負債1000万円未満の倒産 約4社に1社がコロナ関連倒産【2021年度上半期】

 2021年度上半期(4-9月)の負債1,000万円未満の企業倒産は、236件(前年同期比33.5%減)で、2015年同期以来、6年ぶりに前年同期を下回った。
 負債1,000万円未満の「新型コロナウイルス」関連倒産は57件(前年同期26件)で、前年同期の2.1倍に増加し、約4社に1社(構成比24.1%)が新型コロナ関連倒産だった。
 産業別では、最多はサービス業他の108件(前年同期比38.6%減)で、全体のほぼ半数(構成比45.7%)を占めた。このうち、コロナ禍で休業や時短営業、酒類提供の自粛が求められた飲食業は37件(前年同期42.1%減)で、給付金や協力金などで倒産は抑制されている。
 原因別では、最多は「販売不振」の176件(同31.5%減)で、負債1,000万円未満の74.5%(前年同期72.3%)を占めた。
 資本金別では、1,000万円未満が223件(前年同期比33.2%減)で、構成比が94.4%(前年同期94.0%)と9割以上を占め、小・零細規模の企業がほとんど。
 コロナ禍の資金繰り支援策は小・零細規模の事業者にも浸透し、2021年度上半期は前年に裁判所の一部業務が縮小した5月を除く5カ月で前年同月を下回った。だが、金融支援も本業支援に移行しており、業績回復が遅れた企業は新たな資金調達が難しくなっている。
 9月30日をもって緊急事態宣言などが全面解除され、今後、企業は本格的な事業再開で運転資金などの資金需要が活発となる。多くの事業者は業績回復の遅れから経営体力が疲弊し、債務の過剰感も強まっている。これまでの金融支援策に加え、新たな事業再生に向けた支援策が必要となってくるだろう。

  • ※本調査は2021年度上半期(4-9月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の「倒産集計」(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産件数236件、約4社に1社が新型コロナ関連倒産

 2021年度上半期(4-9月)の負債1,000万円未満の企業倒産は236件(前年同期比33.5%減)で、2019年同期(248件)以来、2年ぶりに200件台にとどまった。
 コロナ禍での国や自治体、金融機関による緊急避難的な資金繰り支援効果で、2021年度上半期の負債1,000万円未満の倒産は、5月を除いて前年同月を下回り、倒産は抑制されている。
 負債1,000万円未満の倒産のうち、「新型コロナ」関連倒産は57件(前年同期26件)で、構成比は24.1%(同7.3%)と、約4社に1社が新型コロナ関連倒産だった。
 9月30日をもって緊急事態宣言などが全面解除された。営業時間の制限も一部であるが、今後、事業の本格的な再開に伴い、新たな運転資金の需要が見込まれる。長引くコロナ禍で財務面を含めて体力は疲弊しており、「黒字倒産」の発生など今後の動向が注目される。

1000万未満

【産業別】10産業のうち、6産業で減少

 産業別は、10産業のうち、増加が3産業、減少が6産業、1産業が同件数だった。
 産業別の最多は、サービス業他の108件(前年同期比38.6%減、前年同期176件)で、2015年同期以来、6年ぶりに前年同期を下回った。ただ、負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は45.7%(前年同期49.5%)で、ほぼ半数を占めた。
 そのほか、情報通信業8件(前年同期30件)は4年ぶり、建設業33件(前年同期比36.5%減)と製造業7件(同50.0%減)は3年ぶり、卸売業26件(同29.7%減)、運輸業7件(前年同期8件)は2年ぶりに、それぞれ減少した。
 一方、農・林・漁・鉱業6件(同3件)は2年連続、小売業35件(同30件)と不動産業5件(同4件)は3年ぶりに、それぞれ前年同期を上回った。金融・保険業は前年同期と同件数の1件だった。
 負債1,000万円未満の「新型コロナ」関連倒産では、最多がサービス業他の34件(構成比59.6%、前年同期14件)で、前年同期の2.4倍に増加。内訳は、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が5件(前年同期1件)、「喫茶店」が3件(同1件)、「美容業」が2件(同ゼロ)など。  次いで、小売業8件(同2件)、建設業5件(同2件)、卸売業4件(同3件)の順。

1000万未満

【形態別】破産228件で、構成比は96.6%

 形態別は、法的倒産が235件(前年同期比33.4%減)。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は99.5%(前年同期99.4%)で、2012年同期以降の10年間で最高を記録した。法的倒産のうち、破産が228件(前年同期比33.5%減)で、構成比は9割以上(97.0%)になった。
 そのほか、「民事再生法」は4件(前年同期9件)で、すべてが小規模個人再生手続きだった。
 また、「特別清算」は3件(同1件)、「取引停止処分」は1件(同2件)だった。
 負債1,000万円未満は小・零細企業が中心で、業績改善がなかなか進まない。先行きの見通しが立たず事業継続を断念するケースが多く、ほとんどが消滅型の「破産」を選択している。
 また、代表者の高齢化も進み、後継者不在も事業継続をあきらめる一因となっている。

【原因別】販売不振の構成比が7割以上

 原因別では、『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が184件(前年同期比32.1%減、前年同期271件)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は77.9%で、前年同期の76.3%より1.6ポイント上昇した。
 「販売不振」は176件(前年同期比31.5%減)で、構成比が74.5%(前年同期72.3%)と前年同期より2.2ポイント上昇した。
 「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は8件(前年同期12件)だった。
 そのほか、代表者の病気や死亡を含む「その他」が10件(前年同期比28.5%減)。「他社倒産の余波」が24件(同35.1%減)で、関連企業の連鎖倒産が大半を占めた。
 また、「事業上の失敗」(同75.0%減)と「運転資金の欠乏」(同14.2%減)はそれぞれ6件で、設立10年未満の企業がほとんど。

【資本金別】1千万円未満の構成比が94.4%

 資本金別では、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が223件(前年同期比33.2%減、前年同期334件)で、2015年同期以来、6年ぶりに前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は94.4%で、前年同期(94.0%)より0.4ポイント上昇した。
 内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が87件(前年同期比30.9%減、前年同期126件)、「個人企業他」が82件(同30.5%減、同118件)、「1百万円未満」が35件(同31.3%減、同51件)、「5百万円以上1千万円未満」が19件(同51.2%減、同39件)だった。
 そのほか、「1千万円以上5千万円未満」が13件(同38.0%減、同21件)。
 「5千万円以上1億円未満」は3年連続、「1億円以上」は2012年同期以降、発生がなかった。

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