【明治薬科大学・越前学長】フォーミュラリの教育現場での活用を提唱/「同種同薬効の中で最善の薬剤を選択する過程を学ぶのに有用」

【2021.10.11配信】明治薬科大学学長の越前宏俊氏は10月11日、日本調剤が主催したフォミューラリシリーズ勉強会で講演し、フォーミュラリが薬学教育現場でも活用できることを提唱した。同種同薬効の多数の薬剤の中で、「患者に望ましい医薬品を1つや2つ選択するには薬価収載本やガイドラインでは足りず、フォーミュラリが有用」との考えを示したもの。

「“薬物治療教育フォーミュラリ”があってもいい」

明治薬科大学学長の越前宏俊氏は、北海道大学医学部医学科を卒業後、明治薬科大学教授、薬学科長などを経て学長に就任したが、医師として勤務している時に、標準治療のあり方に疑問を持っていたという。
「中には『私の治療』という本があるほど、医師の診療方針が尊重されてきた歴史があるが、一人の医師では患者数にも限りがあり、標準治療というのはあるべきではないかとの考えを持っていた」(越前氏)とする。

一方、薬学教育の現場で薬剤師を目指す学生に、同種同薬効の中で患者に最適な薬剤が選択できるかというとそうはなっていない現実があるという。
「例えば、『気管支喘息の患者に適した薬剤は』と質問すると、『●●です。保険収載もされているのだから合格点ですよね』と即答されることもある。これでは最善の薬剤の選択にはなっていないが、たしかに薬価収載医薬品集には記載があるし、ガイドラインにも記載はある。また現実的に医師の処方もさまざまだ。しかし、薬学教育では最善の薬剤を1つに絞るまではいかなくとも、1つか2つを答えられて、その理由について『こういうデータがあるからです』と答えられるまでにはなってほしい」と話した。

そのためには、何か参考指標になるものが必要であり、フォーミュラリが有用であるとの考えを示した。
海外の情報では日本の添付文書や薬価に合わない可能性もあるため、日本の経済性にも応えられるフォミュラリが有用だとした。

「病院フォーミュラリや地域フォーミュラリなど、フォーミュラリには冠が付くが、“薬物治療教育フォーミュラリ”なるものがあってもいいと私は思っている」(越前氏)。

実際の活用方法については、「最初から教科書的に示すと努力の経過が体験できない」として、教員が付随した情報に基づいて議論をリードしつつフォミュラリを示すことが考えられるとした。

日本調剤では、FINDAT(ファインダット)の名称で、医薬品情報(DI:Drug Information)の収集・評価を一元管理し、医薬品情報の標準化と効率化を支援するウェブプラットフォームを展開している。中立的に評価した国内外の各種ガイドラインやグローバルで信頼性の高い有料の二次情報データベースなどから、網羅的に収集した医薬品情報の配信や、実務に役立つ医薬品情報の提供を行う。原著論文の査読や新薬に関する情報収集など、DI 業務に係る負担が軽減され、対人業務やチーム医療の充実に貢献するとしている。
明治薬科大学では、2021年8月1日からFINDATを導入した。

日本調剤では、「2025 年問題が目前に迫り、2015 年度以降概算医療費が 40 兆円を超え続けている昨今において、高額製剤を含む医薬品使用の適正化を医療従事者自らで進めることが期待されており、その有効な手段の一つとしてフォーミュラリーが注目を集めている」と問題提起。その上で、「医薬品マネジメント手法として欧米を中心に導入が進んでいるフォーミュラリーは、わが国でも 2022 年度診療報酬改定に向けて議論がなされるなど、医療の効率化・医薬品使用の適正化の観点から本格的導入に向けての機運が高まっている」としている。

FINDATは作成手順を公開し、透明化。立案されたフォーミュラリーは、中立性を担保するために医師、薬剤師、看護師、弁護士などの専門家で構成する「フォーミュラリー検討有識者委員会」で厳正に審査されている。

現在、14日間の無料トライアルも展開しているという。
https://info.findat.jp/information/p804/

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