青りんごの会(新潟市北区)が直営店をオープン、焼き菓子の販売を通して通所者の働きがい向上を目指す

店頭に並ぶスコーンなどの焼き菓子

指定障がい者支援施設青りんごの会(新潟市北区)は9日、同区大瀨柳に所在するサポートセンターの隣に、手作りのスコーンなど焼き菓子と生活雑貨を販売する直営店を新たにオープンした。施設通所者の働きがいを向上するとともに、買い物先の選択肢が少ない同地域への貢献も目指す。

顧客の顔が見える場が働きがいに通じる

中村優子氏と中村勉理事長

青りんごの会は1998年、旧・豊栄市公民館前に設立。養護学校卒業生の家族から「卒業しても働く場所がない」との相談を受けとことをきっかけに、焼き菓子を調理し、学校のバザーなどで販売することを通して、「働く場所」の創出をスタートした。

2008年には県指定の障がい福祉サービス事業所「サポートセンター青りんご」を現在の大瀬柳に設立。現在では30人以上が施設に登録しており、焼き菓子のほかにも、自家栽培の野菜や、マスクや髪留めといった手作りの布製品など、多種多様な商品を生産している。

新潟県庁の売店に並んだスコーン(2021年10月8日撮影)

これまで青りんごでは、新潟市や新発田市の市民病院ほか、県庁の生協、新潟ふるさと村(新潟市西区)などで展開する農産物直売所「わくわくファーム」に委託販売していた。しかし、商品を購入していく顧客の顔が直接見えないことから、通所者にとっては「自分たちが作った焼き菓子はどう流通しているのか?」「(繁忙期に注文が増えると)なぜ忙しくなるのか?」など、働きがいを感じづらい状況もあったという。

サービス管理責任者を務める中村優子氏は「これまでも委託先に納品に行くことはあったが、そこから先、お客さんがどんな楽しみを持って購入しているのか、という姿が見えない。特に、新型コロナウイルスの影響で地域のイベントなどへの出店も無くなっている」とコロナ禍で一層顧客との交流機会が減少している現状について話す。

直営店の外観

こうした現状を打開するため、青りんごでは直営店の開店を計画。それまで豊栄駅付近に所在した事務所と焼き菓子の工房をサポートセンター横へ移転するため、2020年に11月に施設を新設したが、その際に店舗として使えるスペースも確保。そしてこの秋、オープンの準備が整った。

直売店では、スコーンを中心に焼き菓子を提供。いちごやチョコ、紅茶を練りこんだ定番6種類に加え、マロンなど季節限定の味など特別な一品にも注目だ。

地域の持続可能性へ繋がる店舗に

手作りのマスク

前述の通り、青りんごではマスクや髪留めといった手作りの布製品から、自家栽培の野菜も生産している。特に野菜は、完全無農薬と生ゴミを再利用する有機農法が強みだ。これらに加え、直営店では今後、調味料や生活必需品なども順次販売していくことも計画しているという。

こうした多様な商品には、地域へ対する想いも託されていると青りんごの中村勉理事長は語る。「大瀬柳は地域内にスーパーやコンビニが少なく、近年では弊所の近所にあった地元の小売店も閉店の話が出るなど、買い物が困難な地域になっている。これからさらに高齢化も進むなかで、自動車の運転もできない人も出てくる。私たちがこの土地で活動するようになって、なにか地域に役立っていきたいと考えた」。

これまでにも青りんごでは、長野県の福祉施設が製造する石鹸を販売しているが、「地域の人々の生活に欠かせないモノ」としての存在感が強まれば、長野で石鹸を作る人も、販売を見る青りんごの通所者にとっても、さらに自分たちの活動が意義深く感じられるだろう。

また、近隣では農業者が多いことから農業用手袋の販売も検討するなど、既存とは異なる商品展開が生まれる可能性もある。

人と地域。2つの持続可能性を結びつけ、新たに挑戦を始めた青りんご。これまでの活動や商品、施設同士の横の繋がりに込められた意義と想いが施設と地域の間で循環し、今後さらに深化していくことが期待される。

【関連リンク】
青りんご webサイト

【グーグルマップ サポートセンター青りんご】

(文・鈴木琢真)

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