<金口木舌>世界で進む脱炭素と脱原発

 地球温暖化予測に関する研究で真鍋淑郎さんがノーベル物理学賞を受賞した。その研究は、国連の1990年の報告書に使われた

▼国連は世界の平均気温の上昇幅が産業革命前に比べ、2040年までに1.5度を超える可能性が非常に高いとする。異常気象や海面上昇の深刻化が懸念され、沖縄にも台風の大型化やサンゴの白化など温暖化の影響が迫る

▼各国は脱炭素を加速する。6年前、欧州を取材して驚いたのは再生可能エネルギーを主力電源に据えるという発想の転換。自然環境に左右されやすいため、日本では「不可能」と言われていた

▼欧州の一部では脱原発も進む。「もう原発はやめたほうがいい」。再エネ導入を進めるデンマークで担当相からそんな言葉を掛けられた。ドイツでは東日本大震災後、世論が高まり、脱原発を決めた。9月の総選挙の最大の争点は環境と気候変動対策。石炭火力発電廃止を掲げる「緑の党」が躍進した

▼翻って日本は化石燃料と原発に固執し再エネ導入が遅れてきた。政府が近く決める「第6次エネルギー基本計画」には、石炭火力の縮小と再エネの主力電源化がようやく盛り込まれた。ただ、原発再稼働が前提で、温室効果ガスの削減目標達成は「画餅」とも

▼今月末には日本も総選挙を迎える。議論を先延ばしにしてはならない。今の世代のツケを負うのは若い世代だ。

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