長引くコロナ禍で苦境の美容室、9月の倒産は4倍に【2020年度上半期】

 2021年度上半期(4-9月)の美容業(美容室)倒産(負債1,000万円以上)は、37件(前年同期比5.1%減、前年同期39件)だった。コロナ関連の資金繰り支援策で企業倒産が大幅に抑制されるなか、美容室の倒産は微減にとどまった。
 ただ、9月の倒産は12件(前年同月3件)と前年同月の4倍に増加し、うち新型コロナウイルス関連倒産が半分の6件を占めた。コロナ禍の長期化や夏場の感染拡大が、美容室の経営に大きな打撃を与えている。
 2021年度上半期(4-9月)は、延長と再発令が繰り返された緊急事態宣言とまん延防止等重点措置により、多くの美容室が客足の減少に直面した。美容室は緊急事態宣言などに伴う休業要請の対象外だったが、密になりやすい業態で、感染を懸念した「美容室控え」が広がった。
 美容室は比較的、参入障壁が低く、小・零細規模の事業者が多い。人口減少のなか、コロナ禍で来店客が減少し、競合が激化していた。美容室の倒産は2019年度に過去30年間で最多の97件を記録し、美容室の新陳代謝が進んでいた。
 9月30日で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が全面解除された。ワクチン接種率の上昇や感染者数の激減などの好条件もあるが、客足がコロナ前の水準に戻るには相当な時間を要するだろう。東京商工リサーチ(TSR)が今年8月に実施した「新型コロナに関するアンケート調査」では、「債務に過剰感がある」と回答した美容室の割合は85.7%にのぼった。コロナ禍での売上減少と過剰債務のなかで、客足が不安定な美容室の倒産は支援策の終焉とともに再び、増加に転じる可能性が出ている。

  • ※本調査は、日本産業分類の「美容業」に基づき、2021年度上半期(4-9月)の美容業の倒産を集計、分析した。

美容室倒産、新型コロナ関連は約3割

 2021年度上半期(4-9月)の「美容業」倒産は、37件(前年同期比5.1%減、前年同期39件)で、2年連続で前年同期を下回った。このうち、新型コロナウイルス関連倒産は11件で、構成比では約3割(29.7%)を占めた。
 美容室は、参入障壁が比較的に低く創業しやすく、資金力が乏しい小・零細規模の事業者が多い。また、労働集約型の業態で人手不足の問題にも直面し、2019年度には過去30年間で最多の年間97件の倒産が発生していた。
 2020年は新型コロナ感染拡大があったが、美容室は休業要請の対象から外された。さらに、政府や自治体による制度融資や持続化給付金などの支援効果もあって、2020年度の倒産は80件まで減少した。2021年度上半期(4-9月)も、4月3件(前年同月10件)、5月3件(同2件)、6月7件(同7件)、7月8件(同7件)、8月4件(同10件)と低い水準で推移していた。だが、長引くコロナ禍と夏場の第5波感染拡大で、9月は12件(同3件)と急増した。

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【原因別】『不況型』倒産の構成比が9割

 原因別では、最多は「販売不振」の28件(前年同期比20.0%減)。次いで、「赤字累積」が6件(同200.0%増)が続く。
 美容室は免許があれば比較的参入しやすい業態で事業者数が多いうえ、人口減少などでコロナ前から同業他社との競争が激化していた。個人事業主を中心に、小・零細規模の事業者が多く、長期化するコロナ禍で事業継続を断念したケースも多いとみられる。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は34件(同8.1%減)で、美容業倒産に占める構成比は91.8%にのぼり、体力の脆弱な事業者の多さを示している。

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【資本金別】「1千万円未満」が97.2%

 資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が36件(前年同期同数)で、構成比は97.2%(前年同期92.3%)を占めた。
 内訳は、「個人企業他」が19件(前年同期比5.5%増)で最多。次いで、「1百万円以上5百万円未満」が12件(同7.6%減)、「5百万円以上1千万円未満」が3件(同50.0%増)、「1百万円未満」が2件(同33.3%減)だった。
 「1千万円以上」は1件(同66.6%減)にとどまった。
 コロナ禍での「美容室控え」による売上減少も影響し、体力に乏しい小・零細規模を中心に淘汰が進んでいる。

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