「80歳から運用は無謀?」子どもに少しでも多く残したい女性にプロのアドバイスは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、80歳の女性。現在、85歳の夫とともに年金暮らし。48歳の子どもに、少しでも多くの財産を残したいと、投資をしたいと言いますが……。プロの意見は? FPの伊藤亮太氏がお答えします。

80歳からの投資は無謀でしょうか? 子どもに少しでも多く遺したい、この年齢からの資産運用のポイントを教えてください。

定年後、証券マンに勧められた株やREITなどで失敗した経験がトラウマで、積極的に運用して増やすよりは、減らさない事を最優先に暮らしてきました。前は、預金利息が高いところに預け替えたりはしていましたが、ここ10年程は特定の銀行に預けたままです。国内株も保有していますが、含み損50%の状態です。

ローンや借金はなく、贅沢をしなければ、この先に介護が必要になっても、子どもに迷惑をかけずに寿命を迎えられる目途が立っています。今更ですが、貯金をただ寝かせておくのであれば運用して少しでも増やして子どもに遺せればと考え始めました。

インデックス型の投資信託を検討しています。寿命を考えると、若い世代に勧められているような細く長い積立投信は無理だと思います。一気に買うほうが良いのか、もしくは各月や数カ月毎にある程度まとまった金額で2~5年の短い期間設定が良いのか、または、やめておくほうが良いのか等々、 ご指南ください。

また、保有株式についてもアドバイスをお願い致します。損切りして現金化し、貯金か投資信託にまわすほうが良いでしょうか。高値で買って放置してしまい、日経平均が上がっている昨今ですら殆ど株価が動かないような需要の乏しい銘柄ばかりで、更に株価が下がりタダ同然になってしまうのではないか、このまま子どもに遺しても困るだろうか、と心配です。

時すでに遅しかもしれませんが、プロのご意見を頂けたらと応募しました。宜しくお願い申し上げます。

【相談者プロフィール】

・女性、80歳、無職、既婚

・同居家族について:夫(85歳)。夫婦とも定年退職後、年金生活。年相応の不調はあるが現在のところ自分達で衣食住を賄えている

・子ども:1人(48歳)

・住居の形態:持ち家(戸建て・関西)

・毎月の世帯の手取り金額:40万円(年金)

・毎月の世帯の支出の目安:約15万円

【毎月の支出の内訳】

・食費:5万円

・水道光熱費:1万円

・保険料:1万円

・通信費:1万円

・車両費:1万円

・お小遣い:2万円

・その他:約3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:約25万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):3,000万円

・現在の投資総額:2,000万円

・現在の負債総額:なし


伊藤:ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太です。回答いたします。

まず、現状からいって投資をする必要はないと思います。とはいえ、少しでも増やして子どもに遺したいという気持ちも分かります。しかしながら、これまでの失敗談も含めると、何もしないという選択肢が一番良いのではないかと思います。

これだけ日経平均株価が上昇しても大きく損失をしているということは、中小型株に投資されたのかな? と想像します。いずれにせよ、損は損と諦めて、売却して現金で置いておいたほうが、お子さまにとっては楽だと思います。

親から受け継いだ株式は現金化しづらい…

以前、同じようなお客様がいらっしゃいました。その方は親から遺産として株式を引き継いだというものです。親から受け継いだ株式だから売るに売れない。そのまま持っていたらどんどん株価は下がる一方。これではお子さんも精神的によろしくありません。

そこで、損は損と割り切って現金化することが一番良いのではないかと思います。もちろん、お子さんに聞いてみるのもありだと思います。現金のほうがよいとおっしゃるような気もします。

今回のご相談者様は、年金も非常に多く、十分暮らしていける生活です。毎月の貯蓄をコツコツしていくだけでも、今後資産は増えると思いますから、無理をされないほうがよろしいと思います。

積立投資は若い世代に向いている

なお、ご相談者様のおっしゃるとおり、若い世代向けの積立投資も中長期的な視野に立ったものですから、なかなか大変だと思います。仮に投資するならば短期での投資が視野に入りますが、昨今の政治・経済情勢から見てどんなことが生じてもおかしくありません。何かの拍子に株価が上がることもあれば下がることもあります。そうしたことに楽しみを持つのであれば別ですが、そうではなく着実に増やしたいのであれば、株式や投信はやめましょう。

FPからの、リスクを取らない提案は?

そこで提案です。まずは損切りを含めて投資は減らしていく。そして、単なる預貯金では面白くないでしょうから、宝くじ付き定期預金や懸賞金付き定期預金で預けることを検討してみてはいかがでしょう。これは定期預金で預けることで、宝くじがもらえたり、懸賞金が当ったりする可能性があるものです。

もちろん、当たるかどうかは運として、仮に全部外れても損失は発生しません。また、利息ももらえますから、通常の定期預金同様に多少は増えます。宝くじがもし当たれば、夢が広がりますよね。こうした定期預金の活用をされてみてはいかがでしょうか。

貴金属を資産の5%程度保有するのもあり

80代になりますと、次の世代へのバトンタッチを皆考えることでしょう。もう無理は禁物です。しかも現状からしてまったく無理する必要もありません。もしそれでも投資したいというご希望があるのであれば、損切り、定期預金の他に、貴金属を少しお持ちになるのはよいかもしれません。

今後産業用の需要が増加する可能性がある、プラチナ、銀なども投資対象になりえます。まだまだコロナが落ち着かないという場合は金も投資対象となるでしょう。こうした貴金属の良いところは、手元に置いておけること。万が一世界情勢が不安定になった場合も対応できること。田中貴金属など様々なところで金やプラチナは購入できます。貴金属であればお子さまも困らないと思います。手元にある安心感も得られますしね。

現状の資産の5%程度と考えると、200~300万円ぐらいは持っておいてもよいかなと考えます。例えば金100万円、プラチナ100万円、銀50万円といった具合に保有されてはいかがでしょうか。

まずは損切りと、投資を極力減らすことから

以上、三つの視点をご考慮ください。まずは損切り&投資は極力減らす。次に宝くじ付き定期預金などを検討する。少しは何かあった場合の備えとしても貴金属で持つ。減らしたくないのであれば宝くじ付き定期預金までにする。そしてたまには旅行したりおいしい物でも食べたりして、人生を満喫されるとよろしいかと思います。

© 株式会社マネーフォワード