田原俊彦が現在も輝き続ける秘密:DOUBLE ‘T’ TOUR 2021【ライブレポート】  田原俊彦「TOSHIHIKO TAHARA DOUBLE ‘T’ TOUR 2021」大好評開催中!

TOSHIHIKO TAHARA DOUBLE ‘T’ TOUR 2021 “HA-HA-HAPPY” 始まる

唐突だが、「トシちゃんのライブに行く!」と知人友人に話すと概ね二つのリアクションがある。「トシちゃんってダンス凄いんでしょ?」「お客さんはやはり当時のファンばかりでしょ?」といったところだ。僕にとっても初めてのトシちゃんライブ。誰かが行くと聞いたならば同じようなリアクションをするだろう。

しかし、しかしだ。今年デビュー42年目を迎える稀代のエンターテイナー田原俊彦のステージと彼を包むオーディエンスの真摯なまでの眼差しを感じ取れば、「それは愚問だよ」と言わざるを得ない。

さて、『TOSHIHIKO TAHARA DOUBLE ‘T’ TOUR 2021 “HA-HA-HAPPY”』初日である。会場は、市原市市民会館。Jリーグ、ジェフユナイテッド市原・千葉のホームタウンにして、千葉県の中央部。ぶっちゃけ都内からは結構遠い。田園風景も垣間見られ、街道沿いにファミレスなどの飲食チェーンが立ち並ぶ地方都市だ。ここに鎮座する市原市市民会館大ホール。昭和の風情が残るゴージャスさを纏ったエントランスとフロア。コロナ禍の入場制限があるとはいえ、ファンが続々と入場してくる。適切な距離をとり、会話を控えめに。対策は完璧だった。

まず一番目の驚きとして、ファンの性別もタイプも多種多様だということ。もちろんデビュー当時からのファンと思われる品の良いご婦人もいれば、二十代、三十代ぐらいという若い女性ファンも多いし、意外なところでは、EXILEなどのダンスチームが好きなんだろうなぁと思われる男性ファンもちらほら見かける。40年のキャリアでホールクラスのツアーを敢行する大スターともなれば、懐かしさだけでは継続はままならない。常にファンを開拓し、新たな試みを追求し続けなければ、現役は続行できないと強く思い知らされた一幕であった。

オープニングナンバーは最新曲「夢幻LOVE」

ほぼ開演予定時刻、ブルーノ・マーズ「Runaway Baby」のSEが会場に鳴り響きバックバンドのメンバーが登場する。客席に揺れるペンライト。サックス、キーボードを含む5人編成は、ロックバンドのオーソドックスなスタイルだ。メンバーの奏でるミディアムテンポなリズムに合わせ主役が悠々と登場する。

その時の神々しさというか、観たものにしか分からないキャリア40年田原俊彦の絶対的な存在感がそこにあった。それは、バンドのメンバーの登場時の張りつめた緊張感も相俟ってそう思えたのかもしれない。

バンドの緊張感とは、田原の信頼感だ。MCによると、このバンドでもう20年ほどツアーを周っているという。田原のステージに一寸の失敗も許されない。エンターテインメントの極致を築き上げるといった気迫は、ステージを観た一瞬で気付くものがあった。

カメラ:西村彩子

オープニングナンバーは「夢幻LOVE」。6月にリリースされた最新曲で、このツアーのタイトルにもなっているシングル「HA-HA-HAPPY」のカップリング曲である。今、現在にこだわりこの曲をオープニングに持ってきた田原の気概もさることながら、ここで奏でられた「夢幻LOVE」はCDに収録された船山基紀アレンジのダンスチューンとは趣が異なり、ミディアムなテンポで重厚さすら感じさせてくれるものだった。

田原俊彦のパフォーマンスはエンタメ界の至宝!

シースルーのカッティングをあしらったオーバーサイズのセットアップという衣装で、絞った身体を泳がせながらのパフォーマンスを見ていると「トシちゃんって還暦?」というリアクションがいかに愚問かということが分かってくる。

矢沢永吉にしろ、松任谷由実にしろ、長きに渡り第一線で極めてクオリティの高い作品を打ち出し続けるアーティストたちにとって、年齢とは記号であり、年齢を超えたところにある感性や、常人には想像し得ない現状を突き抜けようとする精神性は、田原にしても同じである。

特に肉体を駆使し、今目の前にあるショーにすべてを賭けるといっても過言ではない刹那性を兼ね合わせたパフォーマンスは、長いキャリアの中で培われたエンタメ界の至宝だ。

カメラ:西村彩子

注がれる熱視線、コロナ禍に見たエンターテインメントの在り方

「堕ちないでマドンナ」「ひとりぼっちにしないから」というヒットナンバーが続く。コロナ禍の規制もあり歓声が一切聞こえない客席からはオーディエンスの熱視線がステージに注がれていく。

確かに普段のステージとは違った趣だろう。しかし、ステージへのレスポンスはしっかりと伝わっていた。MCで田原は言う。

「みんなの声は聞こえなくても、気持ちは伝わっていますよ。僕はテレビに育ててもらった人間だから…」

80年代は、田原をテレビで見かけない日はなかった。ベストテンやトップテンなどチャート番組の常連となり、スタジオのセットの中、ブラウン管の向こうの多くのファンのために全身全霊で歌い続けてきた人間ならではの言葉だと胸が熱くなる。

6曲目「チャールストンにはまだ早い」でダンサーチームが登場しステージは過熱してゆく。

このような観客のマナーも特筆すべき点のひとつだ。確かにコロナ禍でのツアーには賛否両論あるのかもしれない。しかし、入場制限からはじまり、完全対策を万全にした中、ファンの品格がこれを強固なものにした。それは、有事とも言うべき時期での新しいエンターテインメントの在り方を目の当たりにしたように思えた。

プロフェッショナルなパフォーマンスとファンとの距離感がステージ最大の魅力

80年代、90年代のヒットナンバーをバンドスタイルのアレンジに落とし込み、ライブならではのグルーヴを築き上げ、キャリアと共に磨きがかかったダンスで観客を魅了していく。「恋=DO!」「原宿キッス」「哀愁でいと」「抱きしめてTONIGHT」といった当時を生きた日本人なら誰でも知っている国民的ナンバーはメドレーで魅せる。なんと濃密な時間だろう。

計3回衣装チェンジ、2時間近くのステージで繰り広げられるマイケル・ジャクソン直系のダンスは圧巻だ。息が上がるなんてとんでもない。懐かしさではなく、今を歌う田原の姿からは、ダンスはショーのために、歌はショーのためにという唯一無二のステージを完成させるために欠かせないパーツとして一つ一つが一体化していくように思えた。

そんな完璧なステージの中でファンに寄り添った等身大のMCも絶妙だった。気取った印象は一切なく、今日食べた昼食の話など、何気ない話題で距離を縮めていく。また、そんなファンを信頼しきった距離感からはアットホームな雰囲気すら感じる。圧倒的にプロフェッショナルなパフォーマンスと、飾らない素のままで接するファンとの距離感。これが田原俊彦のステージ最大の魅力なのだ。

カメラ:西村彩子

アンコールは「HA-HA-HAPPY」まだまだ続く田原俊彦のロード

アンコールのラストは、現在注目度NO.1の「HA-HA-HAPPY」で幕を閉じた。

 かっこつけてよろしけりゃ あの世でもよろしく
 いいだろ?
 ヤンヤンヤンチャな人生
 行くぜふたたび誕生
 言わせて誇らしく
 そう 君がいるだけで最高

デビュー40周年を越えて、田原俊彦のロードはまだまだ続く。今回のツアーも通過点にすぎない。―― だけど、だけど、40周年という通過点にこんなシングルを出されたら、ファンもたまらない。なんともトシちゃんらしい現役続行宣言。もちろん、歌詞の中の「君」というのは、ファンひとりひとりだっていうことはみんな分かっている。そんな気持ちも十分に体感できる素敵なステージだった。

編集部より 2021年11月10日に予定されています東京国際フォーラムホールAでの『60th Birth Anniversary TOSHIHIKO TAHARA Double T Wonderland 2021』が、会場キャパ100%での開催が可能となりました。 詳しくは、田原俊彦 Official Siteをご覧ください!

カタリベ: 本田隆

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