理事ら背任容疑で逮捕 日本大学事業部「冠婚葬祭業」から「洗濯業」まで手掛ける裏実態

日本大学本部

日本大学の医学部付属板橋病院(東京都板橋区)の建て替え工事の設計契約を巡り、東京地検特捜部は7日、日大に2億2000万円の損害を与えたとして、背任の疑いで日大理事の井ノ口忠男容疑者(64)と大阪市の医療法人「錦秀会」の前理事長籔本雅巳容疑者(61)を逮捕した。この日、杉並区にある田中英寿理事長(74)の自宅を改めて家宅捜索し、資金流出の全容解明を目指す。

逮捕容疑は、昨年2月中旬、井ノ口容疑者が役員を務め、日大から業務委託を受けた関連会社「日本大学事業部」(世田谷区)が設計業者を選定するプロポーザル業務で、都内の設計事務所が1位になるよう評価点を改ざんして選定。同7月に日大から設計事務所の口座に着手金約7億3000万円を送金させ、翌月にこの口座から籔本容疑者の出資する実体のない医療コンサルタント会社に2億2000万円を支出し、日大に損害を与えた疑い。

事業部は日大が100%出資して設立。各学部の設備や備品の調達などを手掛け、法人登記では「旅行業」「洗濯業」「冠婚葬祭業」「保険代理店業」「広告業」などと事業目的が多岐にわたっている。

「事業部は田中理事長の側近ら複数の理事が取締役を務めている。その中で、実権を握っているのは田中理事長に寵愛されている井ノ口です」(日大OB)

特に保険代理店業務については黒いうわさが絶えなかったという。

「保険会社の大手3社は社内コンプライアンスに基づき、井ノ口からの利益供与の依頼を拒否したために従来の取引を大幅に縮小・停止させられたんです。井ノ口は保険代理店業務でも不正なカネを得ていたという疑惑もあります」(同)

また、警察関係者は「田中理事長は地検の事情聴取に『カネはもらっていない』と否定してますが、2億円もの流出は井ノ口の独断とは考えにくく、特捜部は田中理事長が関与している疑いを捨てていません」と指摘している。

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