積立しすぎて毎月赤字の30代共働きの家庭。妻の退職前に家計バランスを立て直すには?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、2人の子どもを持つ32歳共働きの女性。毎月保険や貯金などの積立をしすぎて、固定費だけで給料がなくなってしまうという状況。今後、相談者が無職になる予定ですが、家計のバランスを立て直すにはどうすればよいでしょうか? FPの氏家祥美氏がお答えします。

毎月固定費だけで給料がなくなってしまいます。保険で学資と老後の貯金などはしていますが、現金でも月12〜13万貯金しています(うち、年20〜30万ほどは固定資産税の支払いなどに使っています)。現金貯金もしないと次の車の購入や突然家電が壊れたりした際の大きな出費が不安で……。現金貯金が多すぎますか? 今、私が年収270万程で、来月から無職になります。今後が不安です。仕事がすぐにみつかればいいですが、子どももいるし、コロナでなかなか難しいです。

【相談者プロフィール】

・女性、32歳、会社員、既婚

・同居家族について:

夫/35歳、会社員、年収600万円

子ども2人/(6歳、4歳)

義父/現役引退(米農家)+アルバイト

義母/身体障害者・要介護

※義父義母を扶養している訳ではない。

・住居の形態:持ち家(戸建て/滋賀県)

・毎月の世帯の手取り金額:45万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出の目安:約38万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万2,000円

・食費:7万円

・教育費:2万2,000円

・保険料:7万円

・通信費:2万5,000円

・車両費:5万円

・お小遣い:3万8,000円

・その他:2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:12万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):300万円

・現在の負債総額:2,800万円


氏家:ご相談者さんの家計は、毎月の手取り収入が45万円、このうち38万円を支出(貯蓄性の保険も含む)して、それとは別に12万円を貯蓄しています。38万円+12万円=50万円となり、手取り収入よりも合計額が上回るため、積立貯蓄をしている一方で、普通預金口座の残高が減っていき、ボーナス時に減った残高を補っている状態だと思われます。

このような家計は、家計診断をしていると時々見受けられますが、あまりすっきりとした状態ではありません。月々の貯蓄を12万円→7万円と5万円減額して毎月の赤字を解消しましょう。毎月の赤字穴埋めが必要なくなる分、ボーナス時には現在よりも、5万円×6カ月=30万円を年に2回、合計60万円の貯蓄を増額できることになります。

共働きの妻が会社を辞めると家計はどうなる?

冒頭、毎月の収支の話から始めましたが、実は今回のご相談者さんの家計において一番大きな問題は、固定費でも貯蓄でもなく、共働き家庭の妻であるご相談者さんが来月退職することです。現在は、会社員の夫の年収が600万円、ご相談者さんの年収が270万円、合わせて870万円の年収がありますが、今後は600万円でやりくりすることになります。これからも今の生活を維持できるのでしょうか。

毎月の支出38万円×12カ月=456万円、これに固定資産税が年間20〜30万円出ていきますから、今わかっている年間支出は500万円程度です。年収600万円であれば、今後も年間100万円の貯蓄ができることになります。まずはこの数字が信頼できるかどうかを確認しましょう。

これまで、年間100万円+妻の収入270万円=370万円の貯蓄ができていたのなら、妻の収入がなくなった後も年間100万円の貯蓄ができるはずです。もし、これまでの貯蓄が370万円よりも少なければ、どこかに使途不明金があるはずです。この使途不明金が今後も続くのであれば、これからの貯蓄は100万円よりももっと少なくなるでしょう。

焦らずに実態を見ることが重要

今回のご相談からは、ご相談者さんの将来への焦りや不安と、頑張らなくてはという意気込みが強く伝わってきました。将来の教育費のためにお子さん2人の学資保険に加入して、老後のために貯蓄性の保険にも加入しているため、毎月の保険料が7万円に膨らんで、固定費負担が重くなっています。

これだけ固定費を支払うと家計に余裕はないはずなのですが、車や家電の買い替え費用が心配で毎月12万円ずつ積立貯蓄をしています。しかし、それは家計の実態にはあっていないため、共働きをしている今でさえ、毎月5万円の赤字が生じていました。

来月ご相談者さんが退職してしまうと、毎月の貯蓄額は12万円どころか0円となり、ボーナスから固定資産税を支払って残った金額からの貯蓄がすべてになります。使途不明金がなければ年間100万円ほど貯蓄ができる計算ですが、家具や家電の買い替えなどが生じたら貯蓄額はその分減少します。

あまり見たくない現実かもしれませんが、いまを正しく認識しないと、家計が複雑になるばかりでお金は貯められません。

いまは老後資金の優先順位は低い

ちょっと将来をイメージしてみましょう。現在6歳と4歳のお子さんがいらっしゃいますが、この子たちが大学を卒業して社会人になるときには、ご夫婦は何歳になるでしょうか。夫53歳、妻50歳で子育てが終了することになります。

お二人とも、近頃にしては若いうちに結婚してお子さんを2人生み育てているため、子育てが比較的若いうちに終わります。65歳まで働くと考えると、お子さんが独立してから夫12年、妻は15年も働けることになります。子育てが終わってからでも十分に老後資金を貯める機会が取れるのではないでしょうか。

現在は、若くして住宅ローンを支払い、目先の教育費も支払いながら、将来の教育費や老後資金を一生懸命貯めている状態です。これを妻が仕事を辞めた後も今のまま続けるのは困難かもしれません。老後資金の緊急性は低いので、保険の一部を「払い済み保険」に切り替えるなどして当面の保険料負担を軽くすることも考えてみましょう。

保険料負担を軽くして、その分を少しずつ現金による積立貯蓄に回しましょう。現金がないあまりに、車や家具・家電の買い替え時にローンを組むことのないように気を付けましょう。

妻の再就職プランの検討を

退職した後も、それほどブランクをあけずに相談者さんが再就職する予定でいるのなら、そこから貯蓄ができるようになります。あまり焦らずに今のペースでやっていけばいいでしょう。

一方で、お子さんの子育てやお義母さんの介護などの時間を取るために離職したというのであれば、これから数年間は働かない可能性があります。その場合は、積極的に家計を見直していく必要があります。保険の見直しのほか、通信費2万5,000円や食費についても見直しの余地がありそうです。焦らずに、できることから始めてみましょう。

© 株式会社マネーフォワード