東彼杵中、役場庁舎… 劣化進む公共施設 人口減見据え 整備の議論活発化

2025年3月までの移転を迫られる東彼杵町役場庁舎=東彼杵町蔵本郷

 長崎県東彼東彼杵町で、老朽化する公共施設の整備を巡る議論が活発化している。役場庁舎は2024年度末までの移転を余儀なくされ、新築か既存施設への移転のいずれかで、年度内にも結論を出す。町立東彼杵中は校舎の劣化が著しく、早急な対応が求められる。他にも複数の公共施設で老朽化が進み、人口減少を見据えた持続可能なハード整備が課題となっている。
 現庁舎(蔵本郷)は1961年の建築で、85年に町長室や議会がある新館部分を増築した。2016年の熊本地震をきっかけに国が創設した補助事業を活用し、新築する案も出たが見送った。隣接する川棚、波佐見両町ではこの事業を活用して新庁舎建設を進めているが、東彼杵町は19年度に検討委員会を設置し、ようやく協議に入った。
 ところが昨年5月、県が耐震改修促進法に基づき、25年3月までの現庁舎の耐震診断か除却工事を命じた。急な“締め切り”に迫られた町は、教育センター分室(彼杵宿郷)の場所に新築する案と町総合会館(同)を増改築して移転する案とを比較検討。費用を新築の半分程度に抑えられる町総合会館移転案を最有力候補とした。
 庁舎の位置決定には議会の議決が必要となる。町議会は特別委員会を設置し、新築、移転両案について検討。年内に提言書をまとめる方針だが、新築案を推す声が強い。
 もう一つ、整備の先行きが取り沙汰されるのが、町立東彼杵中(蔵本郷)の校舎だ。1981年の建築で、内外壁で亀裂や剥離が目立ち、各所で雨漏りに悩まされる。8月中旬の大雨時には廊下の天井が崩落。図書室の天井からも水が染みだし、漏電防止のため蛍光灯を取り外した。正尾敏教頭は「夏休み中で大きな事故にはつながらなかったが、生徒たちの安全確保のため早急な対応が必要」と訴える。
 同校は2年前に彼杵中、千綿中の両校を統合し、旧彼杵中の校舎を流用する形で新設したが、その際、大規模な改修はされなかった。統合が前年度の9月に議会で可決され、急ピッチで進められたからだ。
 統合に伴う町教委の提言には「5年をめどに場所を検討し、新校舎の建設を目標とする」とあったが、岡田伊一郎町長は「昨年の町内の出生数は27人。今後も確実に少子化が進む中、学校の新築は現実的ではない」との認識を示す。今年7月、町教委が保護者約400世帯に整備方針を尋ねたアンケートで、現在の校舎の大規模改修を希望する意見が最も多く、別の場所に新築を望む意見が15%程度だったことも判断材料に挙げた。今月8日の臨時町議会で、急を要する校舎の防水工事費を可決。次年度以降も順次改修を進める考えという。
 町税財政課によると、町内の公共施設は高度経済成長期に建てられた築40年前後の建物が多く、老朽化による更新時期が重なっている。こうした施設の状態を判定し、長寿命化の優先順位を決める「個別施設管理計画」の策定も進めている。計画を基に行政サービス機能の集約化を図り、今後40年で現在の施設数より25%削減する目標だ。

雨漏りの影響で劣化が進む校舎の天井=東彼杵中

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