然違うんですけど(笑)、吉村さんの歌声はとても染み入るものがあるという。

川口:それを聴いた友康さんとシミさん(清水泰次)が「ようちゃんのアレンジ、凄くいいね」「コーラスのアレンジを俺たちも考え直さなきゃダメだ」って真剣に話し合うシーンもあったんですよ。

中込:いい話ですね。

川口:いい話なんですけど、それもカットしました(笑)。

吉村:そんなのはもちろんカットだよ(笑)。

苦渋の思いで116分にまとめ上げた

──そういう苦渋の決断でカットしたシーンは山ほどあるんでしょうね。

川口:僕が撮っていないライブ映像とかもナベちゃんから見せてもらったんですけど、初期の映像とかは別にして、結局は自分が撮った映像に絞っていったんです。自分の撮った映像を116分に収めるだけでも相当苦しみましたし、3部作とかもやろうと思えばやれるんですけど、それはやりたくなかった。どうしても2時間以内に収めたかったんですよ。90分くらいに収めるのを目標にして、結果的に116分になっちゃった感じでしたね。

──でも、冗長な印象がまるでないのが凄いですよね。

中込:凄いですよ。それは多分、ギリギリまで削ったからなんでしょうね。無言のシーンも含めて無駄がないと言うか。

川口:そうであればいいですけどね。

中込:私たちライターも、原稿を書いていて削りたくない面白い話がいっぱいあるわけですよ。でも、文字数の制限があるから泣く泣く削るんです。

川口:バンドも本来は2枚組にしたいところを1枚のアルバムに絞るじゃないですか。だからそういうのはみんな同じなのかなと思って。

吉村:いや、俺は売れたら2部作、3部作を作りたいけどね(笑)。

中込:ようちゃん、今の話の流れが台無し!(笑)

──加入当時のひさ子さんが「3人が売れたいと思っているのが凄く意外だった」と話すエピソードには笑いましたけど(笑)。

川口:知らない人はみんなそう思うでしょうね。僕はある程度付き合いがあったので、ちゃこちゃんが加入する前からバンドが売れたがっているのは分かっていたんですけど。

中込:それをちゃこちゃんが言うっていうのが凄くおかしかったですね(笑)。

──小磯さんも話していましたよね。「ようちゃんはバンドの認知がまだまだ足りないと思っていて、それが凄く意外だった」って。

川口:表現する人には常にそういう貪欲さがないとダメですからね。

吉村:まだまだだよ。2部作、3部作を作るつもりだからさ(笑)。ヒット・チャートに入るくらいじゃないと。

川口:そういうことを吉村さんが酔っ払いながら延々と話しているインタビューも残っているんですよ。「ヒット・チャートの100位以内だったら嬉しいな」とか話しているんですけど。

中込:また微妙な順位だなぁ(笑)。

川口:そうなんですよ。決して1位を求めているわけじゃないんだなっていう(笑)。

──そのインタビューも是非DVDの特典に入れて頂きたいですね(笑)。

中込:本編よりも特典のほうが長かったら笑えますよね(笑)。

川口:キングの長谷川さんは「特典映像を入れられるだけ入れたい」と言っているので、これからその話を詰めたいと思っているところなんです。僕が一番特典に入れたいのは、この映画のプレビューを観ているメンバーの姿なんですけどね。4人の姿を選んで観られるようにして(笑)。

中込:それ、凄くいいですね!(笑)

吉村:まぁいいけどさ、それ、テーマがちっちゃくない?

川口:テーマは本編の映画で語り尽くしていますから。劇場で公開されている間にこそ映画は生きているんですよ。DVDは映画の記録ではあるんですけど、あくまで劇場がテーマなんです。だからDVDにはある程度のサービスがあっていいと思うんですよね。

映画にとっては劇場こそがライブ

──プレビューを観た直後に吉村さんは「こんなバンドの切り方が良かった」と仰っていましたよね。

吉村:うん。あの切り取り方で全然いいと思った。

川口:僕やプロデューサーは「これで吉村さんからOKが出なかったらどうする?」「でも今さら直せないですよ」なんて話していたんですけどね(笑)。そしたら、プレビューを観終えた吉村さんの最初の一言が「裸のシーンがさぁ…」っていう(笑)。それを聞いて「ああ、大丈夫なんだ」と胸を撫で下ろしたんですよ。吉村さんには音の最終ミックスの作業にも立ち会ってもらったんですよね。

吉村:そりゃ行くさ。俺はバンドとして行くさ。

川口:ただ、メンバーには劇場の大きなスクリーンでまだ観てもらってないんですよ。だから是非大きな画面で観て欲しいですね。印象が全然違うし、他人と一緒に観るというのが映画の醍醐味のひとつなので。

吉村:でっかい画面だと俺は余計に恥ずかしいけど、劇場で観るのが前提だったからね。ライブハウスで上映したいっていうオファーももらってるんだけど、俺たちとしては椅子に座ってでっかいスクリーンで観て欲しいわけ。オファー自体は嬉しいんだけどね。

川口:まずは劇場優先で、その後にライブハウスで上映する展開がいいんでしょうね。ただ、ライブハウスはあくまでバンドを観る、生の音を体感する場所だから、環境がちょっと違うんですよ。

中込:集中して観るなら映画館のほうがいいですよね。映画を観るぞっていう気分で劇場に行って観て頂きたいですし。

吉村:しょうもないバンドの映画を作るっていうのが最初にあったし、それをライブハウスでやっちゃうと作った意味がないんだよ。

川口:ライブハウスで上映すると、映画じゃなくてイベントになっちゃいますからね。あと、その映画が「長いな」と思ったら、DVDなら途中で自由に止められるけど、劇場では席を立ち上がるしかないじゃないですか。つまり、映画は最後まで観なきゃしょうがない。映画という逃げられない状況だからこそ、曲をフルレングスで観せたところもあるんですよ。そこまで付き合ってもらわないと生まれない感動が映画にはあるんです。もちろん途中でトイレとかに行くのは全然構わないんですけどね。

中込:私は喫煙者だから、映画を観る時は特別に気合いが入るんですよ。家でDVDを観る時はタバコも吸い放題、飽きたら止め放題ですから。

川口:そうですよね。だから、映画にとっては劇場こそがライブなんですよ。劇場でこそ映画は生きているってことなんです。DVDは棺桶って言うと言い過ぎかもしれませんけど、アーカイブなので。

──映画でしか得られない感動は僕も絶対にあると思うし、1人でも多くの人に劇場へ足を運んで欲しいですね。

吉村:キングの長谷川さんから藪から棒に投げられた企画ではあったんだけど、今思えばその投げられたタイミングが凄く良かったんだよね。バンドとしては何の動きもないタイミングで投げられたっちゅうのがさ。自分たちもバンドを客観的に見れるいい題材になるかなと思ったし。何ちゅうか、俺としては訳の分からない動きにしたかったんだよ。ブッチャーズとしての動きの流れとか説明する部分で、簡単には説明したくないって言うか。くだらない部分でもそれを入れたほうが謎は多くなるし、その上でお客さんとフレンドリーになれれば凄くいいなと思ったわけさ。フレンドリーなシーンは川口君がちゃんと撮ってくれていたしね。

川口:結局、吉村さんの引きが強いってことに尽きますよね。映画の企画を立てたのは長谷川さんだったけど、それを遙か宇宙の彼方から操縦していたのが吉村さんだったという(笑)。

──吉村さんのなかで、期待以上の映画が完成したという手応えはありますか。

吉村:うん。『NO ALBUM 無題』を作っていた時の言葉では言い表せないモヤモヤがこの映画によってかなり解消されたし、今はメンバーとも意外に仲がいいんだよ(笑)。

──じゃあ、映画のワンシーンにもあるように、3人に対して「お前ら、(テンポが)速いんだよ!」と当たり散らすこともなくなりました?(笑)

吉村:いや、それはある(笑)。「センスなんだよ!」「センスって何すか!?」って、この間もメンバーは怒られてたし(笑)。

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