待遇改善を、戻らぬ客… コロナ禍中の衆院解散、総選挙へ 長崎県民の思い

絵本の読み聞かせをする保育士。新型コロナ感染に気を付けながら園児と触れ合う=長崎市滑石5丁目、滑石保育園

 新型コロナウイルス禍で一変した社会。長崎県民はこの1年半の政治をどう捉え、何を望むのか。衆院は14日に解散、間もなく総選挙が始まる。「現場の苦労を知って」「選挙で何が変わるの?」-。さまざまな視線が政党や立候補予定者に注がれている。
 「お客さんを戻すのは簡単ではない。外食は生活に必須とまでは言えないからかな」。長崎市新大工町で「caffe grato」を営む井上正文さん(44)はため息をつく。以前はランチやティータイムを中心ににぎわっていたが、外出自粛の風潮が定着し客は減った。
 立候補予定者に対し「夢のある公約もいいが、実現可能なものを掲げてほしい。収入が減った人全体をサポートする制度を拡大して」と注文する。
 滑石保育園(長崎市)の保育士、山田万裕美さん(36)は園内の手すりや玩具などをくまなく消毒し、園児の体温・体調チェックをするなど感染対策で仕事量が増えた。「常にマスク姿。子どもとのコミュニケーションが難しくなった」こともやるせなく思う。
 3人を育てる母でもある。早起きして家族の晩ご飯を用意して出勤するなど毎日フル回転だ。ニュースを見る暇もないが、コロナ禍をきっかけに政治への関心は高まった。「候補者に保育士や子育て世代の大変さを知ってほしい」と支援を訴える。
 北松佐々町の女性看護師(42)は、感染疑いのある患者に対応し「心理的負担が大きくなった」。発熱などの症状がある場合、行動歴を確認してPCR検査をすることも。患者から「差別だ」と怒りをぶつけられたことも何度かあった。
 政府のコロナ対策には「本当に専門家の意見を聞いているのか」と疑問を抱く。首相よりも、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長の発言の方が、納得できることが多かった。野党も政権批判に終始していた印象で「選挙をしても、何も変わらないんじゃないか」と厳しい視線を向ける。
 受験生だった昨年を思い出し、「精神的に辛かった」と語るのは宮城県出身の長崎大多文化社会学部1年、鈴木翔さん(19)。昨春の全国一斉休校で数カ月間、高校の授業も部活もなくなった。課題のプリントが自宅に郵送され、解いて送り返す日々。同じ宮城県でもオンラインを活用できる地域もあり、「休校で教育に格差が出た。対策が必要」と感じた。
 感染対策と経済の回復を同時に進めようとする政策を疑問視する。この1年、数カ月おきに繰り返された感染拡大の波。「まずはしっかり抑え込み、中長期的なビジョンで経済の回復を目指すべきではないか」


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