週末連続ポール獲得のキスが今季10勝目に到達。テオ・カルヴェはキャリア初優勝/ETRC第7戦

 10月2~3日の日程で2週連続開催となった2021年のETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ第7戦がスペインのハラマで争われ、この週末も今季好調のノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が躍動。土日両日の予選で最速を記録すると、そのままレース1、レース3と連続ポール・トゥ・ウインを決め、今季10勝目に到達している。

 カレンダー改訂によりシーズン終盤戦に向け怒涛の連続イベント開催が続いてきたETRCは、実質的ラウンド5となったフランスはル・マン、ブガッティ・サーキットに続いてスペインでの1戦を迎えた。

 ETRCのトレーラーヘッドでは「2分切りがベンチマーク」と言われる全長3.4kmのサーキットに挑んだ17台のうち、土曜予選でいきなり1分58秒台を記録してその壁を超えてきたキスは、続くスーパーポール・セッションでも軽々と1分58秒203の最速タイムをマーク。選手権のライバルでもあるサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)とシリーズ6冠を誇る“帝王”ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)を従え、今季7度目かつ週末最初のポールポジションを確保した。

 土曜現地16時15分という遅めのスタートとなったレース1は、12周を通じてトップ3がこう着状態だったのに対し、地元出身のアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)が、元王者アダム・ラッコ(バギラ・レーシング/フレイトライナー)との激しい肉弾戦を展開。

 第5戦ゾルダーで今季初勝利を挙げ、復活の狼煙を上げた2017年のシリーズチャンピオンに対し、地の利を活かした5番手発進の大ベテランは早い段階でオーバーテイクを決め、全ラップを通じてテール・トゥ・ノーズの攻防戦を繰り広げる。

 しかし老獪なディフェンスで勝る地元のヒーローがコンマ2秒差でフレイトライナーを抑え切り4位を確保。勝者キスを中心にレンツ、ハーンの表彰台となった週末最初のヒートは、5位のラッコ以下、アンドレ・クルシム(ドント・タッチ・レーシング/イベコ)、レネ・ラインアート(レイナート・レーシング/イベコ)、そしてシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)のトップ8となった。

 そのまま午後18時30分に迎えたレース2は、前戦8位のハルムがリバースポールから今季初勝利を懸けてスタートを切ると、序盤から後続を見事に抑え切り完全に主導権を握ったかに見えた。

 しかし、高い防御力を誇る彼女のイベコS-WAYレーシングトラックを唯一攻略したクルシムが、前戦のレース4に続いて今季3勝目を獲得。3位表彰台にはキスとの攻防を制したアルバセテが続く結果となった。

2戦のキャンセルを経て、実質的“ラウンド6”となった第7戦スペイン・ハラマには、全17台のトレーラーヘッドが集った
レース1でホールショットを決めたポール発進ノルベルト・キス(Révész Racing/MAN)が、そのまま快勝
リバースグリッドのレース2では、シュテフィ・ハルム(Team Schwabentruck/IVECO)を逆転したアンドレ・クルシム(Don’t Touch Racing/IVECO)が今季3勝目を得た

■バギラ・レーシングのテオ・カルヴェが初優勝

 そんな前日から一転、早朝から雨模様となった日曜の予選は、20分間のセッションを通じて競争力あるタイムを記録していなかったキスが、最後の最後で暫定ポールタイムを叩き出す“横綱相撲”で、この日も悠々スーパーポールへ。

 ここでも2分08秒318としたキスが2日連続のトップタイムとし、アルバセテ、ラッコ、ハーンの続くグリッド順に。ハルムに続いてシリーズ2人目の女性ドライバーとして修行を積むアリーヤ・コロックのフレイトライナーも、自身初のスーパーポール進出で8番グリッドからレース3に挑むこととなった。

 しかし現地日曜午後13時15分開始予定だったヒートは、午前から断続的に降り続いた雨に加え、国内選手権のトラックがサーキットのセクター3にオイルを撒いたことから、約2時間のディレイを経てようやくのスタートに。

 当該セクションはイエロー区間とすることを全ドライバーが了承し、安全面の理由からこれで4戦連続、3周のセーフティトラック先導でレースが始まると、キスは背後の地元ドライバーに脅かされることなく4秒のマージンを築いて今季10勝目に到達。2位のアルバセテに続き、最後の表彰台に向け死闘を繰り広げたラッコvsハーンの“チャンピオンバトル”はフレイトライナーに軍杯が挙がり、レンツが5位でフィニッシュラインを通過するリザルトとなった。

 すると、このレース3で6位だったハルム、7位だったクルシムに続き、8位でチェッカーを受けたテオ・カルヴェ(バギラ・レーシング/フレイトライナー)が、続くレース4のリバースポールから発進すると、レコードラインを中心に乾いたコースコンディションも味方し、グッドイヤーカップ登録ながら自身初の総合優勝を達成。背後にはターン1の攻防でクルシムの機先を制したハルムが続き、土曜に続く連続2位ポディウムを手にした。

 このスペインでの週末結果により、ふたたび2勝を挙げた選手権リーダーのキスが228点までポイントを伸ばし、2位レンツの182点に対し3位ラッコが179点と肉薄する展開に。2021年のETRCも残すは1戦、1週間のインターバルを経た10月16~17日に、イタリアが誇るシリーズおなじみのトラック、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで今季のタイトルが決することとなる。

雨で始まった日曜は、オイル処理も絡みレース3のスタートが2時間ディレイ。その混乱にも動じず、キスが今季10勝目を挙げた
ドライ方向へ好転したレース4は、リバースポールの優位性を活かしたテオ・カルヴェ(BUGGYRA Racing/FREIGHTLINER)が初の総合優勝
今季未勝利のシュテフィ・ハルム(Team Schwabentruck/IVECO)は2日連続の2位表彰台に

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