TEAM MUGENがもてぎを席巻。ルーキー大津がSF初優勝&野尻が初タイトルを獲得【第6戦もてぎ決勝レポート】

 2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の決勝レースが栃木県のツインリンクもてぎで開催され、3度もセーフティカー(SC)が入る、稀に見る波乱のレースとなったが、ポールポジションからスタートした大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)がトップチェッカーをくぐり、ルーキーイヤーで初優勝を飾った。注目のチャンピオン争いは、3番手からスタートした野尻智紀(TEAM MUGEN)が一時8番手まで順位を下げたものの、力強い走りで5番手までポジションを取り戻し、最終戦を残してドライバーズタイトルを獲得した。

 悪天候が予想されていた決勝日のもてぎは、予報どおり朝から雨に見舞われた。またこの日は全国的にも冷え込みが強まっており、もてぎも凍えるほどの寒さでスタート進行が始まる。14時からのウォームアップ走行が始まったときにはすでに雨は止んでいたが、コース上は乾くことなく、全車がウエットタイヤを装着し、気温14度、路面温度17度という非常に低いコンディションで35周の決勝レースがスタートした。

 抜群の蹴り出しを見せたのはフロントロウの山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)で、大津よりもわずかに先に1コーナーに侵入。ただ大津もアウト側からしっかりと食らいつくと、大外刈りで山本をとらえてトップのポジションを死守した。3番手の野尻はポジションをキープして1コーナーをクリアしていったが、関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)はややアウト側にはらみコース外に飛び出してしまう。

2021スーパーフォーミュラ第6戦もてぎの決勝レーススタート

 続く3コーナーで目の前の山下健太(KONDO RACING)を攻略した阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)が、5コーナーで野尻もパスして3番手に浮上。野尻は阪口とのバトルの際に片輪をダートにはみ出してしまい、その間に背後の山下と関口が接近、4台パックで130Rに侵入していく。4台のバトルは山下が先頭で抜け出ると、阪口、野尻、関口の順に。なんとか関口を押さえていた野尻だったが、90度コーナーでイン側をさされ、さらに後退。2周目の3コーナーではオーバーテイクシステム(OTS)も使いながら牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が野尻をパス。野尻はスタートから2周で8番手までポジションダウンしてしまった。

 スタートから数周が過ぎると、レコードライン上の水もなくなりはじめ、タイヤを冷やすために水のある場所を選んで走行するドライバーも出てくるが、そんなタイミングでいち早くスリックタイヤへの交換に入ったのが小林可夢偉(KCMG)だった。予選ではQ1でまさかのクラッシュを喫し、決勝レースを18番手からスタートした小林だが、抜群のスタートダッシュでオープニングラップでは9番手まで浮上。その後13番手まで後退した8周目に真っ先にピットインし、スリックタイヤへと交換した。これを見てか、翌周は山下、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)、宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)がスリックタイヤへと交換。しかし、宮田はコース復帰直後の1コーナーでオーバーシュートしてしまい、フェネストラズは5コーナーでスピンし、マシンを停めてしまった。

 先頭を走る大津が11周目に入ったところで、フェネストラズのマシンを回収するためにセーフティカー(SC)が入り、このタイミングで多くのマシンがスリックタイヤへとチェンジ。ステイアウトを選択した山本と福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、平川亮(carenex TEAM IMPUL)が上位3台に並んだ。フェネストラズのマシンは自力でコース復帰に成功し、13周目にレースが再開するが、いまだウエットタイヤの上位3台は、暫定4番手の大津に対しタイヤ交換分のマージンを築くべくフルプッシュを見せる。

 ただし、すでにタイヤが温まり始めた大津もペースアップし、14周目の山本と大津の差は9秒までしか開かなかった。この状況で、福住が山本、平川よりも先にピットインするが、右リヤタイヤの交換で大幅なタイムロス。上位争いから脱落することになってしまった。山本と平川も福住の翌周にタイヤ交換を済ませるが、すでにペースを取り戻していたスリックタイヤ勢の多くに先行されてしまった。

 17周目、タイヤ交換を済ませたばかりのタチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)が2コーナーでクラッシュし、このレースで2度目のSC導入に。20周目にリスタートが切られるが、ここで小林とポジション争いをしていた坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)が3コーナーでコースオフ。さらに、後方にいた山本と平川の2台がそれぞれ3コーナー付近でストップし、リスタート直後で3台が姿を消す波乱となり、再開直後ながらこの日3度目のSCが導入されることになった。

 レースの折り返し地点を迎え、生き残っていたのは14台。坪井、山本、平川の3台の車両回収にはやや時間が掛かったが、26周目にリスタートが切られる。この時点でトップを走るのは大津。その背後に阪口、牧野、関口、野尻、松下信治(B-Max Racing Team)と続いていた。上空は徐々に明るくなり、このころには路面コンディションも回復。残り10周で上位6台がパックでポジション争いを展開し、ワンミスが命取りになる緊迫した戦いが続いた。

 そのなかで、まずは阪口が大津に接近。OTSを使って28周目の3コーナーで大津に並びかけたが、大津は冷静なブロックで応酬する。同じタイミングで牧野と関口の3番手争いも白熱。関口はOTSを使い終わったばかりの牧野に襲い掛かり、3コーナーでイン側から鋭く切り込み逆転。さらに、大津を攻略できなかった阪口に近づいていった。関口はなんとか阪口をとらえようとするが、33周目の最終コーナーで止まり切れずにコースオフ。これで後方の牧野が関口に並びかけ、3コーナーまでの争いで牧野が前に出る。野尻が5番手にいるこの時点で、優勝すればタイトル争いの望みを最終戦につなげられる関口だったが、これでタイトル争いも決着となった。

 トップの大津は残り4周からファステストラップを連発して2番手以降とギャップを築きトップチェッカー。ルーキーイヤーでスーパーフォーミュラ初優勝を飾った。2位の阪口は第2戦オートポリスに続き自己最高位タイ。3位に牧野が続き、勢いある若手ドライバーが上位3台を占める結果となった。また、自身初のシリーズタイトル獲得がかかっていた野尻は5位でフィニッシュ。関口が4位となったことから、最終戦を残してホームコースでもあるもてぎでの初戴冠を成し遂げた。

2021スーパーフォーミュラ第6戦もてぎを席巻したTEAM MUGEN。左から野尻智紀/田中洋克監督/大津弘樹
2021スーパーフォーミュラ第6戦もてぎ 野尻智紀(TEAM MUGEN)

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