審判職をロボットに奪われる? リクエスト導入でジャッジ精度浮き彫り

審判も人間(ロイター=USA TODAY Sports)

【広瀬真徳 球界こぼれ話】2018年から日本球界に導入された「リクエスト制度」。運用開始から今季で4シーズン目ということもあり、今では試合中に微妙な判定があるとルールに基づきリプレー検証が行われる。おかげで制度導入前に比べ誤審は激減。グラウンド内での選手、首脳陣による審判団への激しい抗議などもめったに見られなくなった。これは球界にとって良いことだろう。

ただ、その一方で気になるのが審判のジャッジ精度。明らかな凡ミスや見落としが昨今の試合で激増しているからだ。

顕著だったのが今月9日に札幌ドームで行われた日本ハム―ロッテ戦。日本ハムが微妙な判定に対し試合中に3度リクエストを要求したのだが、すべての判定が覆った。映像を見る限りいずれもセーフかアウトか際どいプレーではあった。それでも、審判が事前に立ち位置や見る角度を少し変えていればリクエスト要求前に正確なジャッジを下せたのではないか。

9月30日にZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ―オリックス戦も同じ。ロッテ2点リードの9回二死一、三塁からオリックス・T―岡田が右翼席に起死回生の逆転3ランを放ち、ダイヤモンドを一周した直後の場面だ。ロッテの井口監督が「一塁ベースを踏んでいなかったのでは」と審判団にリプレー検証を要求。球場は一瞬にして不穏な空気に包まれた。

決定的な映像がなかったのか、数分間の検証で判定は覆らず結果的に逆転3ランは認められた。だがこのケースも審判団の誰かが一塁ベースを注視していれば、球場を騒然とさせることはなかったはず。井口監督も責任審判や塁審がベースを踏んだかどうかの確認行動を取っていれば、わざわざリクエスト要求はしなかっただろう。

いくら訓練されているとはいえ審判も人間。判断を誤ることはある。ましてや数時間に及ぶプロ野球の試合。各審判が全プレーに神経を集中させることは不可能に近い。選手や首脳陣、ファンもその点は理解している。ただ、審判という職は精度の高い判定を下せるからこそ威厳や権威が保たれる専門職であることも忘れてはいけない。

一般社会でAI(人工知能)化が進む中、米独立リーグの一部では球審が測定器から送られてくる判定をコールする“ロボット審判”がすでに導入されている。日本球界でも判定ミスが続発すれば、ロボット化の波は押し寄せるだろう。権威や威厳だけでなく職域を守る意味でも現場の審判にはいま一度、精度の高い判定を心がけてもらいたい。

☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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