文化と選挙

 新型コロナの影響で2年ぶりとなった県内最大の美術公募展「県展」は、長崎、佐世保会場に続き21日からは諫早市美術・歴史館で開かれる。コロナ禍の中での創作活動とあって内向きな作品が多いのではと思っていたが、各作品からは例年以上のパワーが感じ取れた▲例えば知事賞では、岩礁に砕け、うねる波を描いた日本画、希望や生命力といったイメージが広がる洋画など、重苦しい状況を押し返すしたたかな力強さがにじみ出ていて、引きつけられる▲経験のない鬱屈(うっくつ)とした困難が広がり、今後もこの世界がどうなるのか分からない。特に文化の分野は日本では不要不急とみられ、隅に追いやられた状況もある。だが文化は人間の精神を支えてくれる。展示された書や写真、彫刻などは心にひとときの潤いをもたらし、率直に励まされた。開催されてよかったと思った▲衆院選の公示があすに迫っている。岸田政権は発足して間もないので期待値を測ることになるが、検証するならば安倍、菅政権のコロナや経済、福祉、五輪などの対応ということになる。同時に疲弊した文化の分野についても点検したい▲郷土芸能や地域行事なども含め日本全体と地方の文化をどう支え、引き継いでいくのか。この視点でも候補者や政党の素養や懐の深さが見えてくるはずだ。(貴)

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