松本まりかが語るドラマ「それでも愛を誓いますか?」――「あめ玉のかわいいキスシーンで『セックスをしてほしい』と。予想外なところから問題提起をしてくるドラマです」<インタビュー後編>

結婚8年目、セックスレス5年目の女性が、愛する夫から“女として求められないこと”にいら立ち、悩みながらも、再就職した職場の人や環境によってだんだんと変わっていく姿を繊細に描いたドラマ「それでも愛を誓いますか?」(テレビ朝日ほか=ABCテレビ制作)。

第1話は、松本まりかさん演じる主人公・純須純が、専業主婦としての生活を変えるべく契約社員として再び働き始めることを決意。職場になじみ始めたところで、夫・武頼(池内博之)が女性と歩いている姿を目撃してしまい…という展開で幕を閉じました。

今回は、本作の主人公・純を演じる松本まりかさんのインタビュー後編をお届け! 前編(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1123121/)では、撮影時の発見や“純須純”という人物の役どころについて語っていただきましたが、後編では作品の見どころや松本さんお気に入りのシーン、さらには今後の目標について伺いました。

――前回のお話では、本作は批評的な目線があるとおっしゃっていましたが、どのような部分に感じましたか?

「原作は“夫に愛されない”という部分を救ってくれる、『よくぞ描いてくれた!』というような人の心、女性たちの心に寄り添った漫画だったと思います。でもドラマでは、それを批評的に描いている。すごいですよね。そこにはもしかしたら一つの意味があるのかもしれないと思っています。要するに、甘えさせてくれないドラマなのではないかなと考えています。監督が女性の方なので、たぶん気持ちは分かると思うんです。だから彼女たちに対して、セックスレスだろうが甘えさせないというところから、私たちは強くなれるきっかけになるのではないかなと感じました。ドラマとかって、つらいものには手当てではないけど、救いとかを求めると思うんです。でも逆に辛口のものがくると、ちょっとハッとさせられるというか、ズシンとくるんだけど、そうすることで女性たちがたくましくなっていく。このドラマを見て『悲劇のヒロインになりたいけど、そうじゃなくてもう一歩進むんだ』という、つらい状況を自分が全部受け入れた上で、どう一歩進めるかを問いかけるドラマになっているのではないかなと思います」

――純を演じていて大変だった部分はありましたか?

「苦しかったです。私も、『純はそうじゃない。もっとすてきで、彼女の持っている女っぽさみたいなものを出したくない』と思っていました。でも監督の思い描く純は、そうではなかったんです。“ドラマはこうあるべき”というものをひっくり返されたようでした。ドラマを面白くみせるカット割りもしなかったし、いいテンポで進まない。もしかしたらドラマをご覧になる方は見にくいかもしれないですよね。でも、求められているものの逆を行くということが、もしかしたら私たちがハッとするきっかけや、すごく強いエールになるような気がします。時には厳しく、こんなにつらい状況がそろって絶望している中でも、『ちゃんと絶望しなさい』と言われているような。そして絶望した先に、“それでも自分の力で幸せを見つけて自分の人生を歩んでいく”という、強さをガツッと問われるようなドラマになっている気がします」

――原作は寄り添う形、ドラマは批評的とおっしゃっていましたが、ドラマ版ならではの、松本さんお気に入りのシーンや、ここはぜひ見てほしいというシーンがあったら教えてください。

「クランクアップの、あめ玉を使ったキスシーンじゃないかな。あんなシーンなかなか見られないですよね。(同席していた山崎宏太チーフプロデューサーの「一発でしたしね」の発言に)そうでしたね(笑)。長回しのロングキスシーンというのがあるんです。それが作品全体のオールアップのシーンでした。『これドラマでやっていいの?』というくらいの今どき感があると思います。ここでキスするとかここで手をつないでいるとか、部分部分で見せるシーンは他にもありましたけど、そのシーンだけは全部長回しでキスという流れなんです。なんて言ったらいいんだろう…キャンディーキスにしましょうか! これ、はやるかな(笑)」

――(笑)。

「二つのあめ玉がかわいく印象的に見えるようにしました。でも、どういうキスがいいのかというのはみんなで話し合いました。スッといくキスがいいのか、一連でいくのか、カット割りでいくのかと、たくさん話し合って『一連でいこう』となったんです。普通のあめ玉のキスシーンだったから、あめ玉を取ってキスするくらいだと思ったら、いきなり監督から『このキスシーンではセックスをしてほしい』と言われたんです」

――…。

「目が点になってますね(笑)。すごい残酷なシーンなんですよ。あめ玉のかわいいキスシーンのはずが、すごく深い意味を持つキスシーンになったと思います。いい感じにキスしているわけではなくて、お互いに愛情のやりとりが、そのキスの中にありました。欲求がむき出しになっているような…こんなこと書けないかもしれないですよね(笑)」

――いやいや! 大丈夫です(笑)。

「でも、結局満たしてほしかったのは、愛されたかったということだと思うんです。愛の交換をしたかったというか、好きだという愛情表現をしてほしかったということが一つあると思っています。すごくその気持ちは分かるなと思うし、面白い視点だと思います。そういう私たちが思いもよらぬような、予想外なところから、この『それでも愛を誓いますか?』は問題提起をしてくる。そんなドラマになっていると思います」

――前回のインタビューでは、「このドラマがゼロからのスタートになる」とおっしゃっていました。これから先、プライベートでもお仕事でも、目標や挑戦したいことがありましたら教えてください。

「芝居ができていればうれしいです。求めていただける限り、何でも挑戦していきたいです。ファッションもやりたいし、ドキュメンタリーもやりたい。とにかく、できることならどんなジャンルでも。自分がやったことのないこと、できないと思っているようなことでも、なんでもやってみたいです。“できない”というリミッターを自分につけたくないんです。私自身もそうですけど、見ている皆さんが常に『この人面白いな』と思ってもらえるようなことをし続けたいなと思っています。そこにはいばらの道があると思うけど、やっぱり自分自身が楽しみながらどんどん更新し続けていられる人でありたいなと思います」

――ドラマ楽しみにしております! ありがとうございました!

ドラマ撮影がすべて終わった後に行われた今回の取材。取材時、ドラマについて話を伺うと、松本さんだけでなく同席してくださった山崎チーフプロデューサー、松本太一プロデューサーとも撮影時の話をお互いに確認しながら話をしてくださいました。その様子を見て、松本さんが取材中に口にした“ノーがない関係性”というのが垣間見えました。

写真撮影時にも「ついこの間まで撮影していたから、また戻ってきたみたい」「あぁ、ロスだなぁ」とドラマ撮影を振り返った思いを口にする一幕も。そんな松本さんの朗らかな雰囲気のおかげで、取材も終始温かいものとなりました。この先、物語はどう進んでいくのか、松本さん演じる純がどのように変わっていくのか、ぜひお見逃しなく!

【プロフィール】

松本まりか(まつもと まりか)
1984年9月12日生まれ。東京都出身。乙女座。B型。ドラマ「ホリデイラブ」(テレビ朝日系)をはじめ、「ブラックスキャンダル」(日本テレビ系)、「死役所」(テレビ東京)、「竜の道 二つの顔の復讐者」(フジテレビ系)、「妖怪シェアハウス」(テレビ朝日系)などに出演。「向こうの果て」(WOWOW)では、連続ドラマ初主演を務めた。現在放送中の「中居大輔と本田翼と夜な夜なラブ子さん」(TBS系)では、ナレーションを務める。また、ドラマ「東京、愛だの、恋だの」(Paravi)が配信中。

【番組情報】

「それでも愛を誓いますか?」
テレビ朝日
土曜 深夜2:30~3:00
ABCテレビ
日曜 午後11:25~11:55
※地上波放送終了後、TVer、GYAO!にて見逃し配信あり

取材・文/S・H(ABCテレビ担当) 撮影/尾崎篤志 ヘアメーク/板垣美和 スタイリスト/柾木愛乃 衣装協力/SHIROMA、ドーラ/ロードス、ダイアナ/ダイアナ 銀座本店
【協力店】
SHIROMA ☎03-6411-4779 中野区中野4-11-1 ブルンネ中野208号
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