人気ドラマ「シグナル」がWEBマンガに!韓国のマンガ、アニメが今熱い

カン・プルの『純情物語』が05年に翻訳出版されて以降、ウェブトゥーンを日本語で読む機会も増えてきた。16年に出版された『未生 ミセン』は17年の文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。審査にあたったマンガ家の犬木可奈子からも「登場人物たちが時に負け、時に勝ちながら、囲碁の手を進めるように進んで行く物語の構成力が素晴らしい」と、高い評価を受けた。

13年4月には、NAVER WEBTOONと関係の深いLINEマンガが日本でのサービスを開始。韓国と同様にスマホやパソコンでマンガを楽しむ時代が本格的に到来した。

LINEマンガでは現在、「チーズ・イン・ザ・トラップ」、「女神降臨」、「わかっていても」、「Sweet Home」のほか「だから俺はアンチと結婚した」「私は整形美人」などの作品を日本語で読むことができる。

さらに16年4月からは、ウェブトゥーンを牽引してきたポータルサイトDaumを傘下に持つカカオの日本法人カカオジャパンが運営するピッコマのサービスも始まり、「六本木クラス〜信念を貫いた一発逆転物語〜」(ドラマ「梨泰院クラス」)、「もう秘書はやめます」(ドラマ「キム秘書はいったい、なぜ?」)、「ミョヌラギ~嫁期~」、「恋するアプリ」、「ナビレラ」といったタイトルが配信されている。

こうしたマンガアプリで紹介されている韓国発のウェブトゥーンは、登場人物の名前や地名などが日本向けにローカライズされていることが多い。

また、ピッコマでは、フルカラー、縦スクロールで読むマンガをウェブトゥーンではなく、スマートデバイス+カートゥーンの合成語である「SMARTOON」と呼んでいる。「マンガは雑誌で読む」が当たり前だった日本でも、韓国からやってきた新しいマンガ文化が定着し始めている。

ウェブトゥーンの映像化は映画やドラマといった実写版が先行していたが、徐々にアニメーションも制作されるようになった。こちらも先陣を切ったのはマンガ家カン・プルの作品で、05年に発表した同名マンガのアニメーション版『タイミング(原題)』が15年に封切られた。

また、20年には、身の回りで起きる奇妙で恐ろしい出来事をオムニバス形式で描いた「奇々怪々」(オ・ソンデ作)のエピソードを元にした長編アニメーション『整形水』が韓国で公開。

「美しくなりたい」という欲望に取り憑かれた人々の変貌をホラータッチで見せるこの作品はフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭や日本の新千歳空港国際アニメーション映画祭などでも上映され、9月23日からは日本で劇場公開が始まっている。

一方、ソン・ジェホとイ・グァンスが07年から19年にかけて長期連載したアクションファンタジー「ノブレス」は、16年に日本を代表するアニメーション制作会社ProductionI.G制作のオリジナルビデオアニメーション「NOBLESSE:Awakening」となり、20年にはテレビシリーズ「NOBLESSE -ノブレス-」(全13話)がTOKYO MXほかで放送された。

20年はそのほかにも、ウェブトゥーンのアニメーション化が続いた。不思議な塔の中に飛び込んだ少年の冒険を描く「神之塔」のテレビ・シリーズ「神之塔 Tower of God」は日米韓合作としてアメリカや日本でも放送。また、高校生たちの壮絶なバトルが展開される「ゴッド・オブ・ハイスクール」は「The God Of High School ゴッド・オブ・ハイスクール」というタイトルのアニメシリーズのほか、ゲームにもなっている。

男性主人公たちのアクションが見どころとなっているこれらの作品に対し、イオンの「スーパーシークレット」は、かなりのんびりした性格の大学生ウノと幼い頃から彼女を見守ってきた親友ギョヌの日常をパステル調の優しいタッチで描いた作品となっている。

二人の微笑ましいやりとりが中心だが、実はギョヌの一家は“人間ではない”という秘密を抱えている。20年5月に韓国で発表され、日本でも10月1日よりAmazonプライム・ビデオで配信が始まったばかりのアニメーション版でも、原作の特徴である温かみのある雰囲気がうまく活かされている。

「スーパーシークレット」アニメーション版は現在Amazonプライム・ビデオで配信中

韓国だけでなく世界各国の読者を楽しませるようになったウェブトゥーンは、映画、ドラマ、ゲーム、舞台といった二次的著作物を生み出し、掲載元である各ポータルサイトに大きな収益をもたらしてきた。

そのため現在では、「完成したウェブトゥーンを映像化する」という一方通行のやり方だけでなく、様々な方法でウェブトゥーンを中心としたコンテンツが作られている。

そんな中、Daumを傘下に持つカカオは、メガヒット作品を作るためのスーパーウェブトゥーンプロジェクトを19年下半期から開始。「恋するアプリ Love Alarm」シリーズや「梨泰院クラス」などのウェブトゥーン原作のドラマを、Netflixを通じて世界の視聴者に届けることに成功した。

また、日本でマンガアプリ「ピッコマ」を運営するカカオジャパンは、21年2月にSMARTOON制作を手がける子会社を韓国に設立し、国境を越えた共同作業を開始している。

さらには『スペース・スウィーパーズ』のように企画段階から映画とウェブトゥーンでの展開が計画されていた作品や、『新感染/ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督が自身の短編アニメーションをウェブトゥーン化した後に実写ドラマ化する「地獄が呼んでいる」など、これまでにない試みが続いている。

また、「シグナル」や「サム、マイウェイ〜恋の一発逆転!〜」といった人気ドラマをウェブトゥーン化するというニュースも聞こえてきた。

新しい形のマンガとして、映像作品の原作として、日本でも知られるようになってきた韓国発のウェブトゥーン。業界を牽引してきたNAVERとカカオという二大IT企業は、コミックスとキャラクターたちを出発点にグローバルな観客に向けた多彩な映像作品を生み出しているアメリカのマーベルスタジオを目標に事業を展開していると見られている。

ウェブトゥーンから始まる壮大な計画は、まだ、始まったばかりだ。


Text:佐藤結(ライター)

Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)

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