ほのぼのなんかしてない倉本聰「北の国から」さだまさしのハミングに騙された!  40年前の今日 ― 1981年10月9日、フジテレビ系ドラマ「北の国から」第1話が放送

倉本聰作「北の国から」か、山田太一作「想い出づくり。」か…

家庭用録画デッキが普及する前の、1981年秋。倉本聰作『北の国から』と山田太一作『想い出づくり。』の放送枠が重なったことで、ドラマ好きは大いに迷った。なんてことを言われるが、私はまったく迷わず、『想い出づくり。』一択だった。

青大将の田中邦衛とジャージ姿の子供が出てきて、さだまさしが「♪あーあー」と歌う主題歌がかぶさる予告を見ても、まったく心が動かなかった。『北の国から』って、都会から田舎に越してきた家族が、過酷な自然に立ち向かいながらも、田舎暮らしに親しんでいく。そんなほのぼのとしたドラマでしょ? 田舎=善、都会=悪、みたいな?

だが、『想い出づくり。』に夢中な私にも、『北の国から』おもしろいよ、という評判は聞こえてきた。『想い出づくり。』が先に終了したのを機に、私も『北の国から』を観ることにした。すると……

さだまさしのハミングに騙された? 中学生には受け止めきれないエピソード

私が思い描いていた話とはかなり違う。ヘナマズルイとみんなに疎まれ、愛馬を手放した夜に川に落ちて亡くなる笠松のじっちゃん。好きな男にふられて家出し、風俗嬢となるつらら。UFO目撃や怪文書が引き金となり、学校を追われる凉子先生。

中学生だった私には受け止めきれない、過酷なエピソードが続く。ぜんぜん、ほのぼのなんかしてない。さだまさしのハミングに騙された! と、観始めてから、ほどなく気づいたわけで。

スペシャルドラマ版も含めると、最も印象に残っているのは、1992年に放送された『巣立ち』で、主役の五郎が上京してくるくだりだ。好きでもない女の子を妊娠させた息子の純に、五郎がこう言う。

「あやまっちゃお。とにかく、二人であやまりゃ何とかなるさ」

てっきり、五郎が純を殴るか怒鳴るかすると思っていた私はあまかった。こ、この親子って……。

倉本先生、あなたのペンはまったく錆びてません

2017年、昼帯で倉本聰作『やすらぎの郷』が放送されていた。そこでも、ちょいちょいとんでもないセリフが挟まれ、驚きの展開になっていた。まったくやすらがない。

そういえば、倉本聰自身をモデルにしたと噂される、石坂浩二演じる脚本家がよく飲んでいるカクテルは、ラスティペン(錆びたペン)という。倉本聰なりのシャレなのだろう。でも、みんなこう思っているのではないか。

倉本先生、あなたのペンはまったく錆びてません。40年たった今も、私たちはあなたに騙され続けています…… と。

※2017年8月6日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 平マリアンヌ

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