第33回 なぜ「ミルクはいらない」と言ったのにミルクが運ばれてくることがあるのか?

煩悩放出 〜せきしろの考えたこと〜

喫茶店でコーヒーを注文すると、店員に「ミルクはお付けしますか?」と訊かれる時がある。私はブラックで飲むから不要であることを伝えるのだが、なぜかコーヒーと一緒にミルクが運ばれてくる時がある。たしかに伝えたはずなのになぜ目の前にミルクがあるのかいつも不思議になるのだが、それ以上は考えることはなかった。なぜなら特に困らないからだ。

喫茶店でコーヒーを頼むようになってから30年、なぜミルクが来るのか問題は放置してきた。しかし今週3日連続(店は別々に)ミルクが来たので、いよいよ向き合ってみることにした。

その結果、18の理由が導き出された。

①声が小さかった

これはこちらが悪い。店員も聞き返して気分を損ねたら困ると思ったかもしれなく、気を使わせてしまった可能性もある。

②聞き取ることができなかった

店が混雑している場合などに起こりやすい理由だ。ミルクがいるかいらないかがわからなかった場合、店員としては最大の準備をしていくわけだからミルクを持ってきても責められない。

③伝達ミス

こちらは店員側のミスである。厨房に伝わっていなかったなどが考えられる。

④遠慮していると思われた

これはこちらが遠慮して「いりません」と言ったと思われたパターンだ。「またまた、遠慮しないの!」と親戚のように持ってきたというわけだ。

⑤強がっていると思われた

こちらは私が本当はミルクが欲しいのに強がって「いらない」と言ったと思われたパターンである。たとえ本当に強がっていたとしても、見破られているわけだから恥ずかしい。

⑥他の客と間違えられた

同じ時間帯にミルク付きのコーヒーを頼んだ人がいた場合、起こり得る間違いである。あるいはミルクをいつも使う常連に似ていた場合もある。

⑦店員が忘れっぽい

これは仕方ないことである。特にある程度年齢を重ねると忘れてしまうことは多いものだ。オーダーを取っている時に「あれいりますか? あの、あれ、えっと、あの……そうそうミルク」などとなってしまうこともあるだろう。

⑧伝えたのとは別の店員

Aという店員にオーダーし、そこにBというバイトが出勤してきて、入れ替わりでAが休憩に入った場合、何も知らないBがミルクを持ってきてしまう可能性はゼロではない。

⑨ミルクを持っていくことが癖になっている

長年喫茶店で働いていると、癖でついついミルクも持っていくことも考えられる。

⑩意地悪をしてきた

店員が意地悪してきたのかもしれない。意地悪と気づきにくい意地悪である。

⑪何かを伝えたい暗号として

口でSOSを伝えられない店員の精一杯の合図と考えることもできる。

⑫このあたりの風習

例えば京都のぶぶ漬け的な意味があるのかもしれない。

⑬ミルクいるに決まっているんだからそんな質問は「いりません」という意味にとらえられた

実に稀なすれ違いではある。

⑭「ミルクいりません」という客にミルク渡した時どんな反応をするのかサンプルを集めている

ある種の実験材料になっているのだ。

⑮ドッキリ

ミルクを持って来られた時にどんな反応をするのか隠れて見ているのだろう。

⑯ミルクに似た別の液体

よく見るとミルクではない。これはこちらの確認ミスである。

⑰店員がループ空間から抜け出すためにいろいろ試している

試行錯誤しているところなのだろう。ループ空間から抜け出せることを祈るしかない。

⑱私のことが好き

わざと間違って気を引きたいのだ。

以上が考えられる理由だが、結局⑱である可能性に懸けたい気持ちはある。

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