電動カート使ってオールドタウン再生探る 綾瀬で実証実験

実証実験で使用する7人乗りの電動カート=綾瀬市綾西4丁目

 低速走行で小回りが利く電動カートを使った国土交通省の実証実験が17日、綾瀬市郊外の住宅地で始まった。高齢者の新たな移動手段の確保を目指す住民団体の取り組みが評価され、対象に選定された。オールドタウンの再生手法を探る試みで、来年3月まで定時運行などを続け、効果や課題を検証する。

 実証実験の運営を担うのは「綾西みんなの足」。昭和40~50年代に大規模開発された綾西地区の住民有志が2019年3月、高齢者の外出支援を目的に発足させた。

 同市には鉄道駅がなく、海老名市に隣接する同地区の住民は、主に海老名駅に向かう路線バスを通勤・通学の足にしてきた。約3670人が暮らし高齢化率が4割を超える中、高齢住民に既存の路線バスやコミュニティーバスに接続する新たな移動手段が求められているという。

 同団体は、綾瀬市のワンボックス車(10人乗り)を借りて商業施設や新型コロナウイルスのワクチン接種会場への送迎サービスなどを実施。電動カートの機能性にも着目し、20年10月に試乗会を開催して導入に向けた検討を進めてきた。

 今回、こうした住民主導の活動が国交省の目に留まった。全国各地で顕在化している、オールドタウン化した郊外住宅地の再生技術開発を目指す実証実験の対象に選ばれたという。

 提供された電動カートは全長約4メートルの7人乗りで、最高速度は19キロ。広さ44ヘクタール、高低差約30メートルの住宅地内の生活道路を中心に三つの巡回ルートを設定し、午前10時~午後5時に定時運行する。今回、実験に参加する運転手と介助員も募集した。

 実証実験は、10月19日~11月が時間と停留所を決めて週3日間の運行。買い物帰りの利用者はできる限り自宅近くまで送る。12月~来年2月は市役所や図書館、病院などへ地区外にルートを拡張。2~3月に利用者の意見を集約して利便性などを確認する。

 10月17日は拠点となる綾西バザール商店街で出発式を開催。試乗した古塩政由市長は「開放的で乗り心地が良い」と感想を述べた。

 同団体の代表は「電動カートは試乗会でも、利用者の顔が見えやすいなど、車内外でコミュニケーションが取りやすく好評だった。利用率や目的などを調べ、導入に向けてステップアップしたい」と話している。

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