三つ巴の戦いを制した4号車コルベットが3連勝。GTDクラスは予想外の結末に/IMSA第11戦

 10月8~9日、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第11戦『ミシュラン・GTチャレンジ・アット・VIR』がアメリカ・バージニア州のバージニア・インターナショナル・レースウェイ(VIR)で行われ、連勝中のコルベット・レーシングの4号車シボレー・コルベットC8.R(トミー・ミルナー/ニック・タンディ組)が今季3勝目を飾った。

 レースタイトルが示すとおり、今ラウンドはGTLMとGTDクラスを対象とした“GTオンリー”のイベントだ。美しい芝生のランオフエリアがコースの両脇に広がるVIRを舞台に争われるレースは8日(金)に両クラスの予選が行われ、GTLMでは4号車シボレー・コルベットC8.Rが、15台が参加したGTDクラスではターナー・モータースポーツの96号車BMW M6 GT3がポールポジションを獲得した。

 2時間40分で争われる決勝レースは現地9日(土)の正午過ぎ、曇天のウエットパッチが残るダンプ路面のなかスタートのときを迎える。例年と同様に“ミシュランマン”ことビバンダムのフラッグ振動で始まったレースは、直後のターン1でミルナー駆る4号車コルベットが濡れた路面に乗り失速。これを僚友ジョーダン・テイラーが見逃さず3号車コルベットC8.Rが首位を奪った。

 一方のGTDクラスではポールスタートの96号車BMW M6 GT3(ターナー・モータースポーツ)が首位を守り、2番手スタートの1号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo(ポール・ミラー・モータースポーツ)がこれに続くが、オープニングラップで4番手からひとつ順位を上げた39号車アウディR8 LMS(カーバーン・ウィズ・ペレグリン・レーシング)が序盤に兄弟車を攻略し首位を追跡する体勢に。
 
 この39号車アウディはスタートから52分過ぎに迎えたピットタイミングで、首位の96号車BMWをオーバーカットして一度は前に出るが、アウトラップで再逆転を許し直後にコースオフ。大きく順位を下げることとなってしまう。また、1号車ランボルギーニもオーバーカットで96号車の前を狙うが、こちらもアウトラップでポールシッターの先行を許した。GTLMクラスでは1回目のピット作業を終えて4号車が首位に返り咲く。

 スタートから1時間13分、代役として今戦66号車アキュラNSX GT3(グラディエント・レーシング)に乗り込んだマリオ・ファーンバッハーがタイヤバリアに突き刺さるクラッシュが発生。ただちにフルコース・コーションが宣言されセーフティカーが導入される。このタイミングで両クラスの上位陣が一斉にピットに入り、GTLMクラスは3号車コルベットが首位、GTDクラスは9号車ポルシェ911 GT3 R(パフ・モータースポーツ)がBMWを逆転してトップに躍り出た。

ビバンダムがスターターを務めるのは、ミシュラン・GTチャレンジ・アット・VIRでは恒例の風景だ
39号車アウディR8 LMSと1号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo
ポルシェ・タイカン ターボSのセーフティカー

■勝利目前のBMWを襲った悲劇

 また、序盤に後れをとった79号車ポルシェ911 RSR-19はこのタイミングでコルベット勢とのギャップを縮め、リスタート後には2番手に浮上。さらに3号車コルベットが周回遅れに引っかかった隙を突いてオーバーテイクに成功する。しかし、直後に4号車コルベットと接触。これによりコースオフを喫した79号車は3番手に交代、3号車とともにふたたびトップを追いかける展開となった。

 しかし、その後はアントニオ・ガルシア駆る3号車、ケビン・エストレのポルシェともにギャップを拡げられ4号車コルベットの独走を許す結果に。トップチェッカーを受けたタンディ駆るコルベットは、ラグナ・セカ、ロングビーチに続く3連勝を達成しポイントランキングで首位に立つ僚友ガルシア/テイラー組との点差を127ポイントに縮めている。

 GTDクラスではコーション明けからローレンス・ファントール駆る9号車ポルシェと“大ベテラン”ビル・オーバーレンの96号車BMWによる接近戦が続く。そんななか迎えた最後のピットストップで順位が変動する。9号車が給油とタイヤ交換を行ったのに対し、96号車はスプラッシュでコースに復帰し首位を奪還したのだ。

 これで勝負あったかに思われた。しかしフィニッシュまで残り11分、BMWはターン1で3号車コルベットと接触。イン側に入ったコルベットのスピンに巻き込まれるかたちでスピンを喫し、右リヤタイヤをパンクさせてしまう。万事休すとなった96号車は優勝目前から一転、失意のクラス12位フィニッシュに。

 一方、労せず首位を奪った9号車ポルシェは、後続の1号車ランボルギーニを2.755秒差で抑え切り今季5度目のクラス優勝を決め、首位に立っているポイントランキングでもリードを拡げている。GTDクラス3位には来季のGTDプロクラス参戦を発表しているバッサー・サリバン・レーシングの14号車レクサスRC F GT3が入った。今戦が最終戦となったGTDクラスを対象とした“IMSAウェザーテック・スプリントカップ”では、23号車アストンマーティン・バンテージGT3(ハート・オブ・レーシングチーム)のロス・ガン/ロマン・デ・アンジェリス組がタイトルを獲得している。

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の次戦第12戦はロード・アトランタで行われる最終戦プチ・ル・マンだ。11月11~13日に開催される10時間耐久レースには今戦では出番のなかったDPi、LMP2、LMP3クラスも加わり、全5クラスの混走となる。このレースでは小林可夢偉がアクション・エクスプレス・レーシングの48号車キャデラックDPi-V.Rで参戦する予定。また、今季限りでシリーズからの撤退を発表しているマツダ・モータースポーツにとっては最終レースとなる。

3号車コルベットを交わしてトップに立った79号車ポルシェと4号車コルベットが接触
79号車ポルシェはコース外に押し出される形となり失速。3号車コルベットにも抜かれ3番手に後退した。
パフ・モータースポーツの9号車ポルシェ911 GT3 R
ターナー・モータースポーツの96号車BMW M6 GT3
優勝した4号車シボレー・コルベットC8.Rのニック・タンディ(左)とトミー・ミルナー(右)
GTDクラスのポイントリーダーとして最終戦に臨むパフ・モータースポーツのザカリー・ロビション(左)とローレンス・ファントール(右)
非耐久レースを対象としたIMSAウェザーテック・スプリントカップのタイトルを獲得したハート・オブ・レーシングチームの23号車アストンマーティン・バンテージGT3

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