3連覇王者スコット・マクラフラン、2021年RSC最終戦『バサースト1000』への凱旋はならず

 世界的人気を誇るオーストラリア大陸最大のツーリングカー選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップのトップチームとして活動するディック・ジョンソン・レーシング(DJR)は、2021年に北米へと渡り、本格参戦初年度のインディカー・シリーズで見事ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したスコット・マクラフランに対し、RSCのシリーズ最終戦に移動した『バサースト1000』耐久カップ登録を断念することを発表。代わってチームのリザーブを務めるアレックス・デイビソンを起用し、レギュラーのウィル・デイビソンと兄弟ペアで挑むことをアナウンスした。

 シリーズにはシェルVパワー・レーシングチームのエントリー名で参戦し、今季も2台のフォード・マスタング・スーパーカーを走らせている名門DJRは、かつて同チームとともに2018年はフォード・ファルコンFG-Xで、そして2019年と2020年はマスタングでシリーズ3連覇を達成したマクラフランの『凱旋起用』を計画していた。

 しかし、伝統の10月第2週から12月初旬のフェスティバル化を経たシリーズ最大の“祭典”に向けては、現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)リストリクションが暗い影を落とし、政府の規制と検疫要件のために、米国を拠点とするマクラフランのオーストラリア入国が「非現実的」な状況となってしまった。

「僕自身も『ホーム』に帰って、オーストラリアのモータースポーツカレンダーで最大のレースに参加できると考えていたから、それが実現できなくなったのは本当に残念だよ」と、インディカー初年度でランキング14位を獲得したマクラフラン。

「ひさびさのマスタングも楽しみにしていたが、長期にわたる検疫要件とオーストラリアのCOVID-19制限により、タイミングがうまくいかないことが分かった」と続けたニュージーランド出身のマクラフラン。

「僕もチームやスーパーカーのサポーター、そして18カ月以上会っていない家族や友人に会い、マウントパノラマで素晴らしいショーを披露できる日を楽しみにしていた。それだけに、こうした決断を迫られるのは本当に悲しい事態だ」

「でも、チームが2022年に向けどういう戦いができるかを証明できると信じているし、アレックスが僕の代わりに素晴らしい仕事をすると確信している。今回は米国から見守り、チームがシーズンフィナーレで幸運を手にすることを祈っている」

伝統の10月第2週から12月初旬のフェスティバル化を経たシリーズ最大の”祭典”では、各車2名1組の耐久カップ登録ドライバーが起用される
2019年には、スコット・マクラフランも当時アレクサンダー・プレマとのペアで『バサースト1000』を制覇している

■マクラフランとのレースは「さまざまな要因に左右されると理解していた」とDJR共同オーナー

 そのマクラフランの代役として耐久カップ登録で起用されることが決まったアレックス・デイビソンは、現在シリーズ総合5位につける弟のウィルとタッグを組み、伝統の1戦でシェルVパワー・マスタングのステアリングを握ることとなった。

「2021年シーズンの初めから、スコット(・マクラフラン)が我々と今季レースをすることができるかどうかは、変化し続けるCOVID-19のパンデミックや、インディカーのスケジュールなど、さまざまな要因に左右されると理解していた」と語るのは、DJRの共同オーナーを務めるライアン・ストーリー。

「残念ながら、思ったとおりのタイミングで状況の調整ができないことがわかった。アレックスはこのシリーズでも長い歴史を持つ質の高いドライバーであり、もちろん彼と彼の兄弟をペアにすることで、今年の“グレートレース”に向け素晴らしい組み合わせになった。彼はここワークショップで我々と多くの時間を過ごし、マシンとチームについて知り、チームのオペレーション方法を学んでいるところだよ」

 これで2021年の『バサースト1000』に向けた耐久カップ登録ドライバーの空きシート枠は残り5つとなり、DJRのもう1台であるアントン・デ・パスカーレのペアにはトニー・ダルベルトの起用が内定済み。

 一方、ホールデン陣営代表トリプルエイト・レースエンジニアリングは、レッドブル・アンポル・レーシングの2台ともにジェイミー・ウインカップ/クレイグ・ラウンズ組、シェーン-ヴァン・ギズバーゲン/ガース・タンダー組と強力な布陣を敷く上、ワイルドカード枠の3台目には、引退を決めたウインカップの後釜として2022年のレギュラー起用がアナウンスされている新鋭ブロック・フィーニーと、シリーズ3冠を誇る伝説の男、57歳ラッセル・インガルのペアリングで臨む。

 その他のフォード陣営では、DJRと同じホモロゲーションチームであるティックフォード・レーシングが、レギュラー3名とのペアリングは未定ながらジェームス・モファット、アレクサンダー・プレマ、トーマス・ランドルの起用を発表済み。そして同じくマスタング2台体制を敷くケリー・グローブ・レーシングは、今季限りでのチーム離脱を決めているアンドレ・ハイムガートーナーの僚友にアール・バンバーの招聘を決めている。

アレックス・デイビソンとウィル・デイビソンの兄弟ペアは、これまで『バサースト1000』に4回出場している
2022年のレギュラー起用がアナウンスされている新鋭ブロック・フィーニー(右)は、シリーズ3冠を誇る伝説の男、57歳ラッセル・インガルとのペアリングで臨む

© 株式会社三栄