衆院選 長崎4区 自民公認争い 首長ぎくしゃく… 関係修復急ぐ北村氏

平戸市長選で当選を確実にした黒田氏(中央奥)の隣であいさつする北村氏(右奥)=17日、同市内

 自治体トップの多くは、政権与党との関係を重視する。衆院選で自民党前職が出馬すれば、温度差はあれど支持する首長が少なくない。だが長崎4区では、8選を目指す北村誠吾氏(74)が瀬川光之県議と公認を巡り激突、公示直前にようやく党本部裁定で勝ち取った。地元首長の間でも、瀬川氏の応援に回り北村氏とぎくしゃくしたり、支援表明が遅れたりと混乱が広がった。
 17日午後9時半ごろ、平戸市中心街の広場。市長選で4選を確実にした黒田成彦氏は、支持者らと喜びを分かち合っていた。その空気が一瞬張り詰めたのは、後方の暗闇にぽつんといた北村氏がスタッフに促され前に出た時だった。「素晴らしい才能を持った方。今後もともどもに仕事をさせていただきたい」。北村氏は黒田氏をこう持ち上げた後、握手を交わす程度で立ち去った。
 黒田氏は自民党県議から市長に転じ、現在も党県連顧問を務めている。当然これまでは北村氏を応援してきたが、今回は違った。北村氏の閣僚時の不安定な国会答弁などを理由に、瀬川氏を推す声が組織内から噴出。黒田氏も「公認は現職優先」とする党本部見解に疑問を呈する文書を県連へ提出し、市政運営で北村氏が「阻害要因」となった事例も挙げた。
 それでも北村氏は自ら乗り込んで“和解”を持ち掛ける格好を取った。自民関係者は「関係修復を急ぎたいのだろう」とみる。
 「公認決定の経緯には疑問がある」としていた黒田氏。だが当選翌日の18日、記者に問われると「市長選では自民党の推薦を受けた。党の議席を守るために協力する」と強調した。ただ、その表情にはもどかしさがにじんでいた。
 これまで北村氏の選挙運動を全面的に支えてきたのは、佐世保市長を4期務める朝長則男氏の後援会。大票田で強い組織力を持つ。朝長氏も自民党県議出身だが、今回は情勢を見極めるためか、「党本部が最終的に公認を出した方を応援する」と発言。公認発表までは動きを見せなかった。
 公認発表翌日の16日、朝長氏の後援会スタッフが北村氏の活動にようやく加勢。「本番までの時間はないが、やるしかない」と言葉に力を込めた。
 17日の北村氏の事務所開きに黒田氏は姿を見せなかったが、朝長氏のほか、4区内の西海市と北松佐々町の首長が同席。北村氏陣営によると、旧民主党出身の松浦市長も前日までにあいさつに訪れた。
 一方、4区で立憲民主党新人の末次精一氏(58)の支持を表明した首長はいない。末次氏は取材に「個人の判断。どうこういう話ではない」と気にするそぶりを見せない。

© 株式会社長崎新聞社