【くろしお】家族型経営の林業

 先月の台風14号に伴う大雨で発生した宮崎市内海の大規模な土砂崩れで、国道220号とJR日南線の寸断が続く。通勤や通学、病院への通院などで日常生活への影響は深刻だ。一刻も早く復旧を進めたい▼今回の被害は局地的だったが、険しい山間部の多い本県では、土砂災害がどこで発生してもおかしくない。災害に強いインフラ整備とともに自然のダムとなる森林を保全する必要性を痛感する。だが山主の高齢化や後継者不足で、荒れた山林が目立つのが現状だ▼森林を守る林業を語る時「自伐型林業」という言葉を最近聞く。小型機械で細い林道を開き、環境保全に配慮しながら採算性に見合う分だけ間伐する家族型の経営だ。100年先まで見据えた山林育成が特徴。大規模事業者が50年生ほどの木を皆伐する方法とは対極的だ▼小規模な自伐型林業は国連がSDGs(持続可能な開発目標)を達成するために定めた「家族農業の10年」(2019~28年)の趣旨に沿う。「延岡自伐型林業研究会」が昨年に延岡市で実施した見学会では、県内外から11人が参加。山村暮らしに興味を持つ都市住民を中心に関心が高まっている▼ただ、いきなり家族で農村部に移り住んでも林業を習得するのは難しいはず。市町村が人口減対策の一環として、研修から販売先の確保、兼業先まで案内をしてはどうか。移住促進と森林管理による防災がリンクすれば、山村振興の魅力的なモデルになろう。

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