阪神はなぜ失策が多いのか? データで浮き彫りになる守備力だけではない原因

阪神・矢野燿大監督【写真:荒川祐史】

甲子園では56試合で42失策、本拠地の守備の難しさも…

2021年のペナントレースも残りわずか。セ・リーグではヤクルトが優勝へのマジックを6に減らし、優勝へと近づいている。終盤まで首位を守っていた阪神は9月22日に2位転落し、2.5ゲーム差で追いかける苦しい状況となっている。

今季の戦いで気がかりな点の1つと言えば、エラーの多さが挙げられる。135試合を消化した段階で、84失策はリーグ最多。2018年から4年連続で失策はリーグワーストを記録しており、守備力の向上は積年の課題だったが、改善しきれなかった状況が浮き彫りになった。

ポジション別で見れば、遊撃手の中野拓夢が17失策、外野手ではサンズが7失策でポジション別リーグワーストとなっている。一塁のマルテ(7失策)、二塁の糸原健斗(6失策)、三塁の大山悠輔(10失策)はリーグ2位の多さだ。

セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータを基に検証してみると、守備全体の貢献を表す「UZR」は、チーム全体で-31.5となっており、DeNAに次ぐ低さ。12球団トップの楽天が24.9、セ1位の巨人は20.2となっており、大きな差ができている。

本拠地・甲子園は12球団で唯一、内野が土のグラウンドだ。天然芝や人工芝に比べてイレギュラーなどが起こりやすく、守備に難しさがあるのは事実。今季は甲子園で56試合で42失策、その他の球場では79試合で同数の42失策。選手個々の守備の拙さもあるだろうが、本拠地の守備の難しさが影響しているのも否めない。

さらに細かく見ていくと、失策が増えるのは、投手陣の特徴が影響していることも浮かび上がってくる。

阪神・伊藤将司、西勇輝、青柳晃洋(左から)【写真:荒川祐史】

エラーの多さに繋がる投手陣の特徴とは…

その特徴とは、投手陣の奪三振の少なさだ。今季、投手陣は4980人の打者と対戦し、奪った三振は924個。これは12球団で最も少ない。首位のヤクルトは阪神よりも少ない4852打者と対戦して、リーグトップの1054三振を奪っている。奪三振割合を示す「K%」は17.1%で、リーグでは広島に次ぐ5位となる。

阪神には“打たせて取る”タイプの投手が多い。9回で奪う三振割合を示した「K/9」で見ると、規定投球回に到達している青柳晃洋が6.11、西勇輝は5.95と6個前後。ルーキーながら8勝をマークする伊藤将司も5.01と高くない。リリーフ陣を含め、今季10試合以上登板している投手で「K/9」が9を超えるのは2人だけ。ヤクルトは9人と、差は明らかだ。

さらに言えば“ゴロ投手”の傾向が強い。先発、救援ともに打球のゴロ割合は12球団でトップ。投手陣全体でのゴロ割合は50.1%となり、12球団で唯一、50%を超える。阪神は野手の元に打球が飛ぶ回数、つまり守備機会が多くなるチームであり、かつ、ゴロが多い球団ということだ。

ゴロの処理が多球場に比べて難しい甲子園を本拠地としている上に、投手陣の特徴としてゴロが多くなる。そして選手個々の守備力と、阪神の失策数が増えるのはさまざまな要因が絡んでいると言えそうだ。(Full-Count編集部)

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